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第八話『新管理者の空腹』

人工知能、フィリアの話を聞いた後、僕は今まで僕の身に起こった話をした。

 大体話終わり、彼女の反応を見る。


「……とまあ、ここまでが僕が此処に来た経緯だよ」


『……にわかには信じ難い。でも、有り得ない話ではない』


 まぁ流石にそうなるか。

 僕からしたら、彼女の話も相当信じ難かったけども。


『百五十年前に起きたあの事件、異空間、異次元から大量の水が現れた』


『その時、水と一緒に多くの生命体も流れ込んできた』


 生命体?

 まぁその水の出どころが、他の世界の海からとかだったら、生物が混ざるのは自然な事か。


『次元の穴から異世界の生物がこの世界に来た事例はある。つまり貴方もそれに該当する?』


「そういえば僕も海に落ちてこの世界に来たんだったな」


 僕が船から落ちた時、丁度異次元の穴が出現したのだろう。

 僕はそれに飲み込まれたこの世界に来たんだな。


『……様々な種類の、妙な生物が沢山出現したけど、人間は初めて』


「妙な生物ってもしかして、黄色い大海蛇とかじゃないよな?」


『黄色い大海蛇?……キトゥリノスの事。あれは元々この世界にいなかった生物』


 キトゥリノスっていうのか、アレ。

 この世界には異次元から来たあんなのがうじゃうじゃいるのか。


『……結論が出た。現状、貴方を信じる事にする。貴方も私を信じてくれたようだから』


「そいつは有難いね。で、これから僕はどうすればいい?」


 椅子から立ち上がり、大きく伸びをする。

 随分長い間話し込んでしまった。

 時間……室内だから解らない。


『……今をもって、貴方を此処の管理者として認める。そして、貴方のする事は……』


『貴方がしたい事をすればいい。私はそれをサポートする』


 ……どうやら、特殊任務とかは無いようだな。

 であれば、僕の目標は唯一つだ。


「……何か、食べる物ってある?」


 生きる為の、食事だ。





 フィリアに言われ、研究室から移動した。

 研究室とは、あの広い空間の事である。

 ソフォスはあの場所で、様々な作業等を行っていたそうだ。

 つまるところ、リビングの役割。


 そして、今僕が居るのは、倉庫。

 リビングを中央にして、様々な部屋が繋がっていて、その内の一部屋だ。

 他にも様々な部屋があるらしい。

 研究室だけでもかなり広く感じたが、更に空間があるとは。


 倉庫内は灯りがついており、かなり明るい。

 でも少しだけ肌寒く、完璧に服が渇いていなかった僕は身震いした。

 ……僕、この島に漂着してからまだ一日経っていないんだよな。

 そんな事を思いながら、フィリアに尋ねる。


「で、一体どこに食料があるんだ?」


『……慌てないで。ついでに此処について話す』


 研究室の天井についている機械から、フィリアは音声を出していたけど、それと同じ物が倉庫内にもついていた。

 倉庫内は天井が低く、機械の様子が良く見える。

 黒い、四角い箱の様な物体。

 中央付近にカメラの様なものがある。

 恐らく、あれで映像を見ているんだろうな。

 じっと観察していると、その機械から声を掛けられた。


『何をそんなに見ている? それは私の音声、映像送受機。特に面白い事も無い』


「これってさ、全部の部屋にあるの?」


『……当然。それは私の顔。いざと言う時に死角が出来ていたら困る』


 それって、僕の行動は全てフィリアに筒抜けって事か。

 何か恥かしいな。

 いや、フィリアは人工知能だっていうのは分かるんだけども、なんとなく。


『……あまりジロジロ見ないでほしい。私の顔を見ても空腹は満たされない』


「わかったわかった。早く説明してくれ。お腹が空き過ぎてどうにかなりそうだ」


 いい加減空腹も限界に近い。

 結構長い時間、お腹に何も入れていない。


『……了解。この倉庫には様々な物資が保管されている。食料に限らない』


『機械類、薬品、生活用品、雑貨、ありとあらゆる物が仕舞ってある』


『食料は、貴方から見て右手の一番奥。黒い箱がある。その中』


 言われて、倉庫内を進む。

 大量の箱が置いてあり、文字がそれぞれ書いてある。

 ……日本語ではないな。

 世界共用語であるというクラトリア語なのか?

 

 一番奥、一際大きい箱の前に立つ。

 これにも文字が書いてあり、判読は出来ない。


「なあ、この文字ってなんて書いてあるんだ?」


『……クラトリア語で、保存食、と。貴方、話せるけど読めない?』


 ますます日本語とクラトリア語が解らなくなってきた。

 ひとまず、今はどうでもいいか。


「で、この中に食料があるんだな」


『……箱の手前側にスイッチがある。それを押すと開く』


 言われた通りに、四角いスイッチをポチっと押す。

 すると、空気の抜ける音が聞こえた後、ゆっくりと箱の上部の蓋が開いた。


「……缶詰?」


 箱の中にぎっしり詰まっていたのは、缶詰だった。

 銀色のボディには、何やら絵が書いてある。

 

『……今開けたその箱は、物質長期保存用コンテナという。』


『僅かな電力で、長期間物質の状態を維持する為の物』


 またしてもこの世界の技術力に驚く。

 これが問題なく機能しているって事は、少なくても百五十年以上保管してるって事か。


『貴方が持っているその容器の中に、食事が入っている。それで一食分の栄養素を補給できる』


 それは凄いな、うん。

 でも、ここにきて最大の問題が発生している事に、僕は気付いた。

 

 ……この世界の食べ物って、僕が食べても平気なんだろうか。

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