第十五話『活路』
次回最終回です(唐突)
『方法は、ある』
フィリアは、どこかためらいがちにそう言った。
嫌な、予感がする。
「どんな方法なんだ?」
恐る恐る、聞く。
手詰まりの状況で残された、最後の手段。
『……まず最初に、報告する事がある』
『今から約一時間前、遠方から、謎の信号を受信した』
謎の信号?
一体どういうことだ?
「信号って、この世界にもう人はいないんじゃないんですか?」
柊さんが言う。
確かにその通り、おかしい話だ。
誰もいないのに、そんな事が?
『……世界が水没してから、信号受信は一度も無かった。初めての出来事』
『それも私にも解らない、未知の信号。誰が、何の為に送ったのかも不明』
本当に、何もわからないんだろう。
とにかく、遠方から謎の信号が来た、それだけだ。
「フィリア。もしかして、その事とさっきの方法って何か関係があるのか」
『……肯定。その信号の発信地に行く、という方法』
どういう、ことだろうか。
発信地に行って、どうなるんだ?
『……何もかもが崩壊したこの世界で、唯一の展望。それがこの信号』
『もしかしたら、人類の生き残りかもしれない。大規模なシェルターなのかも』
『……私の計算では、これから貴方達が生きる為には、賭けるしかないと判断』
実際。
現状の希望は、その正体不明の信号しかない。
もしかしたら、ここよりもさらに巨大なシェルターがあるかもしれないのだ。
非常に確率は低い、でも、ゼロじゃあない。
僕たちの陥っているこの状態は、それくらいの賭けをしないとどうにもならないのだ。
座して死を待つよりも、生存への道を探す。
この世界に来て、僕が理解した事だった。
「……行くしか、ないのか」
何があるのかも分からない、そんなところへ。
でも、ふと気づいた。
それを言ったら、この世界そのものだって、何もかも解らない場所だ。
ちょっとだけ、勇気が出た気がした。
島が、動いた。
まさに言葉通りで、本当に動いたのだ。
これほど巨大な物体が動くとは、想像してもいなかった。
電力によりエンジンを動かし、船の様に島は海を進む。
僕と柊さんは、島の外にいた。
大量の電力消費により、なるべく節電するためだ。
以外に早い島のスピードに驚きつつ、遠くを眺める。
フィリア曰く、目的地到着まではおよそ三週間かかるらしい。
結構、遠い場所だった。
何が、待っているのだろうか。
もしかしたら、何にも無くて、どうしようもならなくなってしまうかも。
そうしたら、次はどうしようか。
隣にいる、柊さんを見る。
何処か不安そうな彼女は、今の僕と同じ。
此処に来てから、不安しかないんだ。
「どう、なるんでしょうね」
ふと、彼女が言う。
僕は、何も答えられなかった。
島が動き出してから、一週間が経った。
何もない、同じ様な光景が続く。
暇な時間は、フィリアの話す事を聞いたり、柊さんと会話したり。
娯楽という娯楽も無いので、それだけだった。
単調、しかし、安定した生活。
でも、先が見えないような、漠然とした不安感だけは、いつも近くにある。
そんな、雰囲気だった。
彼女、柊さんは、頑張ってくれていた。
よく話すし、進んで作業等を行っている。
あんまり無理しないよう、言ってはいるが。
どこか、からげんきのような、そんな気がした。
彼女も、不安を感じているのだと思った。