表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
片 恋  作者: 由卯
11/12

彼女6

温かいコーヒで、お互い心が少しずつ溶け合っていく

 彼は向かいのソファーに腰かけながら、鞄を床に置いた。

腕時計をチラリと見て、


  「何、 飲んでるの」 と


優しく、私の顔を覗いた。

彼が少し首を傾げて覗いたので、うつむき加減だった事に気づいた私は、平静を保つふりをしつつ、ゆっくりと顔をもち上げ、微笑んだ。


  「キリッシュコーヒー」

  「それって、甘いやつ?

  俺も待っている間、何か飲もうかな。

  オフィスには誰も居なかったけど、主任達、どこで油売っているんだろう」 と


いぶかししげな顔をし、少し腰を浮かせて、右手を挙げた。


  「これと同じものを、 ノンシュガーで」


気づいたウェトレスに注文し、深々とソファーに腰かけた。


 こんな間近で、しかも彼と二人っきりで向き合った事がなかった私は、何を話していいのか戸惑いながら、


 ―頬が熱いのは、コーヒーに入っているお酒のせいかもしれない。―


そう思いながら、ほんのりと色づいた顔で、向かい側に座っている彼の顔を見つめた。



 主任からのメールが来たときから、彼の行動がおかしい。

何か事件でも起こったのだろうか。

いつも何事にも動じない彼の表情が変わるのを見て、私はなぜだか、少し安心した気持ちになった。

彼の怒ったような表情が、少し可愛く思える。


 彼の隠れた一面を覗くことが出来る嬉しさに、優越感を覚えた。


「主任、何て?」


 私が口を開くと同時に、伝票を握り、無言で出口へと向かい始めた。

急に立ち上がったので、私はもたもたと身支度を始めたが、振り返った時には、彼は会計を済ませ、外を早足で歩き始めていた。


「待って」


 置いてけぼりをくらった私は、迷子になりそうな子供のように、全身の力を絞って、叫んでいた。

そして、走り始めた。

いよいよ最終話


【彼6】へつづく

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