第十一話『助けて』
あっはは✩
「うーーーーーん…」
椅子にもたれかかって唸り声をあげる。
「うぅううううううん…」
傍から見れば異様な光景かもしれないが、今はそんなことがどうでもいいと思えてしまうほど、深い考え事をしていた。
昨日の、イシカの発言が気になって仕方ないのだ。
『ヤマトの能力ってもしかすると、それかもしれない』
それは、おそらく、俺がなぜか第三者の視点が見えてしまうという不可思議な現象を指しているのだろう。
あれはなんだったのだろう。ただの夢にしては夢を見ているような曖昧な感じはなかったし、実際に現実に起こっていることを俺は見ていた。
正夢…これが一番可能性が高い仮説であるが、そんな都合よく二度も正夢を見れるものなのだろうか。
それこそ、それが俺の『能力』なのだとくくってしまえば全て納得がいくが、能力という存在自体が無理やりな気もする。
特殊能力部といっても、あいつらが勝手に勘違いしてたり思い込みで自分に能力があると言っているだけであって、そもそも能力なんて存在しなかったのかもしれない。
「うぅーん…」
いろいろなことがぐるぐるとまるでかき混ぜられてるように入り込んできて俺は思わず目をつぶった。
真っ暗な視界。そこには何も映らなくて、ただただ、黒い闇が広がっているだけだった。
俺の目はしっかりとした、「目」の役割を遂げていて、それ以上のことをするわけでもなく、それ以下のことを行うわけでもない。
ただ、今見ている物を、色を、脳に送り込んでいるだけなのだ。
普通の目、なんの変哲もない平凡な目。
いや、平凡であってほしかったのかもしれない。
自分が人と、違うということを…認めたくなかっただけなのかもしれなかった。
*
「ういーす…」
俺は今日も特殊能力部の扉を開いて、気だるい挨拶をした。
自分でも感じが悪いかとすこし思ったが、言い直すのもすこし恥ずかしいものがあるので、そのまま入る足を進めた。
「ん?ムクしかいねーのか?」
俺がそういうと、ムクはこっちを見ると、ハッとした様子で「あ、あぁ」と答えた。
「ほかの奴らは?」
「まだきていない。」
「そうかー」
他愛もない話を少々し、俺は椅子に座った。ムクは向かいの椅子に座っていて、向かい合う状態になっていた。
なんとなくだが、女子と二人きりというのは苦手だ。
というか異性じたいあまり好きではないので、俺はなにを話したらいいのかと困惑する。
えぇっと…「必読!女子にモテる24の方法!」にはこういうとき、なんて書いてあったんだっけ…思い出せない…今ほど自分の記憶力のなさに腹が立ったことはない。
「ヤマト。」
俺が頭を抱えて考え込んでいると、ムクが俺のことをよんだ。
「ん?なんだ?」
そういうと、ムクは口を開くも、でかかった言葉を飲み込むようにして、俯いた。
え、なになんて言おうとしたの?「お前の顔キモイよ★キャハッ★」とか?いやまさか「彼女できたことないの?うわぁ✩この流行遅れぼっちめ✩」とか!?!?
「いやお前口悪すぎだろ!!!」
「…は?」
自分の妄想の癖して、あまりにも腹が立ち、声がでてしまった。
「あ、いや、ごめんなんでもない」
少々たじろぎながらそう言うと、ムクは「そうか」といってまた俯いた。
「…お前今日おかしいな?普段なら『煩い。その言葉は私に対してかい?なら怒鳴らくても聞こえるからそこまで大声をはりあげないでくれ。君の両目は私が君のすぐ近くにいるという距離感すらもわからないほど腐っているのかな?眼科にいくことを激しくおすすめするよ。』とかいうはずなのに。」
「わかっているならそんな大声を張り上げないでくれるかい?」
「んだとぅっ!?」
やっぱり、ムクはどこかおかしい。元気がないというか、なんというか、悩み事でもあるような…。
「ムク、お前、なんか悩んでることあんのか?」
俺がそういうと、ムクは驚いた表情を見せるも反抗もせず、静かに頷いた。
「……」
「ちょっと、話を聞いてくれるかい?」
ムクがそうつぶやく。俺は「あぁ」といって、唾を呑んだ。
それから数十秒ほど静寂が続いた。
自分の心臓の音が聞こえるような気さえした。
ムクをみると、どこか、迷っているようにみえた。
それからちょっとして、ムクはすぅっと息を吸うと、俺の方を見て、こういった。
「実は、私…濡れ衣を着せられたんだ。」
勢いでかいたぜ




