表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたと巡る、愛しい雨旅  作者: 七賀ごふん
輪転

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/14

#1



互いな見つめ合ってる。一秒経つごとに心を焦がしている気がする。

都築は唾を飲み込む。景は縮こまる都筑の手を優しく握り、上を向いた。


「お前が打ち明けてくれたから……俺も隠してたことを言っていいか?」

「ど、どうぞ」

「失望すると思う」

「え。け、警察のお世話になったことがあるとか?」


冗談で言ったのだが、軽く頬をつつかれた。

真面目な顔を浮かべて待っていると、胸まで布団を引き上げられる。


「主を見つけたら、この旅は終わるんだな。……って」


景は子どもを寝かしつけるように、都筑の胸の上に優しく手をおいた。

しかしあたたかい手つきと反対に、苦しそうに顔を歪める。

( 景さん…… )

それだけで何となく、彼が言おうとしてることが分かった。自分達は主を見つけたい。けど見つけたら、そこで旅する理由は失われる。本当の意味で他人に戻って、それぞれ別の人生を歩み始める。

俺はそれが寂しくて、あまり考えたくなかったけど、……彼も同じだったんだ。


「見つけたいけど、見つけたくない。矛盾してて最低だろ」

「まさか。……俺もです」


主様を見つけられないかも。

それと同時に抱いていた、もうひとつの不安そのものだ。

全ては、離れたくない、という感情に帰結する。

長い月日を経てようやく巡り会えたのに、目的を果たしたらまた疎遠になるなんて。そんなの、あまりに淋しい。

「前世は離れ離れで別れたから、今世はずっと一緒にいる。っていうのはどうでしょ」

人差し指を宙に向けて提案すると、景さんは顔を綻ばせた。


「良いに決まってる」


ベッドが軋む。俺の顔の横に手を付き、彼は覆いかぶさってきた。


「都築。……好きだ」

「……っ」


視線が交わる。手のひらが重なり、指が絡み合う。

再び唇を重ねた。熱くて、頭も心もとけてしまいそうだった。

「景、さん……風邪うつっちゃいますよ」

「大丈夫」

「駄目駄目……」

彼の胸を押して離れるよう促したが、むしろもっと強い力で抱き締められる。顔はもちろん、腰も当たってどきどきした。

「景さ……っ」

額や口元、首に鎖骨……ありとあらゆるところに口付けされる。まるで自分のものだと確かめるように。

耳の中にまで舌をさしこまれた時、今まで感じたことのない感覚に襲われた。全身がぶるっと震え、つま先の力が抜けていく。


このまま彼の腕の中でとけてしまうんじゃないかと、本気で思った。


「あ……っ」


片脚が宙に向いて跳ねる。服を着てるからいいものの、そうでなかったらやば過ぎる体勢だ。

仰向けのまま、彼に向かって脚を開いている。

「ん……」

普段は眠たげなのに、今の景さんの眼は鋭かった。獲物を狩る猛禽のような瞳で、服の上からも俺を射抜いている。


「景さん、そんなに見られると恥ずかしいです」

「そりゃ、照れてる顔を見たいからな」

「意地悪……」


涙にぬれた眼じゃ、睨んでも迫力はない。目元を指で撫でられ、簡単に唇を塞がれてしまった。

「……止まんなくなりそう」

景さんも次第に息が荒くなっていた。辛そうに、額に浮かぶ汗を袖で拭っている。


「病人相手に盛んのはまずいな」


微笑を浮かべ、彼は体を起こした。でも、こちらとしては熱が上がったまま放置されたようで、切ない。

伸ばしかけた手を引っ込め、自身の額の上に乗せた。

「都築。どうした?」

「いや……景さんって、その……意外に積極的というか。でも引くのも早いというか」

横向きになり、両手で顔を覆う。


「実は経験多かったり……?」

「ない」


即答だった。きっぱりと言い放ち、彼は真顔で腕を組む。


「言ったろ。俺もお前しか興味ないんだ」


乱れた都築の襟元を直し、布団の下に手を入れる。

「っ!」

火照った部分のすぐ傍に手を添えられ、都築は震えた。

「もっと言えば、お前に関することならどんなに些細だとしても興味ある」

心はもちろん、……身体も。

景は都築の唇に、空いてる方の手で触れた。

「今日はここまでだ。ほら、ここにいるから寝な」

布団を掛け直し、頭を撫でてくる。

まだ不完全燃焼で、少しもどかしかったけど、彼の笑顔に全部持っていかれてしまった。


大変だ。

俺は、彼に溺れ過ぎてる。


「……おやすみなさい、景さん」

「おやすみ。……都築」


しとしと、優しい水音が鳴っている。


水溜まりの中から空を見ているみたいだ。綺麗で、透き通って。だけど陽射しが入って温かい。

彼の傍はいつもそう。心地よくて、怖いぐらいホッとする。


溺れるのが怖いなんて、今思えばアホらしい悩みだ。

俺はもう何百年も前に、彼がつくった池の中に住んでいたんだから。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