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第百八十七話 塵芥を掃滅する専属侍女

「いち、に、さん――うーん。本当に入り込んでいるわね」


 月明かりが照らす侯爵家の庭に開いた『執事ゲート』。

 タイゲン王国にある大神殿の地下にあったダンジョンから脱出してきたヨヨは何かの流れを見通すような目で敷地内と屋敷をぐるりと見回し、軽いため息をついた。


「何人いたのかわからないけど、残りは三人だけかなぁ」


 目を見開いたままのヨヨは屋敷の中に入り込んだ襲撃犯たちの人数を言い当てた。その数は正確で、そのうちの二人は激しく動いていることから屋敷の使用人と戦っている最中だとヨヨは判断する。


「残りの一人はティリアちゃんの部屋に近づいているみたいね」


 目を閉じたヨヨは目頭を押えたあと、ふぅと息を吐く。

 そして軽く頭を振り、少し疲れたような表情を見せる。


「あー、ひさびさに力を使うと疲れるわー」


 妖精の持つ能力はほとんど知られていない。

 自分たちのことについて書かれた書物を持ち去り、姿を消してからその能力を知る者がほとんどいなくなったためだ。


 ヨヨが某執事見習いの手伝いをすることになってから、『呪歌』や『本の内容を瞬時に把握する』能力を持っていることが判明している。

 しかし、今も彼女たち妖精の謎は多い。


 先ほどヨヨが使っていたのは妖精が持つ能力のひとつ。

 『超感覚的知覚(ESP)』という能力で知覚(五感など)を用いず、外界に関する情報を得る能力だ。これには透視――遮蔽物の後ろにある物体を把握する能力――や千里眼――遠隔地の光景を知る能力――といったものがある。

 ただ『呪歌』同様、ものすごく疲れるのでほとんど使わない。

 また妖精族は『第六感』も鋭い。森でステビアを発見したように甘いものを発見したり、某執事見習いの考えを言い当てたりするのはこの能力のおかげだ。


 ヨヨはった肩を軽く回したあと、手に持っていた容器に口をつける。そして中に入っていたメープルシロップを勢いよく、ゴクッゴクッと喉を鳴らして飲んだ。

 続けざま、プハッーと息を吐き出す姿は完璧なおっさんの姿だ。ある意味、ゴクゴクプハァーはおっさん道の様式美とも言える。


 ヨヨがゴクゴクプハァーのオプションである、飲んだあと口をぬぐう仕草を追加していると、そこへヒミカが姿を見せた。

 『執事ゲート』から飛び出してきた彼女はヨヨを見つけると声をかける。


「ヨヨさん、おまたせしました」

「じゃあ、行きましょうか。このままティリアちゃんの部屋へ行くわよ」

「はい!」


 元気よく返事をしたヒミカはヨヨと一緒に正面玄関へと走り出した。


 現在、ミストファング侯爵家の屋敷には賊が入り込んでいる。

 彼らは魔族に復讐を誓うフィスタン=ザールクリフが送り込んだ刺客だ。

 彼らの目的は屋敷にいる全魔族を殺すこと。

 その中には侯爵の娘ティリアも含まれている。


 フィスタン=ザールクリフは魔族であるペドリア伯爵と王室管理局のディガンマと手を組み、魔王国を陥れようとしていた。ペドリア伯爵家はエリクサーが配られなかった――自業自得だが――ことに不満を持ち、同じく不満を持つ貴族たちを束ね、魔王に反乱を起こしている。このペドリア伯爵こそ、侯爵家に刺客を送るようフィスタン=ザールクリフに依頼した張本人である。


 フィスタンから侯爵家襲撃を聞いたヨヨたちは急いで戻ろうと提案する。

 だが執事見習いの彼は大丈夫だと言い張り、調べておきたいことがあるといって一人ダンジョンに残ることを選んだ。

 彼が屋敷にいるティリアを心から心配しているのは間違いない。

 普段なら何を差し置いても真っ先に駆けつけたはずだ。

 いつもと様子が違うことにヨヨたちは頭をひねったが、それならとヒミカとヨヨがティリアの救援に名乗り出た。


 ヒミカとヨヨの二人は知らなかった。

 侯爵家使用人において、招かざるお客様(侵入者)の相手を独り占めすることは禁忌であることを。

 そしてこの禁忌を破れば説教が待っている。

 昔、幼い某執事見習いが経験したように。

 その某執事見習いが二人に任せたのは、彼女たちが侯爵家の使用人ではないからだ。使用人でなければ禁忌など関係ない……たぶん。


 侯爵家の庭を屋敷に向かっている途中、ヨヨが尋ねた。


「ねえ、ヒミカちゃん。来るのが遅かったけど、何かあった?」


 ヨヨが『執事ゲート』をくぐってからヒミカはしばらく来なかった。

 そのヨヨの問いにヒミカは首を横に振る。

 ギィギィと錆びた蝶番から音が聞こえてきそうなほど固い動作で。


「……いいえ? なーにもありませんよ」


 なぜか頬を染めながら言葉を返してきたヒミカ。

 その様子に月の明かりに照らされたヨヨの羽がきらりと光る。

 同時にヨヨの瞳もきらりと光る。

 走るヒミカの隣を泳ぐように飛ぶヨヨは、じぃっとヒミカの顔をのぞき見た。それに気づいたヒミカは気まずそうに視線をそらす。

 ヨヨは面白そうな笑みを浮かべると、手にしたメープルシロップをクピクピと飲んでから言葉を続けた。


「……薄暗い月明かりの下でもわかるくらい顔が真っ赤なんだけど? 何かあった?」

「ふぇ!? にゃにも(何も)ありましぇんひょっ(せんよっ)!」


 (うん、何かあったわね)


 妖精のヨヨは確信した。

 『第六感』に頼るまでもない。

 絶対に何かあった。

 何があったかまではわからないが、『気を利かせた』のが功を奏したようだ。


 ダンジョンを脱出するとき、ヒミカと一緒に屋敷へ向かう予定だったのだから、そのまま彼女の頭の上でのんびりとメープルシロップを飲みながら『執事ゲート』をくぐればよかった。

 それを()()()()一人、先にゲートへとヨヨは飛び込んだのだ。


 ヒミカとあの残念執事見習いを二人きりにするために。

 何かなくては気を利かせた意味がない。


 ヒミカがあのお嬢様至上主義の執事見習いに好意を寄せているのは間違いないのだ。なにせ彼女の偏食を治すきっかけを与え、命を狙われていた彼女を救ったのは彼である。多少、ヨヨが手助けをしたといえ、ヒミカの両親まで助けている。

 好意を持たないわけがない。

 その好意が男女の仲に発展するかは別として、少なくても気になる存在であるのは確実だ。


 かたや平民。かたや伯爵令嬢かつ巫女。

 身分の差があるとはいえ、外交官として各国と交流をまとめた功績を考えれば、今後、彼が叙爵される可能性は高い。お嬢様至上主義のせいで一度断わっているが、時間の問題だとヨヨは考えていた。


