屋上から始まる絶望
(白昼堂々と侵略者が動き出すとは……)
屋上に立つ藤堂は、わずかに感じる気配を探りながら思考を巡らせる。
校内で確認できる反応はいずれも小さく、クラスCと見て間違いない。
ならば黒瀬たちで対処できる――そう判断した。
ここ屋上は、校内でも最も高所に位置し、視界が開けている。
グラウンド、正門、中庭、体育館……死角はあるものの、全体を見渡せるのは大きな利点だ。
だが、その時だった。
吹くはずのない風が、校舎全体を緩やかに撫でた。
その風は瞬く間に力を増し、グラウンド上空に巨大な竜巻を生み出した。
それは校舎と同じ高さにまで達し、あたりに唸るような音が響き渡る。
「……何が起こってる?」
藤堂と久我はその場に立ち尽くした。
やがて、竜巻は突然消えた。
残されたのは、一面の砂埃と、耳をつんざくような地響き――。
ズドン、ズドン。
まるで地そのものがうねるような振動が、屋上にまで伝わってくる。
グラウンドに目をやると、そこには――
無数の骸骨。
その数、数百体。
そして、その中心には、校舎ほどの高さを誇る**巨大な骸骨**が佇んでいた。
藤堂はスマートフォンを取り出し、即座にクラス判定を試みる。
だが、画面を確認する間もなく、彼は深く息を吐き、スマホを閉じた。
「クラスCが数百体。あの巨体は……クラス測定不能、か」
隣で久我が苦笑し、槍を肩に担ぐ。
「おいおい、フェアじゃねぇな」
藤堂が焦燥を隠せない様子に、久我は真顔で語る。
「お前は冷静で頼れる頭脳だ。けどな、全部一人で抱え込むな。俺たちをもっと信じろ」
久我の手に握られた槍が、パチパチと小さな雷を帯びて輝く。
彼の声が、ふだんの軽口とは違う、低く鋭いトーンに変わる。
「俺たちは、ガキの頃からこの世界を守ってきた。
未知だろうがイレギュラーだろうが――**構いやしねぇ**」
藤堂の肩の力がふっと抜ける。そして、すぐに臨戦態勢をとる。
もう、策を練る時間はない。
ここからは、力のぶつかり合いだ。




