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第十話『ごめんね』

いやぁ皆さん!記念すべき10話ですよ!!二桁いきました!

まぁ、だからどうしたっていうwww

「とは言ったものの…やっぱり容姿だけじゃな…」

俺は今、ユカリと町を歩いている。

「やっぱり、見つかりそうにないの?」

ユカリが少し悲しそうに言う。

「いや、どうやっても見つけてやる!絶対に、だ。」

「…うん!」

…ユカリを勇気づけるものの、本当は、自分でも不安で仕方がないのだ。

もしかしたら、見つからないかもしれない。

どうすれば…

「とりあえず、いろんな人に、聞いてみるしかないの。」

そうだな、と言って店の前で足をとめる。

「とりあえず、この店から聞いてみるか。」

「うん!」

「うぁ~…つっかれたぁ…」

「やっぱり、いないの…」

あれから、15件ほどの店を聞き込みしたが、目撃情報がまったく出てこないのだ。

「もう、夕日が沈みそうなの。今日は、もう帰る?」

「どうするか…」

ドンッ

「うわぁ!?」

他愛もない話をしていると、横からなにかぶつかってきた。

「いってて…って、おい、お前大丈夫か!?」

慌てて横を見ると、そこには小さな少年がいた。

「だいじょうぶだよ。おにーさんこそ大丈夫?ごめんね。」

少年は落ち着いた声で話す。

すると、ユカリが「あ!」と、何か思いついた様子で、少年にかけよった。

「ねえ君!あのさ、犬しらない?茶色い犬なの!おはぎがだいすきなの!」

…え

「おい、ユカリ!子供に聞いたってわかるわけねえだろ!」

俺がユカリの腕を掴んでいう。

「いや、でも、子供のほうが結構いろいろ見てるんだよ。もしかしたらなにかわかるかも知れないの。」

「それも…そうか…」

俺はユカリの腕を掴んでいた手を離し少年の答えを待つ。

「……知ってるかもしれない」

「ほんとか!?」

「…うん。どこか忘れちゃったけど、さっき見たよ。茶色い犬」

少年がそう答えると、ユカリの表情がみるみるうちに輝いていった。

「もしかしたら…見つかるかも…!ありがとう!!」

そう言ってユカリは駆け出した。

「ちょ、おい待てユカリ!まだユカリの犬って決まったわけじゃ…あ、ありがとなお前!!」

俺は少年に一言いうと、ユカリの後をおった。

「ちょ、待てユカリ…!」

ユカリの背中が少しずつ近づいていく。それでもまだ追いつけない。

「もう少しで追いつける…!」

手を伸ばす…すると急に…

「きゃぁ!!!」

曲がり角で、急に自転車が飛び出してきた。

いや、あちらにとっては、こちらが飛び出してきたのだろう。

「ユカリ!!!」

手を伸ばし、掴む。

そして引き寄せる。

「うわっ!!」

その行動を咄嗟に行ったため、体が急な体重移動に耐えられず、俺はバランスをくずした。

ガンっ!

脳にまで響いてくる痛みを合図に、俺は気を失った。

ん…

ここはどこだろう…

ん?これって…

俺たちがさっき言った店の裏・・・?

あ…道路にでた…

どこだ・・・?こいつはどこに向かってる…?

体がいうことをきかない。

そして心なしか目線が低い気がする。

もしかして…

あれ…ここって…

空き地前の道路…?

…!