 見る側としてはじつに興味深く、面白く、楽しい話題(ごらく)を持つ二人。「つまんなーい」という理由で妖精界に引きこもった妖精族。

 面白いこと、楽しいこと、甘い物があれば幸せな種族である。


 崩れていくダンジョンの中、執事見習いは一人残ることを決めた。

 そんな危険な場所で二人きり。

 そこで二人に何があったのか。

 ぜひ知りたい。

 知ったら周りにバラしたい。

 だが、素直に聞いても教えてはくれないだろう。


 いつか絶対に二人から聞き出してみせると決意したヨヨはメープルシロップの入った容器を握りしめた。そして流れるような動作で中身を飲む。

 その間もヨヨはヒミカの顔をじぃっとのぞき込んでいた。


 するとヒミカは赤い顔を見られないようにしながら、こほんと咳払いをひとつ。


しょんにゃことより(そんなことより)、先を、い、いそぎまひょう(急ぎましょう)!」

「そうね! そうしましょう!」


 意識しないようにすればするほど空回りするものだ。

 今も言葉がおかしいヒミカはそのことに気づかない。

 それに対し、ヨヨは気にした様子もなく言葉を返した。

 ヒミカは話題をそらすことに成功したとホッとした表情を見せる。

 だが、甘い。

 激甘党の妖精が喜ぶほど甘すぎる。


「――で、何があったの?」


 とどめと言わんばかりにヨヨが尋ねた。

 その一言に、ヒミカは火がついたように顔を赤くさせ、「うにゃっ~!」と意味不明の声を上げる。そのまま両手で顔を覆うと、その場でしゃがみこんでしまった。


 一刻も早くティリアの元に向かわなければならないというのに何をやっているのだろうか。

 特にそこの妖精族。

 そのしつこさは、まさに酔っ払いのそれである。

 ここに某執事見習いがいたら間違いなく指摘している。

 確実にしている。


「ほらほら、ヒミカちゃん。早く行かないと」


 誰のせいでヒミカの足が止まっているというのか。

 だが、妖精ヨヨは反省しない。

 面白いものが見られたと喜色を浮かべながら、ぷるぷると震えるヒミカの神官服を引っ張っている。


「……そういえば迷宮で調べたいことがあるって言ってたけど、あの残念執事、何を調べるつもりなのかしら」


 そのつぶやきは自分の行いを思い出しては身悶みもだえるヒミカには聞こえていなかった。


 ヨヨはヒミカが復活するまで休憩かしらと考えながら、メープルシロップの入った容器に口をつけてこう言った。


「……もうないじゃん」


 ヨヨは中身のなくなった容器を逆さまにしながら、垂れてくるしずくを舌でなめとった。

 さらにまだ残っていないかと容器の中をのぞきこむ。

 一滴も残っていないことを確認したヨヨは残念そうにため息をついた。


 だが、彼女の欲望は止まらない。

 ヨヨは腰に下げていた『妖精族のポーチ』から執事見習い特製のアメを取り出すと三つまとめて口に放り込んだ。

 口の中にこれでもかというほど濃厚な甘さが広がっていく。


 ヨヨはアメを口の中で転がしながらティリアの部屋がある方角に目を向けた。

 そして安心したようにふぅと息をもらす。


「うん。まだ大丈夫そうね」


 その後、なんとか立ち直ったヒミカを連れ、二人はなんとか屋敷前へとたどり着いた。そのとき裏庭から出て来た侯爵家の庭師ウルナに事情を説明し、屋敷の中に入れてもらう。

 屋敷に入った二人は急いでティリアのいる部屋へと向かうのだった。


 ◆


 屋敷の中、人知れずうごめく影がある。

 影は動きやすそうな黒い服で身を包み、フードを深くかぶっていた。顔には黒い仮面をつけており、その表情はうかがい知れない。目の部分にだけ穴が空いており、そこからのぞく瞳は琥珀色に光っていた。


 屋敷の階段を登った影は等間隔に窓が並ぶ廊下を探っていた。

 廊下は階段を登って左右に延びている。

 どちらも人影はない。

 廊下の壁にはところどころ魔道具らしい照明器具があり、薄暗い廊下を照らしている。高級そうな絨毯が一面に敷かれており、足音を消してくれるほどの柔らかさがあった。


 仲間から離れ、屋敷へと忍び込んだ影。

 影が得意とするのは気配を消し、闇に紛れ、音もなく標的を消し去ること。

 そのように教育されてきた影の名は『暗殺者』という。


 ここまで来る途中、暗殺者は屋敷をうろつく魔族たちを何人も見てきた。

 魔族の数は多く、どれだけ屋敷にいるのかは不明。

 その魔族の多くはメイド姿だったり、コック服を着たゴーストだったりとまるで使用人のような姿をしていることに影はとまどった。本来であればゴーストがいることに戸惑うところだが、ここは魔族の巣窟だ。アンデッドがいてもおかしくないと暗殺者は納得している。


 実際、暗殺者が目にしたのは侯爵家の使用人たちだ。

 またゴースト族はアンデッドではないのだが、暗殺者が知るよしもない。


 人影や気配がないことを確認した暗殺者はゆっくりと立ち上がった。

 魔道具の明かりに照らされたその身体は小柄で手足は細い。

 暗殺者は右と左、どちらに行こうか悩んだ末、左側へ進むことを決めた。


 もう一度、廊下の左右を確認してから足を踏み出す。

 絨毯のおかげで足音は皆無。

 そのまま二歩、三歩と足を進めた。


「そこで止まりなさい」


 廊下に凜とした声が響く。

 暗殺者の手が自然と腰にぶら下げていた短剣に伸びる。

 腰にある短剣は刃渡り三十センチほどで、黒いさやに入っていた。


 今の声は後ろから聞こえてきた。

 先ほどまで気配はなかったはずだ。

 暗殺者は索敵が甘かったかと己の未熟さを反省しつつ、侯爵級魔族ではなく自分が先に発見されたことに肩を落とす。


 暗殺者が見つかるなど、本来は恥ずべきことだ。

 だが、暗殺者はすぐに頭を切り換えた。

 目的は標的を確実に消すことであって、見つからないように行動することではない。見つからないように行動するのは、あくまで目的を確実かつ円滑に果たすための手段のひとつにすぎない。


 もちろん見つからないのが一番だ。

 見つかれば応援を呼ばれ、目的が果たせなくなる可能性が高まる。

 また見つかったことで手段が限定されることは否めない。

 見つかっていなければ、いかにも殺したという方法ではなく、自然死や事故死を装うこともできるからだ。

 いずれにせよ見つかってしまった以上、目撃者を消す必要がある。


 まずはこの状況をなんとかする必要があった。

 声をかけてきた人物を確認するため、暗殺者はゆっくりと振り向いた。


 ――そこには誰もいなかった。

 それどころか気配すら感じなかった。


「……誰もいない?」


 感情のこもっていない声で影がつぶやく。

 その声は女性、いや、まだ少女のものだ。


 暗殺者は目だけを動かし、辺りを探る。

 だが、声をかけてきた相手の姿はどこにもなかった。

 思ってもみない状況に眉を寄せた暗殺者は冷静に考える。


 すでに辺りは静まりかえり、物音ひとつしない。

 注意深く気配を探ってみるが、それらしい気配は感じなかった。


 もしかして気のせい?

