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第4話:最初の厄介事



 次の日の朝、俺は自分の向けられる強烈な殺気で目を覚ました。目を覚ました瞬間、俺はその場から一瞬で飛び起き、離脱する。


 そして次の瞬間、俺が今まで寝ていた所に真っ赤に染まった魔剣が振り下ろされた。


それは完全に昨日の夜、俺が顔パンしたメイド、ミルカが持っている魔剣、“ダーインスレイブ”である。


 俺は即座に、俺を殺そうとしたマジキチメイドの腹に蹴りを叩き込む。


「ごふぅ!!」


 という声を上げて、数メートル吹き飛びそのまま気絶する暗殺者・・・もといメイドミルカ。


「はあ、いくらなんでも既に守護騎士になった俺を蹴り飛ばすとかどんだけだよこの女。危うく殺しちまう所だったじゃねえか」


 そう呟きながら、俺は気絶したメイドがいる室内で服を着替える。


 ちなみに正式には俺はまだ守護騎士にはなっていない。しかしリリィが機能の内に、国王と王妃に、守護騎士を決めたという旨を伝えたらしい。


 普通なら反対するだろが、リリィが何とか認めさせたのだろう。


 あとは一週間後に行われる守護騎士任命式典に出れば、俺は正式に守護騎士になる。未だに守護騎士になりたくはないが、リリィの事を何だかんだ言って気に入っている俺は、やっぱりなし崩し的に守護騎士になるんだろうな、と思ったりしている。


