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1・それが転生


世界は、ある日を境に突然変貌をとげる。

それが異世界転生――。



 冥聖中学三年、剣道部主将。沢渡一二三(さわたりひふみ)は夕暮れの河川敷をトボトボと歩いていた。

 防具袋を肩に下げ、竹刀袋を頼りなく握れば、一歩一歩に、県大会準決勝の苦々しい後悔が込み上げる。


 この試合で勝敗が決するという高まった空気の中。両者譲らぬ激しい接戦による一本負けならば、潔く敗戦を受け入れるところではあった。が、両校2勝2敗で迎えた大将戦。一二三は開始2秒で胴を薙がれて一本負けを喫したのだ。ひと振りさえ竹刀を交えることなく、がら空きの横腹へ敵の竹刀が心地よいほどの音を会場に響かせた。


――「一本!」


 会場が歓声に包まれる中、その後の記憶はほぼなかった。気合の抜けた3位決定戦では惨敗だった。消えてなくなりたいと、それだけが彼の胸を満たしていた。中学三年生最後の試合を、思い出を、黒一色に染め上げた気分だった。


(異世界……。そんな都合のいい空想の世界があるなら、今すぐにでも飛んでいきたい。あれは確か、不慮の事故で死んでしまったりすると――)


 そんな都合のいい話がある訳はない。深いため息と共に一二三がそう思った時、不意打ちにあった様な激痛が彼の左わき腹を襲った。敵の主将に思いきりはじかれた、まさにその場所だった。何かが猛スピードで走り去った気配もあった。


(ぐっ……!)


 痛みの意味を知る前に、彼は、陽の暮れる夕焼け空と、芝生の緑と、それぞれを景色に映し出しながら河原の土手を転げ落ちた。痛みは錯覚などではなく、まさに本物の刃物で深くえぐられたかのようなリアルさがあった。転げ落ちた先の河辺で、ゆっくりとその場所に触れると、生温いものが溢れてくるのを感じた。

 一二三は消えそうな意識の中で手のひらを空にかざす。そこには、夕焼け空に負けないほど赤々と染められた指先が見えた。そこで、意識が飛んだ――。

本編スタートです。

すぐに2章も上げます。

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