 いや、そんなはずはない。

 確かに声は聞こえたはずだ。


 少女は警戒を強める。

 腰の短剣に手を置いたまま辺りを探った。

 一分、二分。

 どれほど時間が経っただろうか。

 だが、何もない。何も起きない。


 本当に気のせいだったのかもしれない。

 しばらくして暗殺者は肩の力を抜き、自嘲気味にため息をついた。


 最後に暗殺者は階段のある場所まで戻り、階下をのぞいてみる。

 やはり誰もいない。

 緊張のせいで幻聴が聞こえたのかもしれない。


 そう考えた暗殺者は腰にぶら下げていた短剣から手を離した。

 そして自分の役目を思い出す。

 一刻も早く侯爵級魔族とその娘を見つけなければならないと。


 決意を新たにした暗殺者は廊下の左側を進むべく振り返った。

 そして――すぐ目の前に浮かぶ深青色しんせいしょく双眸そうぼうと目があった。 


「っ!」


 暗殺者は反射的に後方転回、いわゆるバク転を繰り返し、距離をとる。

 最後のバク転をし、着地と同時に腰にぶら下げていた短剣を抜こうとした――が、その腕が動かない。


「――っ!?」


 数メートルは距離をとったはずだった。

 だが、深青色の瞳は今も暗殺者の目の前にある。

 よく見れば、青い瞳の持ち主は自分より年下に見える一人の少女だとわかった。


 もう一度、短剣を抜こうとしたが腕はびくともしない。

 慌てて自分の腕に目を向ければ、目の前にいる少女が自分の腕を押えているのが見えた。


 暗殺者はすぐさまあいている左手に力を込め、貫手で少女の喉を狙った。

 相手が年下の少女だろうと、暗殺者の邪魔をするものは敵である。


 暗殺者は体術などの近接格闘を得意としていた。

 多少、素早い動きをするが暗殺者の敵ではないと自負している。

 だが、青い瞳の少女は不意打ち気味に放たれた貫手を、身体をかたむかせることで、あっさりと回避。


 次に暗殺者は貫手を放った手で相手の後ろえりをつかもうとした。しかし少女はその攻撃を予測していたかのように身体を前方に倒し、それも回避。

 すぐさま身体を起こした少女は空をきった暗殺者の左手首をもう片方の手でつかんだ。


 両腕の自由を奪われた暗殺者は両腕を引きはがそうと力を入れる。

 同時に相手の姿を観察した。


 腕の太さは暗殺者とそれほど変わらない。

 メイド服に似ているが、それよりも仕立てがいい服を着ている。

 ほのかに香る柑橘系かんきつけいの香り。

 肩まで伸ばした艶のある暗青色の髪。

 首は細く、透き通った白い肌の少女。


 暗殺者は相手の顔をにらみつける。

 少女もまた暗殺者に視線を向けていた。

 そして深青色と琥珀色の瞳が交わったとき、暗殺者は背筋を凍らせた。


 少女は嘲笑(わら)っていた。

 歪んだ笑みを浮かべ、罠にかかった害獣を見下すような目を暗殺者に向けている。


 慌てて離れようとしたが、つかまれた腕はまるで拘束具で固定されたかのようにびくともしない。腕の太さはほとんど変わらないにも関わらず、その力は異常だった。


「――ふっ!」


 そのとき暗殺者の口から光るものがいくつか飛び出す。

 それは細く短い先の尖った金属の針。

 含み針と呼ばれ、敵の目つぶしなどに使われる。

 針は腕をつかむ少女の深青色の目を的確に捉えていた。


 完全な不意打ちだ。

 だが、すでに少女の姿はない。

 針はそのまま何もない空間を飛んでいく。

 見れば少女は上半身を真後ろにって針をかわしていた。

 ただ、身体を反らしたことで腕をつかむ力が弱まり、暗殺者から目を離している。


 暗殺者はそのすきを見逃さない。

 右のかかとを廊下に打ちつけたあと、相手のみぞおちに向かって蹴りを放った。その靴のつま先からは刃渡り五センチほどの薄い刃物が飛び出ている。かかとを打ちつけたのは、刃が飛び出る仕掛けを起動するための動作だ。

 しかも、その刃先には紫色の液体が塗られている。

 それはかすり傷でさえ、命を奪う猛毒。

 ただし、魔族にはほとんどの毒が効かないので意味はない。

 だが、暗殺者はそのことを知らない。


 口から飛ばした針やつま先から飛び出た刃物は暗器と呼ばれる武器だ。

 暗殺者はこれらの暗器の使い手でもあった。


 暗殺者から目を離している少女は暗殺者の蹴りに気づけない。

 ところが青い瞳の少女はあっさり暗殺者の腕を放すと、った身体をそのまま後ろに倒し、両腕を廊下について後方に一回転。わずかに遅れて彼女の長いスカートのすそが宙に舞う。