 今はこのメイドが一番ウザいが、もしこれ以上ウザいようなら二度と逆らえないように徹底的に痛めつける必要がある。


 今の所はするつもりはないが。


 ちなみに俺は、守護騎士になるのが決定したと同時に、リリィから部屋を与えられた。場所はリリィの部屋の隣で、リリィの部屋とは繋がっているらしい。


 なにアホなことしてんだよ、とリリィに言った所、「大丈夫よ。その隠し扉は私しか知らないわ」とドヤ顔で答えたが、なにが大丈夫なのかおれにはさっぱり理解出来ない。


 部屋を出た俺は、そのままリリィの部屋に入る。


 ―――コンコンコン。


 と、きちんと三回ノックする事を忘れない。


 流石の俺でも異性の部屋に入る時の常識ぐらいは持っている。


『ウィークね?入りなさい』


 了承の返事が来たので、俺はドアを開ける。


「邪魔するぜー」


「・・・貴方、お願いだからお父様の前でその言葉使いは止めてよね」


 綺麗なドレスに着替えていたリリィは、呆れたようにそう漏らした。


「ふむ。善処しよう。それにしても相変わらずドレスが似合うな」


 俺が素直な感想を漏らす。


 すると、リリィの顔が一気に真っ赤になる。


「そ、そう?ま、まあ、私なんだから当然よね」


 完全に照れているが、俺はあえて指摘しない。これで下手に指摘すれば何をされるか分からないしな。


「そ、それより今日はお父様に会う日でしょ?」


 リリィの言葉で、俺は思い出した。


 そう、今日はリリィの父親、つまりこの国の国王に挨拶をしなければならない。自分の娘の命を託すんだ。むしろ挨拶というより人柄を見るといった意味合いが強い。


 だがぶっちゃけ俺はそういうのが好きじゃない。


 己の価値を決めるのは他人である、というのは当たり前の事だが、だからと言ってそれをどうでもいい人間に決められるのを許容できる程俺は大人ではない。


 しかし俺は昨日の時点でリリィの守護騎士になると決めた。


 ろくでもない人間の俺だが、せめて自分が決めた事はやり遂げる。じゃなければ本当に俺は何もない空っぽな人間に成り果てる。


 だから今日くらいは我慢してやるよ、国王様。



@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@



 そして国王への挨拶の時間がやってきた。


「よお。俺がリリィ=フラル=メルドの守護騎士となるウィーク=ツァーリだ。よろしく頼む」


「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」


 俺の挨拶に一同が完全にポカーンとしている。


 それもそうだろう。まさか国王相手に一切の敬語を使わずに話す奴など全世界見渡しても俺ぐらいしかいない。


 国王や王妃、そして四人の王女、そして沢山の貴族共、更には守護騎士の三人も、信じられないといった顔だ。


 唯一リリィだけが、「やっぱりやらかしやがった」といった顔をしている。


 俺を守護騎士にするんならこれくらいは許容しろ。と、視線を送る。「死ね」と視線での返答が行われるが、それに対しては俺は無視する事にした。


「ぶ、無礼なッ!!国王陛下に対してなんたる不敬かっ!!」


 一人の太った男が声を荒げてくる。


 国王の近くに立っている事から、恐らく大臣だろう。全く、見るからに自己管理の出来ていない男に国を管理できる筈がないだろう。


 俺は呆れながら、大臣を人睨みする。


「――――ヒッ!!」


 すると大臣は怯えたように一歩下がり、それ以上反論する事はなかった。


 っち、弱いクセに粋がるな。


「そなたがリリィの守護騎士か?」


 さすがに何か喋らなければと思ったのか、国王がそう聞いてくる。


「ああ。というかさっき自己紹介しただろうが。話し聞いてなかったのか?」


「い、いや・・・。すまんかったのう。ちなみにお主は何か得意な事はあるのか?」


 国王は額に青筋を浮かべながら俺に尋ねる。


 普通、ここまで国王に敬意を払わない奴に会う事の方が珍しい。故に耐性がないらしいな。


「得意な事ですか?戦闘ならこの国で一番強い自身があります」


 どうせ後々俺に反発して試合を申し込む奴らが急増するだろう。負けると指名手配というペナルティーを負っているなら俺は勝つしかない。なら多少は不遜な態度も必要だ。それに俺がこの王国で一番強いというのは本音だしな。


「ほう・・・」


 俺の言葉に、国王は値踏みするような表情をし、王女の後ろに控えている守護騎士は、好戦的な視線を俺に向けてきた。


 というか守護騎士の中に一人見知った顔がいた。


 金髪の縦ロールの王女の後ろに立っている男は、ジャック=カリ=ツァーリ。俺の兄だ。この兄は俺と違って、魔法に関しては、天賦の才を持っている。


 貴族と、騎士を志す者のみが入学出来るメルド王立学院を主席で卒業し、僅か十九歳で守護騎士という最高の名誉を手に入れた天才。


 今では、「王国の牙」という二つ名まである。


 俺とは違い両親の愛を一身に受けた男。


 そして、その男の隣にいた超絶イケメンが前に一歩進み出た。


「陛下、少し宜しいでしょうか?」


「なんじゃレオン?」


 レオン・・・。


 そうか、こいつがレオン=パラドルチェ=ヴォルフ。「パラドルチェ(聖騎士)」の称号を得た王国最強の騎士。


 この男に関する情報は余りにも多い。


 こいつは、王国内では言うまでもなく、更には国外にまでその名を轟かせる超有名人。何よりもあのありえないイケメンっぷり。


 俺の自分の顔は客観的にみてもそれなりに整っているとは思うが、あいつの前ではウンコみたいなものだ。


 それほどまでに圧倒的なルックスを持つレオンは、女性人気が凄い事になっている。


 と、一見してリア充爆発しろ、という言葉を一番言いたくなる男が俺に一体なんのようだ?


「陛下、私とこの者の試合を認めては頂けませぬか」


 おいおいおい。いきなり何とんでもない事言っちゃってんのこいつ?


「ふむ。何故じゃ?」


「この者の言動は余りにも守護騎士に相応しくありません。しかしこれはリリィ第三王女殿下がお決めになられた事。私如きがどうこう言える立場ではございません。ですからせめて私が先達としてこの者に守護騎士としての在り方をお教えしたいと思いまして」


 つまり要約すると、「こいつ生意気だからシメていいっスか?」って事だろ?


 ふざけんなよこのイケメンウンコ。そんなん誰が受けるか。


「お父様!流石にそれは少し危険です!いくらウィークが強いとはいってもいきなり騎士ヴォルフと試合をするというのは!!」


 リリィも俺が王国最強と戦うのは流石に分が悪いと思ったのか、この試合の不必要性を言い張る。


 しかし俺の礼儀の酷さはリリィ以外の全ての王族、貴族に否定的に受け入れられており、誰も俺を擁護しようとはしない。


 それどころか、率先して、「戦うべきだ」。という意見が非常に多い。


「ふむ。儂もこの者の力を見たいとは思っておったのじゃ」


 どうやら俺は王国最強の騎士と戦う事が既に決まってしまったらしい。


 これから先色々な面倒が起るとは思っていたが、いきなり難易度最高の面倒事が舞い込むとは思わなかった。


「では試合は城内の訓練場で行う!ウィーク=ツァーリ、レオン=パラドルチェ=ヴォルフ両名は急ぎ移動せよ!!」


 俺は仕方なく、闘技場に移動した。


 そして、試合の公平をきすため、リリィは俺とは別に移動する事になった。・・・別にレオンの戦い方を知ろうが知らんかろうが結果は変わらんだろう。


 内心愚痴りながら、俺は歩を進めるのだった。


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