2回目のリセット ― 愛を選ぶ
ユウトは、美術の道を諦め、地元の小さな広告会社に就職した。
安定した収入。穏やかな日常。
それは、恋人・マユとの未来を第一に考えた選択だった。
やがて二人は結婚し、かわいい男の子にも恵まれた。
弟のリュウとも良好な関係を築き、家族ぐるみの付き合いが続いていた。
キャンバスから遠ざかっても、ユウトは後悔しなかった。
心から笑い合える日々。誰かと生きることの温もり。
それこそが、自分が本当に求めていた“幸せ”だと信じていた。
だが、その静かな幸福は、ある日突然崩れ去る。
マユが、激しい頭痛を訴えて倒れたのだ。
検査の結果は、脳腫瘍。しかも、進行が早く、手術も難しい部位にあるという。
ユウトは迷うことなく、会社を辞め、彼女のそばにいることを選んだ。
病室での日々は、祈りと看病の連続だった。
少しでも笑ってほしいと、昔の写真を見せたり、思い出話をしたり。
しかし、彼女の身体は静かに、けれど確実に蝕まれていった。
ある夜、医師に言われた。
「もう回復の見込みは…ほとんど、ありません」
その言葉が現実となったのは、それからまもなくのことだった。
冬の朝。白くけむる空の下。
マユは、ユウトの手をそっと握りしめ、何も言わずに静かに息を引き取った。
笑って過ごした日々は、すべて幻だったかのように、ユウトの中で崩れ去っていった。