 つま先から飛び出た刃は少女には届かず、そのスカートのすそをわずかに裂いただけで、空を切った。


 暗器をかわされた暗殺者は手を休めることなく次の行動に移る。

 ようやく腕が自由になったため、腰に下げていた短剣を抜き、逆手で構えた。

 相手の着地と同時に斬りかかろうとタイミングをはかる。


 少女の足が地面につく。

 暗殺者はその瞬間を狙って駆け出した。

 だが、一歩踏み出したところで足を止める。

 ちらりと見えた少女の青い瞳が暗殺者を射貫いぬくように見ており、その口元に笑みを浮かべているのが見えたからだ。

 いやな気配がした暗殺者は、その場で武器を構える。

 少女は暗殺者が攻めてこないのを確認すると、ふわりと後方へ飛び、距離をとった。


 三メートルほどの距離をあけ、対峙する二人。


 青い目の少女は翻ったスカートを右手で払い、整える。

 すでに彼女の顔に笑みはない。

 少女は正面を向き、姿勢を正したあと、両手を身体の前で合わせた。

 それは侍女やメイドなどの使用人がとる待機の姿勢だ。


 その瞬間、彼女の気配が消えた。

 しかも目の前にいるはずなのに、意識しないと見失いそうになる。

 それが使用人としての技術だと暗殺者は気がつかない。

 だが、廊下で声をかけられたとき、彼女の気配に気づかなかった理由は理解できた。


 笑みが消えた少女はさげすむような双眸そうぼうを暗殺者に向けたまま、口を開く。


「セルヴァに聞いた勇者が来ると思い、ここで待っていましたが……あなたが単独行動をする最後の招かざるお客様(侵入者)ですか」

「……」


 暗殺者は肯定も否定もせず、ただじっと少女を見ている。


「返事は……なし、と。まあ、いいです。あなたが誰であろうと侵入者の運命は決まっていますから。それまでおもてなしくらいはいたしましょう」

「……」

「まずは自己紹介を。(わたくし)、侯爵家長女ティリア様の専属侍女を務めますイーラと申します」


 青い目の少女はイーラと名乗った。

 スカートをつまみ、一礼したあと顔を上げる。

 イーラはしばらく黙ったままだったが相手の反応がないことを見て、ため息をつきながら再び口を開く。


「よろしければ、あなたのお名前を教えていただきたいのですが?」

「…………暗殺者」


 イーラが自分の名を求めていると理解した暗殺者はしばらく間をあけてから答える。

 か細い声だったが、その声はイーラに届いた。


 暗殺者は嘘を言っていない。

 教皇から与えられた『暗殺者』という名前は彼女の誇りだ。

 ただ、その名前が一般的ではないことを暗殺者は知らない。


「……教えられないというわけですか」


 暗殺を生業なりわいとする者の総称を名乗られたイーラは十人中八人が言いそうな言葉を返した。


 暗殺者は正しく素直に答えたのだが、名前が名前だ。

 イーラが勘違いしても仕方がない。

 これも名前を付けた(フィスタン)が悪い。

 ここにウルナたちがいたら、魔物使いたちと同様、女の子になんて名前を付けるんだと憤慨ふんがいしただろう。


 相手の名前を聞き出すことを諦めたイーラは言葉を続ける。


「仮面をかぶっておられますが、あなたが女性なのは骨格を見ればわかります。それに声から判断すると年齢は十三歳から十五歳の間。健康状態は良好のようですが、侵入がバレたことで若干の緊張状態。また軽い疲労感がみられます。――そして私を警戒しつつ、脅威にも感じておられるようで」


 淡々とした口調で語られた内容を聞きながら暗殺者は動揺していた。

 暗殺者の年齢は十四歳。

 わずかだが緊張と疲労も感じている。

 そして気配を感じさせることなく暗殺者の背後をとり、互角以上の体術で自分の攻撃をかわし続けたイーラに脅威を感じているのは間違いない。

 まさか心が読めるのか。

 たった一言発しただけで年齢や状態、感情を当ててくるイーラへの警戒は一気に跳ね上がった。


「おや。ずいぶんと動揺されたご様子」


 動揺を言い当てられた暗殺者は目を見開いた。

 目を見開くという反応はイーラの言葉を肯定こうていするも同じこと。

 それを見たイーラは口元に手を当てながら、ころころと笑った。

 暗殺者はしまったと思いつつ、面白そうに笑うイーラをにらみつける。


「あら。そんなに見つめられると照れてしまいますわ。それになぜあなたのことがわかるのか、お聞きになりたいような目をしていらっしゃいます」


 それも正解だった。


「声からは相手のおおまかな年齢やストレスなどの心理的状態がわかるものです。それに加えて目の動き。動揺するとまばたきが増え、視線が落ち着かなくなる。あなたが仮面をかぶっているのは表情から感情を悟られないためと推測しますが、目はずいぶんと感情豊かなのですね」


 小馬鹿にされたことに暗殺者はスッと目を細める。

 だが、それもイーラは見逃さない。


「そんなに怒らないでくださいな。これもすべてはお嬢様のためです」


 その説明に暗殺者はわからないといった様子で首をかしげた。

 それも当然のこと。

 今の説明でわかるのはここの使用人だけである。


 イーラはティリアの専属侍女だ。

 『専属』という言葉の意味は重い。

 ティリアが何を求め、何を考えているのか、言葉にしなくてもその表情や声だけで判断できてこそ専属なのだ。


 もちろんその対象はティリアに限ったことではない。

 ティリアが成長すれば彼女に近づく者が増える。成人し、社交界に出れば寄ってくる人数も増える。それらがティリアに利を与える者か、害を為す者かの判断が必要だ。それを見極めるのはいつもそばにいる『専属』侍女である彼女の役目だ。


 当然、某執事見習いも判断できるのだが、まだ『専属』の名を戴くイーラほどではない。ただ、ティリアに近づく者を判断する能力はイーラよりも鋭い。特に近づいてくる同世代の男性に下す判断は正確で、しかも厳しい。ほぼ、断罪である。

 逆に彼の場合、ティリアの感情を理解し、把握する能力が甘いのが致命的ともいえる。

 幼いといってもティリアは乙女だ。

 乙女心は乙女にしかわからないと言ってしまえばそこまでだが、専属執事を目指す彼の試練はこれからも続く。


 あと、乙女心なんて一生わからないだろという指摘は絶対、彼に言わないように。侯爵家で働くすべての男性使用人も乙女心はわからない。結婚前、数々の浮き名を流し、百年以上モテ期が続いた(続いている?)ヘルムト侯爵ですらわかっていないのだから、無理を言ってはいけない。

 それはこくというものだ。

 わかっていると思うが、濃縮された旨味のことではない。



 閑話休題(また話がそれた)



「さて暗殺者様。そろそろ、お相手しましょう――」


 言い終わるが早いか、イーラの姿が消えた。

 次の瞬間、暗殺者のすぐ目の前に現れる。

 現れるというよりも、いたが正しいだろうか。

 気づいたら、そこにイーラが立っていた。

 三メートルほどの距離を予備動作もなく、一瞬で縮めたイーラはすでに構えている。


 短剣を握ったまま反射的に構えようとした暗殺者だったが、それよりも早くあごに鈍い衝撃が走る。仮面のおかげでダメージこそあまりないが、上半身がり、大きく体勢を崩された。そのとき自分のあごを打ち抜いた彼女の手のひらが目の端に入った。

 掌底打ちだ。


 崩れた体勢を整えようとしたが、右足が動かない。

 かろうじて目を向ければ、イーラの足が靴の先にある暗器を踏んでいるのが見えた。間髪入れず、強い衝撃が胸元を襲う。その衝撃と同時に踏まれていた刃が折れる音が耳に入った。

 暗殺者は何が起きたかわからないまま、後方へと吹き飛んだ。


 廊下に背中を打ちつけそうになったが、なんとか受け身をとり、すぐに起き上がる。そのまま前方に顔を向けると、ちょうど高く上げた片足を下ろそうとしているイーラの姿が見えた。


 暗殺者は掌底打ちで体勢を崩されたところに蹴りをくらったことを理解する。

 靴のつま先を見れば暗器は根元から折れていた。


 だが、下ろすと思っていたイーラの足は途中で止まった。

 自分の足下に気を取られていた暗殺者はそのことに気づくのが一瞬遅れる。


 イーラは足を途中で止め、地についている軸足で廊下を蹴り、跳び蹴りを放つ。その蹴りはろくに身構えていない暗殺者の腹に向かって、矢のようなスピードで跳んでくる。


 イーラの蹴りに気づいた暗殺者は防御するため、腹の前で両腕を構えた。

 だが、その蹴りはイーラの罠だ。

 ガードが腹に集中したのを見たイーラは口元に小さな笑みを浮かべると、蹴りを放った足のひざを曲げる。

 そして廊下を蹴った足で、もう一度廊下を蹴り、軌道を修正。

 暗殺者の頭を両手でつかみ、曲げたひざを暗殺者の顔に叩き込んだ。


「がっ!」


 イーラのひざが暗殺者の仮面を強打する。

 先ほどの掌底によってヒビが入っていたのか、イーラの膝をまともに受けた仮面は割れ、暗殺者の顔が露わになった。


 仮面があったとはいえ、鼻を打ちつけた暗殺者は自然とあふれる涙をなんとかおさえ、跳ばされた反動を利用して廊下を転がる。その拍子にフードが外れ、暗殺者の黒い髪が頬にかかった。

