狙うは一点――“本当の顔”
藤堂は砂浜に片膝をつき、静かに地面へ手を当てた。
直後――
ギィィィン……!
空気が震え、青白く輝く魔法陣が彼の周囲に広がる。中心から、高圧の水柱が噴き上がった。
「ウォーターバスター」
それはただの水ではない。
奔流は瞬く間に姿を変え、龍の形を象る。
水龍は咆哮とともに宙を駆け、黒瀬へ迫る触手に襲いかかる。
鋭い牙が絡みついた触手に食らいつき、そのまま引き裂いた。
黒瀬は宙を翻り、砂浜へと着地。片膝をつきながら息をつく。
「助かった、爽一郎」
「こっちこそ。無茶すんなよ」
ふたりの目が、再び海へと向けられる。
――ちぎられた触手が、一瞬で再生していた。
「……なかなかやるじゃん」
藤堂が口角を上げながら、今度は片手を横に払う。
複数の小型魔法陣が浮かび上がる。
再び放たれる、ウォーターバスター。
今度は二体の水龍が、海面を裂いて侵略者へと突進。
侵略者も即座に反応する。
無数の触手を弾丸のように打ち出し、水龍を迎え撃った。
バシュッ!――ドォン!!
水と触手が空中で衝突し、盛大な水飛沫が夜空を切り裂く。
「それ、囮だよ」
藤堂がつぶやいたその瞬間。
海中から、三体目の水龍が現れる。
音もなく、侵略者の足元から真上へと突き上げた!
ドン――!
侵略者の巨体が、衝撃に浮かされて宙へ舞い上がる。
「今だ、陽翔!!」
藤堂の声が響くと同時に、黒瀬はすでに構えていた。
マグナムの銃口が、空中の侵略者を正確に捉えている。
狙うは――
先ほど弾かれた硬い頭部ではない。
その下、わずかに露出した“本当の顔”。
黒瀬は呼吸を止め、世界を切り離す。
集中、照準、指先、炎。
パンッ! パンパンッ!
マグナムから解き放たれた弾丸が一直線に飛ぶ。
灼熱の火を纏ったそれは、侵略者の顔面に突き刺さり――
ゴオオオオッ!
爆ぜた火炎が一瞬で全身を包み込む。
――侵略者は、苦悶の声もあげぬまま、
砂のように崩れ、風に散った。