俺の理想郷が…
俺は匂坂つばさ。どこにでもいる高校1年生。
目標だった羽ヶ丘南高校に見事入学を果たし、親元を離れこの町で一人暮らし始めた。
憧れの一人暮らしに期待を膨らませていた俺だったが、その思いは1週間もしないうちに断ち切られた。
とりあえず細かいことは後回しにして、2DKのアパートに住む俺の家族を紹介しよう。
まずこいつは俺の飼い猫のタク。
性別はオス♂。
高校のの合格と同時に買ってもらった愛しのペットだ。
別に一人が寂しいだとか、モテたいからとかで飼い始めたわけではなく、単に猫が好きだから飼っているだけだ。
まあ、余談はこれくらいにしておいて、とりあえず全員紹介しよう。
こちらは同居人の夏河真凛。
家が火事でなくなった上、唯一の肉親だった祖母も亡くし、天涯孤独となった少女。
公園に独りでいたところ、偶然通りかかった俺たちが自主的に保護をした。
これからずっと同居していこうと思っている。
そして最後の住人?。
真凛の飼い猫のメルだ。
真凛と一緒に孤独で過ごしていたメス猫だ。
ぶっちゃけタクとメルのおかげで真凛と出会うことができた。
俺が今こんな幸せな生活を送れているのもこの二匹のおかげなわけだし、ある意味感謝すべき存在なのかもしれない。
というわけで引っ越して早々、新たな生活を始めざるを得なくなった俺だが、一人で生活していたときとはうって変わって、予測もしなかった問題が次から次へとに生じる。
一人暮らしの高校生には贅沢すぎる2DKの間取りで住まい自体は十分大きい。
だったらつばさと真凛がそれぞれ一部屋ずつ使えばいいじゃないかと思った読者は恐らく全体の8割近くを占めていただろう。
ところがどっこい。
15年生きてきてこのかた、一度も一人で寝たことがないと言い放った真凛は、それが例え知り合って数時間しか経っていない同年代の男子だろうと、一緒に寝たいとせがんできたのだ。
初日の夜は試しに1人で寝かせていたが、1時間もたたないうちに半べそをかきながら寝ぼけていた俺の布団に潜り込んできた。
正直焦った。というか、訳がわからなかった。
寝返りを打った瞬間、なんともいえない気配を感じ、眠い目を擦りながら確認してみると、眼前数センチに真凛がいた。
俺は思わず声を上げて叫んだ。
「なぁ?!え?ちょ、真凛?!」
日付が代わりかけた時刻に二人の住む202号室の部屋からは男子の叫び声が上がった。
真凛はうるさいとばかりに布団を頭から被り、目のみを出して
「どうしたんですか?」
と、なんの変てつもなく聞いてきた。
「なんで真凛が俺の布団のなかにいるんだ?しかもなんか、涙目だし。」
夜中ということも忘れずつばさは声を張りあげる。
「いや、あの、その…独りでは不安で眠れなかったので…。寝不足になったら困るなと思いまして…。」
「……。まあ、今日のところはいい。けど、徐々に一人で寝ることに慣れていくんだぞ?」
「…努力します。」
とりあえず真凛が使っていた布団を持ってこようと立ち上がろうとしたとき、真凛に腰の辺りを捕まれた。
「どこへいくんですか?」
「ん?真凛にの布団をこっちに持ってこようと思ったんだけど?」
「あ、そうですか。絶対に戻ってきてくださいね?」
真凛が体を起こして不安そうな目をしている。
「大丈夫。すぐ戻ってくるからちょっと待ってて。」
持ってきた布団を真凛の要望でつばさが寝ていた布団にぴったりくっつけて二つ並べる。
二人それぞれの布団に入り、先ほど部屋の扉を開けたときに入ってきたタク、メルと共に初日の夜は更けていく。