 すぐさま暗殺者は立ち上がる。

 そして鼻から流れる赤い液体を乱暴にぬぐい、短剣を構え直した。


「あら。可愛い」


 仮面とフードがなくなり、素顔を見せた暗殺者を見てイーラはにっこりと笑った。

 その笑みは年相応の自然な笑みだ。


 クリッとした黄色の瞳、ショートボブの黒髪。

 若干の幼さを残した暗殺者は美しいというよりもイーラが言った通り、可愛いという表現がピッタリの容貌をしていた。


 暗殺者は呼吸を繰り返し、息を整える。

 その目はじっとイーラを見据えていた。

 イーラもまた待機する姿勢のまま、暗殺者に笑みを向けている。


 暗殺者より小さな身体から繰り出される体術。

 速さ、攻撃の強さともに暗殺者よりも圧倒的に上だ。


 理由は簡単。

 人族をベースとして作られた疑似生命体は通常の人族よりも身体能力が優れている。

 だが、魔族の能力はその疑似生命体よりも上なだけ。

 ただ、それだけである。


 自分が疑似生命体だと知らない少女は魔族の強さを認めながらも諦めてはいなかった。


「……本気出す」

「ええ、どうぞ。遠慮なく」


 殺気を込めた暗殺者の言葉をイーラは微笑みで受け止めた。

 暗殺者は逆手に持った短剣を構え、走り出す。

 イーラはその場から動こうとしない。


 暗殺者は自分の間合いに入るとイーラの首を狙って短剣を一閃。

 イーラは上体をそらすだけで軽々とかわす。攻撃をかわされた暗殺者は逆手に持った短剣の柄頭にもう片方の手のひらを添え、イーラの心臓を狙って突き出した。

 イーラはその攻撃も身体をひねってあっさり避けた。

 その動きを読んでいた暗殺者は短剣を持っていた腕をイーラの喉に向かって伸ばす。


 イーラの白い喉に吸い込まれていく刃。

 しかし、短剣はイーラの喉に触れる前にピタリと止まった。

 見れば暗殺者の手首をイーラがしっかりと握っている。


 その瞬間、暗殺者の表情が変わる。

 イーラはそれを見て怪訝そうな顔をした。

 そのときだった。


「――え?」


 暗殺者の姿がまるで煙のように揺らめき、その場から消えた。

 手首をつかんでいたはずのイーラの指が何もない空をつかむ。


 戸惑いの声を上げたイーラが周りを見回そうとしたときのこと。

 イーラの身体が一瞬、ビクッと跳ね上がったあと、動きが突然止まる。

 同時にイーラの背後に暗殺者の姿が浮かび上がった。

 だが、先ほどまで握っていたはずの短剣がない。


「……『変わり身の術』」


 そうつぶやく暗殺者にイーラからの反応はなかった。

 イーラは力なく頭を下げ、その場に立ったまま動かない。

 そんな彼女の後頭部には一本の短剣が突き刺さっていた。

 根元まで刺さった短剣の刃先はイーラの喉から突き抜けている。


 しばらくして残心の構えを解いた暗殺者は、ふぅと息を吐いた。


「……排除完了。次は侯爵級とその娘を殺す」


 暗殺者はそう言うとイーラの後頭部に刺さった短剣を引き抜こうと手を伸ばした。


 彼女の細い指が短剣の柄に触れようとしたとき、それは起こった。


 刺さっているはずの短剣の柄が音もなくかたむいていき、イーラの後頭部からゆっくりと落下していった。イーラの首筋を撫でるように滑った短剣の柄は彼女の肩に当たってから絨毯に向かって落ちていく。


 その様子を暗殺者は目で追っていた。

 同時に、何かに気づいた彼女の目が次第に大きく見開いていく。


 落ちていく短剣にはあるべきはずの刀身がなかった。

 落ちていくのはつかの部分のみ。

 しかも刃がついていたつかの根元が異様に変形している。


 絨毯の上に落下した短剣のつかは音もなく大きく跳ねてから、イーラの足下に転がった。


 そのとき暗殺者は気づく。

 イーラの足下に先が尖った金属があることに。

 根元は黒く変色し、溶けたように形を変えている。

 それは暗殺者がイーラに突き刺した短剣のもので間違いない。

 だが、その長さは元の短剣の刃渡りから考えると明らかに短くなっていた。


「――ふふ」


 すぐそばから聞こえてきた笑い声に暗殺者は顔を上げる。

 同時に、暗殺者の肩に白い手が乗せられた。

 一瞬、肩に目がいった暗殺者だったが、すぐに手の持ち主へと視線を向ける。


「っ!?」

「まさか短剣なんかで私を殺せると思ったの?」


 そう言っていやらしい笑みを向けたのは、先ほど後頭部に短剣を突き刺し、殺したはずのイーラだった。


「なぜ!?」


 なぜ、生きているのか。

 確実に急所を突いたはずだった。

 短剣は確実に後頭部に刺さり、刃先は喉から飛び出していたはずだ。

 しかし、短剣を突き刺した少女は何もなかったように動き、暗殺者に話しかけている。

 暗殺者は何が起きているのか理解できず、混乱気味だ。


「なぜですって? 招かざるお客様の渾身の攻撃を受けてさしあげるのが私のおもてなしだもの」


 受けてさしあげる。

 その言葉に暗殺者は戦慄した。

 イーラはわざと攻撃を受けたと言ったのだ。

 なぜ、わざと攻撃を受けたのか。

 決め手となる攻撃や渾身の一撃をわざと受け、相手の心を折るためだ。

 なぜ死なないのか。

 それはわからない。

 もしかしたらアンデッドなのかもしれない。


「言っておくけど、アンデッドじゃないわよ」


 心の内を見透かすような言葉に暗殺者は慌てて距離を取ろうとした――が、それは叶わなかった。


 彼女の肩に置かれたイーラの手が暗殺者をつかんで離さない。

 同時に暗殺者の肩に痛みが走った。

 握り潰された痛みとはまったく違うその痛みは、まるで焼かれているような激痛だ。しかも、それを証明するかのように肩から煙のようなものが上がり、ジュゥッと何かが焼けるような音と異臭が鼻をついた。


 暗殺者はその痛みに歯を食いしばる。そして自分の肩をつかむイーラの手を引きはがそうと反対側の手で彼女の手首を握った。


「私の肌に触って大丈夫? 『溶ける』わよ?」


 その言葉の意味がわからなかった暗殺者だったが、すぐに理解した。


「あああぁっ! ……あっ……くっ」


 イーラの手首を握った途端、手のひらがジュッと音を立て、肩と同じような激痛が走る。その痛みに叫び声をあげた暗殺者は手を離し、自分の手を見た。すると手のひらの皮が溶けるようにめくれており、異臭と煙を放っていた。


