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負傷した二人を支えながら森を出る頃にはすでに朝日が昇っていた。
(家にいなかったことは岑にバレたな。)
生い茂る葉の隙間越しに陽の光を見て芙はため息をつく。
しかし、森を出ると予想外にそこには岑がいた。
加えて子供達の親が立っていて、宗斐と芙に支えられた子供達を見た瞬間まるで盗人から財宝を取り返すかの如く俊敏な動きで我が子を抱き抱えた。
隆は芙に何がいいたげだったが、二人の親たちはろくな感謝も告げずにそそくさと帰っていった。
それを見送りその場には芙と宗斐と岑だけが残された。
芙の姿は汚れてはいなかったが、夜通しの森歩きでやつれていた。
岑は宗斐になんとも言えない視線を向けつつも芙に近づく。
岑が近くに来た瞬間芙の体の力が抜けた。
宗斐の右手がわずかに動いたがそれより早く岑が芙を支える。
「……この際もう何も言わない。」
芙は叱責を覚悟していたが、岑は怒る気力もないようで呆れたようにこぼす。
それから力任せに好きなだけ芙の頭を撫で回した。
「俺は芙を信じているけど、それでも失ってしまうかもしれないと怖いんだ。それは忘れないでくれ。」
散々に荒らした頭を仕上げとばかりに軽く叩きながら岑は言う。大乱を生き延びた二人にとって命ほど重いものはない。芙は岑の言葉に何も言えなくなってしまった。
(私もあの子とそう変わらないじゃないか)
たった一人残った家族を前にすると、衝動的に危険に身を晒した自身の行動に罪悪感を覚えた。
二人がそうしている間宗斐は昨夜と同じように心ここに在らずな様子で立っていた。
しかし、目線だけはジーと芙を見つめていた。
その視線に芙が気づくと宗斐は眉根を寄せた。
そしてすっと拱手をすると「失礼する」といって去っていく。
「なんだあいつ、なんか森の中で変なもんでも食べたのか?」
頭上の岑の言葉を聞きながら芙もその様子に違和感を覚えた。
展開の都合上短いです。申し訳ありません。