車が…近づいて…

動けよ…おい…ひかれる…

「動けよ!!!!」

「ひゃあ!?」

「え?」

「ヤマト、やっと目覚めたの!さっき、転んで気絶してたの!」

あぁ…そっか…おれ、ユカリを助けようとして…

「~~~っ!」

「ヤマト・・・?」

「空き地の前の道路…」

「え・・・?」

「お前の犬、そこにいる!!!」

「ちょっ!待って!ヤマト!!」

俺はユカリの声を待たずに空き地方面へ向かった。

まるでさっきの俺とユカリの立場が逆転したように、ユカリは俺を追いかけ、俺はユカリから逃げるように進んでいく。

「はぁっはぁっ…」

足が悲鳴をあげはじめる。

「つい・・・た・・・」

そう言って、空き地の前の道路をきょろきょろと見渡す。

「!」

道路の端の方に、いわゆる「血痕」というものがついている。

そして、その血痕は、空き地に続いているようだった。

「ヤマト…!」

ユカリが息切れしながら俺に近づいてくる。

「いた…」

「え・・・?」

ユカリがなにか言葉を吐こうとしているのを聞かず、俺は空き地に飛び込んだ。

「・・・」

そこには、一匹のやせ細った犬が倒れていた。

「ずん太・・・」

ユカリはそういって、その犬に近づいた。

「ずん太!ねぇずん太!起きてよ!」

ユカリはその犬を抱いて、必死に名前を呼ぶ。

俺も近づいて、そっと体を撫でる。

冷たい。

その感覚が、死を意味していることに気づき、どうしようもない感情が溢れ出る。

「この犬・・・ずんたっていう名前なのか?」

俺がそう聞くと、ユカリはコクリと頷いた。

「ずん太とね、初めてあった場所、ココなの。この空き地。」

「・・・」

「ずん太、車にぶつかった、のかな。沢山、血が、でてる。」

どんどんか細くなっていき、途切れ途切れの言葉で、ユカリは俺に話した。

「もしかしたら、ココにくれば、あたしとあえるっておもったのかな?また、あの時、みたい、にさ。」

「・・・・っ!」

なにもかけてあげられる言葉がない。そんな自分が妬ましく思える。

「ごめん、ね。ずん太。怖かった、よね。お腹も空いたよ、ね。痛かっ、た、よね。辛、かったよね。ごめん、ね。ごめんね。」

ユカリの頬に反射する液が見える。

泣いているのだ。

もし自分がもっとはやく見つけてあげられたなら。

もし自分が犬を飼えていれたなら。

もし…もっと一緒に過ごせていけたなら。

そんな後悔の涙のように、俺には見えた。

「…ユカリっ!」

俺は耐え切れず、言葉を吐き出す。

「すくなくともっ、もし俺だったら、可愛がってもらえただけでも、とっても嬉しいよ。綺麗事かもしれないけど、俺が犬だったら、ユカリに感謝してる!!ありがとうって思ってる!!!」

なにが言いたいんだかまとまらないごちゃごちゃのままの言葉をただ言った。

ユカリは、驚いた表情で、俺を見つめる。

「あの、さ。俺だったら、その、ユカリのこと恨まないし…

それと、これからも忘れないで欲しいとおもう。」

自分のことではないのに、勝手に自分の感情でどう考えているのかを決め付けるのはよくないかもしれない。でも、少しでも、なにかしてあげられることがあるなら、代弁者として、この犬の気持ちを、知ったかぶりでも語って、伝えてあげたい。

「…そう、だよね。」

そう言ってユカリは涙を拭き取る。

「ありがと、う。今は、まだ、ちょっと、立ち直れないけど、これか、らも、ずっと、ずん太のこと、忘れないで、いる」

「…あぁ」

ユカリの辛そうな微笑みに、俺は優しく微笑み返す。

「ヤマ、ト。最後の、お願い、なの。」

「…なんだ?」

「ずん太、一緒に埋めてくれないかな?」

「…わかった。」

その後、ユカリの家のそばの場所に、ずん太を埋めた。

ずん太の大好物のおはぎを沢山添えて。


二人、静かに手を合わせる。

「大好き…だった……大好きだよ…ずん太」

ユカリがかすかにそう呟く。

俺の頬に、一粒、暖かい涙が流れていくのを感じた。

「もう、6時だね。帰ろっか」

そう言って、ユカリが俺の方へ向く。

「つーか、カバン部室に置きっぱなしだった…」

「え!?もう少しで学校しまっちゃうの!急ぐの!」

「そうだ!やべぇ!!」

~~~

ガラッ

部室を勢いよく開ける。

「って…電気つけたまま帰ったのか「ヤマト!!!」うわああああ!?」

気がつくと、目の前にはイシカが。

「今までどこいってた!?心配したんだぞ!」

「…犬見つけた」

「え!?」

イシカが驚く。

「え、ヤマト、犬、みつけたの?」

イシカの後ろから、ひょいっとクロトがでてくる。

「あぁ」

「え!?そうなの!俺たち完全に無意味じゃん!」

そのクロトの後ろから、ウソカジがでてくる。

「全く、こっちは職員室の電話を借りて、この街とこの辺にある市区町村のありとあらゆる店に電話をかけて目撃情報を聞き回ったのだよ。タウン〇ージがなければこんなことできなかったのだよ。」

さらにウソカジの後ろからムクがでてきて、ひょっと黄色くて分厚い本をだす。

お前ら、ちょっと失敗したEXILEみたいになってるぞ。

「にしても、ヤマト。どうやってみつけたんだ?俺たちはここまで聞き回ったが、それっぽい目撃情報は1、2件しか聞けなかったし、見に行っても違う犬だった。人数的にも方法的にもこっちのほうが見つかる確立が高いと思ったんだが。」

イシカが怪しむような目でこっちを見る。

「…みえたんだ」

「・・・え?」

イシカがさらに怪しむような目で見る。

「転んで、気絶して、その時に、見えた。」

「・・・」

イシカが考え込むような表情をする。

「はいはいすとぉーーーっぷ!!」

「うわぁ!?!」

後ろからの声に慌てて振り向いた。

「みなさん!あと5分で、門が閉まるそうですよ!急いで帰り支度をしてくださいなの!」

ユカリがちょっと困った感じで言ってくる。

「なんだ・・・ユカリか・・・ってあと5分!?やべえ!!ここから正門って結構遠いんだぞ!?」

「あぁ!そうだった!!」

「校門がしまっちゃう!」

「急ぐのだよ!!」

俺たち6人は、慌てて正門へと向かった。

「ヤマト」

「あぁっ・・・?なんだっ・・・はぁっ・・・イシカ!」

喋りながら走るのに苦痛さを感じながらも返事をする。

「ヤマトさっき、みえたって言ってたよな。」

「?・・・あぁっ・・・」

「ヤマトの能力ってもしかすると――




              それかもしれない」


ごめんね。ごめんね。ごめんね。

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