「ふぅ。そんな大きな声をあげられるとお嬢様が起きてしまうわ」


 イーラは迷惑そうな顔をすると、つかんでいた暗殺者の肩を突き飛ばす。

 突き飛ばされた暗殺者はよろよろとたたらを踏み、バランスを崩して廊下に倒れてしまった。

 その際、つかまれていた肩に痛みが走る。目を向けてみれば、肩の布がボロボロになっており、剥き出しになった暗殺者の素肌が火傷を負ったように赤く腫れ上がっていた。手のひらのように溶けていないのは服のおかげだ。


「……『水遁の術』」


 急いで立ち上がった暗殺者がつぶやくと、何もない空中から水があふれ出し、彼女の手のひらと肩に降り注いだ。最初こそしみる痛みに顔をしかめた暗殺者だったが、その水は傷の痛みをわずかながらに洗い流していった。


 それを見たイーラが眉をしかめる。


「濡れた絨毯を誰が掃除すると思っているのかしら。さっきのもそうだけどその技。それは何?」

「……教えない」

「あら、そう。――確か弟が言っていたけど、『しのび』が使うという『忍法』だったかしら。違う?」


 あっさりと当てられたことに暗殺者は驚く。


 この技は千数百年前、魔王と戦った勇者がタイゲン王国に伝えたものとされている。勇者自身は使えなかったが、話を聞いた当時の武道家が再現させたのだ。

 『忍法』には身代わりを造り出す『変わり身の術』や水を操る『水遁の術』などがあり、それらを使う者を『しのびの者』と呼んだ。


 一時はタイゲン王国内に『忍の者』が住む郷があったが、今のタイゲン王国には『忍の者』どころか、記録すら残っていない。この遺失したはずの『忍法』を暗殺者が使えるのは、当時の忍びの郷を知っていた教皇フィスタンがそれらの技を復活させ、実験的に疑似生命体に組み込んだからだ。


 もし当時の勇者(元凶)が目にしたら、「え? マジで!? マジで使えたのっ! 異世界人チョーパネェ」と驚いたことだろう。


 またイーラが『忍の者』のことを知っていたのは前世の記憶を持つ弟が原因だ。彼は雑談の中で前世の一部知識(サブカルチャー)をイーラ含め、使用人たちに話したことがあった。


 傷口を洗い流した暗殺者はこれ以上、情報を漏らさないよう口を固く閉じた。そして懐から細い刃物を取り出し、さやを抜く。それは懐剣ふところがたなと呼ばれるもので持っていた短剣の半分ほどの長さしかない。


「もうそんな武器しかないの?」


 イーラは足下に落ちていた短剣の刃とつか、それに紫色の粘液が塗られた

刃を拾い上げる。

 すると、それを両手で包み込んだ。

 その途端、それらのものがジュウジュウと音を立て、溶けていく。

 しばらくするとイーラは両手をひろげ、軽く叩いた。

 そこにはもう何も残っていない。

 溶けたものがどこにいったのか、わからない。


 急所を刺しても動く魔族。

 あっという間に金属を溶かしてしまうほどの能力。


 それらを見た暗殺者は今までは手加減されていたと悟る。

 金属さえあっという間に溶けるのだ。

 そうでなければ、今ごろ暗殺者の肩は腕ごと溶かされ、片方の手もなくなっていた可能性が高い。

 魔族の少女が使う正体不明の力に暗殺者は息を飲んだ。


「よし、と。お嬢様が怪我をされたら危ないもの」


 短剣を処分したイーラは無機質な声でつぶやいた。


 そのつぶやきを耳にした途端、頭の中に警鐘が鳴り響く。

 激しく波打つ心臓の鼓動が一刻も早くここから離れ、仲間たちと合流すべきだと主張する。

 だが、それを躊躇ちゅうちょさせる要因があった。


 イーラは先ほど、「お嬢様が起きてしまう」と言っていた。

 その言葉からこの近くに暗殺対象である侯爵級魔族の娘がいることが予想できた。

 また廊下の左側に進んだときにイーラは声をかけてきた。しかもその方向に行かせまいと先ほどから立ちふさがっている。

 侯爵級魔族の娘がいるのは彼女の後ろ。

 この先だ。

 標的は近い。


「お嬢様を傷つけるものは溶かすに限る。あなたもそう思わない?」


 ――まずい。

 地の底から響くような声に暗殺者の身体にこれまで感じたことのない寒気が走り抜けた。考え事をしていた意識が一気に引き戻される。


 この時点で暗殺者は撤退を決めた。

 一人では絶対に勝てないと理解したのだ。


 だが――その判断は遅すぎた。

 暗殺者の身体を何かに絡みつかれたような感覚が襲った。

 まるで光が届かない森の中、真っ黒な沼からいだしてきた悪夢に引きずり込まれるような感覚だ。


「ネェ、ところデ貴女――さっきお嬢様ニ何ヲするって言った?」


 これまでとは違った怒りと殺気に満ちあふれた声。

 恐怖のあまり咄嗟とっさに構えようとした暗殺者が瞬きをする間もないほどの刹那。

 暗殺者の前に目のわった魔族が立っていた。

 その存在に暗殺者が気づいたのは、イーラのひやりとした手が自分の首筋を撫でたときだ。


「あああああああああっ!」


 瞬時に走る焼きごてを当てられたような痛みとジュッゥという不快な音と臭い。神経ひとつひとつに何百という針を根元まで刺したような痛みが暗殺者を襲う。

 それは想像を超える激痛だ。


 意識が飛びそうになったが、暗殺者はその痛みから逃れるため、すぐさま『忍術』を使う。


「ッ! 『変わり身の術』!」


 暗殺者の身体がイーラの前から消えた。

 そして、すぐさまイーラの背後に現れる。

 首に水疱ができるほどの火傷を負った暗殺者は、お返しとばかりに素早くイーラの首に腕をまわす。

 そのまま手に持っていた懐剣で彼女の喉をかき切った。


 ずぶりとした感触と肉を切り裂く手応え。

 今度こそという思いが暗殺者の脳裏に浮かぶ。

 だが、しかし――。


「――さっきモ言ったト思うけど、短剣デ私ヲ殺せるト思ったの?」


 イーラの首がぐるりと半回転し、青い双眸が暗殺者を捉えた。

 あり得ない。

 真後ろに顔を向けることなどできるはずがない。

 しかしイーラの背中の上には、こちらを見ている顔がある。


 動きを止めた暗殺者の隙を狙い、イーラの右手が伸びてくる。

 その腕も関節を無視した動きで、暗殺者の喉を狙う。

 それに気づいた暗殺者は彼女の腕を服の上から手でつかんだ。


 直接、彼女の『素肌』に触らなければ大丈夫なはずだ。

 その判断は正しかった。


 イーラの腕をつかんだ暗殺者は、そのまま腕をへし折ろうと腕を取ったまま後ろを向き、背負うようにして自分の肩に相手の腕関節を叩きつけた。


「!?」


 間違いなく折った。

 イーラの腕は関節とは逆後方に曲がり、だらりと暗殺者の肩から垂れ下がっている。


 だが、骨が折れた音がしなかった。

 折ったという感触も抵抗もなかった。

 そのかわり、ぐにゃりとした柔らかい感触が手と肩に残っている。


 ――な、なんなの。


 それは一瞬の戸惑い。

 イーラの腕から手を離した暗殺者が振り返ったとき、折ったはずの腕が動いた。もう片方の腕も曲がるはずのない方向に曲がりながら、がっちりと暗殺者の腰に回される。


 背中を向けたイーラに正面から抱きつかれるような格好となった暗殺者は必死にもがいた。だが、イーラの力は強く、引きはがすことができない。

 抵抗もむなしく暗殺者の身体はゆっくりと持ち上げられていく。

 腰に回された腕が徐々に絞まり、暗殺者の身体を圧迫していった。次第に暗殺者の背骨がギリギリと悲鳴を上げ始める。


 暗殺者はなんとか逃れようと手に持った懐剣をイーラの腕や肩に突き刺した。

 しかし、イーラは痛みを感じていないのか顔色ひとつ変えず、暗殺者を抱きかかえ、笑みを浮かべたまま彼女の顔を見上げている。


 もはや悪夢でしかない。

 暗殺者は自分を見透かすようないやらしい笑みを浮かべたイーラの顔に手に持った刃を食い込ませた。

 額、眼球、こめかみ、ほほ。

 何度も何度も刃を突き立て、切り裂く。

 肉に突き刺す感触はあった。

 だが、一滴の血も流れない。

 まるで液体に刃を突き刺しているような感覚。

 懐剣を抜いた途端、その傷は瞬く間にふさがるのだ。

 あとには傷ひとつ残っていない。

 それどころか徐々に刃が通らなくなっている。

 見れば懐剣の刃が徐々に溶け始めていた。

 それでも暗殺者は涙を流しながら狂ったようにイーラを刺しまくった。


 イーラはそんな暗殺者を嘲笑あざわらう。


「無駄ヨ。私ニ物理攻撃ハ効かないもの」


 その言葉に暗殺者の手が止まる。

 だが、次第にそのか細い手は震え始めた。


「……あり得ないっ!」


 その言葉にイーラは言っている意味がわからないといった顔で首をかしげる。


「そのあり得る存在ヲ目にして、ないと言われてしまうト自分ガ否定されたようで悲シイわ」


 イーラが言っていることが本当なら、彼女が暗殺者の攻撃をわざと受けた理由がわかる。物理攻撃が効かないのであれば、暗殺者の短剣など脅威ではない。


「でもソンナことより――」

「ヒッ!」


 イーラが言葉を切った途端、あふれ出した殺気が暗殺者を包み込む。

 抱きつかれ、逃れることが出来ない恐怖に暗殺者は小さく悲鳴を上げた。


「私ハ怒っているの。私ノ可愛いお嬢様のお命ヲ狙うナンテ、それこそアリ得ナイわ! 塵芥ちりあくたノ分際デ、身ノ程知らずもはなはダシイっ!」


 言葉の端々から殺気があふれてくるのを感じた暗殺者は喋らなかった。

 いや、喋らなかったのではなく、喋れなかった。

 自分より年下に見える少女。

 その中にある底知れぬ不気味さと殺意に気づいてしまった。


 それまで感じなかった恐怖という名の鎖が暗殺者の身体を締め付ける。

 ガタガタと身体中が震えてくる。

 そんな暗殺者に構うことなく、少女は言葉を続けた。


「でもね。あなたを生かしておくよう可愛い弟が言ってるのよ」


 少し落ち着いたのか、少女の口調は柔らかくなっていた。

 だが、暗殺者に向ける殺意が消えたわけではない。


「だけど私はね。お嬢様を狙ったあなたたちを生かしておく必要はないと思っているの」


 イーラは弟の言葉が理解できないといった顔で肩をすくめる。


「フフッ。だって、お嬢様なのよ? 美しく可憐なお嬢様。どんなに美しい花も高価な宝石もお嬢様の魅力には勝てないわ。お嬢様こそ至高! お嬢様こそ究極! まさにびゅーてふる、あんど、ぷりてぃ! いわゆるびゅーぷりてぃふる! そんなお嬢様のお姿を目にするだけで私は幸せな気分に満たされるの」


 そう言うとイーラは暗殺者を締め上げたまま、身体をクネクネと動かした。波のように揺れる彼女の身体はまるで液体のようにその場で揺れる。


「そんなお嬢様へ――そんなお嬢様に――そんなお嬢様を傷つけようなどと頭に浮かべるだけでも不敬だわ。そんなことを考えただけでも思っただけでも万死に値すると思うの」


 すると暗殺者の腰を抱きしめていたイーラの腕がずるずると動き出した。それはまるで植物のツルのように伸びていき、暗殺者の身体に絡みついていく。軟体動物のように骨も関節も感じさせない腕の不気味な動きはあまりにもおぞましい。

 その肌の表面はいつの間にか粘膜に覆われおり、ぬらぬらと光っていた。


 やがて暗殺者の顔まで到達したイーラの手は、暗殺者の口を優しくふさいだ。ぬらりとした感触が暗殺者の頬を撫でる。

 暗殺者はガタガタ震えたまま、首を左右に振った。

 そんな暗殺者の顔にイーラの顔がゆっくりと近づいてくる。

 それも異様な光景だった。

 イーラの首が伸び、顔が近づいてくるのだから。


 その恐怖は計り知れない。

 叫び声を上げようとも口を押えられている。

 そのため、くぐもった声しか出すことができない。

 イーラは暗殺者の首に自分の首を蒔きつけたあと、目を見開いたまま震える彼女の耳元に口を近づけささいた。


「ウーズ族ってわかる?」


 そう言われても暗殺者には理解できない。

 ただ、この魔族がそういうものだということだけはわかった。

 わかったところで身体の震えが止まるわけではない。


 ウーズ族。

 彼ら彼女らは貴族たちから護衛として引っ張りだこの魔種族である。

 あらゆる物理攻撃を無効化するウーズ族は守るべき者を狙う刺客の凶刃(物理攻撃)をものともしない。その身体を自由に変形させることが可能で、首を斬られても腕を吹き飛ばされても死なない魔種族である。斬り飛ばされた部分は勝手に動き、本体(大きいほう)に戻ってくっつく。

 炎を苦手としているが、強い魔法耐性を持っているため、魔法攻撃にも強い。苦手とする炎も魔道具などの補助があれば軽減できるため、ある意味、最強の盾になれる存在だ。

 さらに触ったものやその身に取り込んだものを任意で溶かすことのできる能力を持っている。そのため掃除の能力も優秀であった。ウーズ族が素足で歩くだけで床が綺麗になるくらいだ。

 またウーズ族すべてではないが、水のように吸収する抜群の記憶力と軟体性を生かした体術は貴族の子供たちの教育係兼護衛、並び侍女やメイドとしての適性も高い。

 余談だが、アルティコ伯爵家に仕えるヒミカの専属メイド(イシュリー)もウーズ族である。


「お嬢様のお世話をする『専属』の侍女であり、最後の盾。そしてお嬢様の回りにはびこるゴミを掃除するのも私の役目」


 掃除という言葉に暗殺者は心臓をつかまれたような心地がした。

 その言葉は暗殺者も使ったことがあるし、よく耳にしたからだ。

 敵対者を綺麗さっぱり片付ける(皆殺し)という意味で。


「生かしておくよう言ってきた彼には悪いけど――出来ない相談もあるわよね。あなたはここに来なかった。あなたの仲間もきっと一人で逃げたと思ってくれる。だって跡形もなくすべてを溶かしてあげるもの」


 存在すら消し去ろうとする残酷な言葉を最後に暗殺者の意識はぷつりと消えた。


 ◆


 月明かりだけが差し込む薄暗い部屋の中。

 白とピンクを基調とした部屋の奥には大きなベッドがあった。

 そのベッドの上には小さな赤い瞳が月明かりに反射して光っていた。

 若いらしい寝間着を着て身体を起こしている小さな影は部屋の扉に目を向けると、ふぅと小さな息を吐いた。


「――さすがは専属侍女」


 年齢にそぐわない大人びた物言いをした小さな影は、まもなく三歳を迎える一人の女の子。

 ベッドにはその女の子とよく似た幼女が気持ちよさそうに寝ている姿があった。幼女は起きている女の子を姉と慕う妹のような存在だ。


 その妹は身体を丸めて、くぅくぅと小さないびきをかいている。

 よく見ればおそろいの寝間着がはだけており、ぽっこりしたすべすべのお腹が見えていた。いたずら心でそのお腹をこしょこしょすると、幼女はくすぐったそうに身をよじらせる。

 そのせいで余計に寝間着がはだけてしまった。

 女の子はしまったと苦笑しつつ、お腹を冷やさないよう寝間着を直し、薄手の布団をかけ直してあげた。


「きゅぅ~?」


 すると目を覚ましてしまったのか、幼女は寝ぼけ眼のまま身体を起こそうとする。

 だが、女の子はそれを優しく押しとどめた。


「大丈夫よ。まだ寝ていなさい」


 もうすぐ三歳になるとは思えない慈愛に満ちた声で優しくささやきながら幼女の頭を撫でる女の子。すると寝ぼけ眼の幼女は安心したようにベッドへ小さな身体を沈めるのだった。


「……ふにゅ~。わかったのぉ。姉様ぁ――……くぅ」

「――ふふっ。おやすみなさい。シュリー」


 しばらくすると、また可愛いいびきをかきはじめた。

 そんな彼女を見て思わず笑みがこぼれる。


「あら?」


 ふと感じた気配に女の子は再び部屋の扉へと目を向けた。

 専属侍女以外に覚えのある気配が二つ増えている。

 しばらくすると、それら三人の気配がこの部屋に近づいてくるのがわかった。

 三人には自分が起きていたと知られないほうがいい。

 そう考えた女の子はベッドに寝転ぶと、布団をかぶり、そのまま静かにまぶたを閉じた。


 ◆


 二人の幼女が寝ているベッドの前に三つの影があった。


「寝てる?」

「はい。気持ちよさそうに寝ています」

「くふふ。さすがはお嬢様。おやすみになっているお姿も可愛らしい」


 尋ねたヨヨにヒミカが答える。

 そしてだらしない顔をしたイーラはクネクネと身体を揺らした。

 そんなイーラ(軟体系少女)を横目にヨヨは寝ている子の顔をのぞき込む。


「よかった。しかし、こんな小さな子を狙うなんてペドリアってやつ、とんでもないわね」

「まったくです。ペドリア伯爵には神の罰が下ることでしょう」

「もう下っていると思いますよ。そんなことよりシュリーちゃんの寝顔も捨てがたい可愛さがありますね。さすがはお嬢様が妹と呼ぶだけのことはあります」


 一人だけ的外れなことを付け加えたイーラは身体をクネッと揺らす。

 その態度にはほかの二人は苦笑を漏らした。


「ところでさ、イーラ。暗殺者だっけ? あれ、さすがにやり過ぎじゃなかった?」


 暗殺者と名乗った少女はもう少しでいなかったことに(ないない)されるところだった。あのあとすぐ現れたヨヨとヒミカの説得により助け出されている。ところどころ大やけどを負っていた身体もヒミカの神聖魔法によって治療済みだ。

 今はほかの侵入者たちと一緒に牢の中に放り込まれている。

 ちなみに暗殺者の彼女はウルナたちによってセシノという名前がつけられた。


「ヒミカちゃんの治療が間に合わなかったら、あの子死んじゃってたわよ」


 ヨヨが非難めいた目をイーラに向けると彼女は不思議そうな顔で首を傾げた。


「え? そのつもりでしたけど? 何か?」

「こわっ!」


 あっさりとした答えにヨヨの顔が引きつった。

 そして理解する。

 間違いなく某執事見習いの同僚だと。


「……あのお二人とも。二人が起きてしまいますし、ここで話すような内容では……」


 ヒミカはそう言って二人をたしなめた。


「確かにヒミカちゃんの言う通りね」

「お嬢様も無事でしたし戻りましょう。そして侵入者たちにとどめを……」


 次第に無表情になっていくイーラに慌ててヨヨが声をかける。


「とどめないで! 彼に生かしておくよう言われたんでしょ?」

「姉が弟の頼みをすべて聞くと思ったら大間違いです」

「いや、そこは執事見習いと侍女の立場で考えようよ。それに侯爵様にも報告が必要でしょ」


 ヨヨがそう言うとイーラは小さく口を尖らせた。


「全部溶かしてしまえば、報告も簡単なんですけどねぇ」

「何か言った?」

「いいえ? 何も?」

「それにしても……キレた執事見習いくんを見たことあるけど、あれって絶対イーラの影響でしょ? さっきのイーラ、キレた執事見習いくんにそっくりだったわよ」

「そりゃあ、姉弟ですもの」

「ということは将来、ヒミカちゃんはイーラのことをお姉ちゃんと呼ぶのね」

「ふぇっ!?」

「――姉として聞き逃せませんね。今から大事なお話しをしましょう」

「え?」


 戸惑うヒミカの腕をイーラはがっしりとつかむ。


「あっ、そうそう。ダンジョンから出てくる前にあったことも聞かせてもらわないとね」


 そう言うとヨヨはイーラとは反対側の腕にしがみついた。

 妖精のしつこさは健在だ。


「ふえぇぇぇぇぇ!」

「お静かに! お嬢様がお目覚めになられてしまいます!」

「静かに! ティリアちゃんが起きちゃうでしょ!」

「……え~」


 顔を真っ赤にさせたヒミカは両腕を固められたまま、部屋から連れ出されていった。その行き先には恋愛話(恋バナ)が大好きな侯爵夫人及びお嬢様大好き四天王の三人が待っている。


 部屋は再び静寂を取り戻す。

 あとに残されたのは二人の幼女。

 そのあどけない寝顔には楽しそうな笑みが浮かんでいた。



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