1回目のリセット ― 夢を生きる
ある日、一本の電話がユウトの心臓を貫いた。
「お母さんが倒れた」
電話の向こう、リュウの声はかすかに震えていた。
すい臓がん――それは静かに進行し、見つかったときには、もう手の施しようがなかった。
ユウトは、すぐに故郷へと向かった。
だが、病院のベッドの中で見た母の姿は、記憶にある柔らかく元気な母ではなかった。
痩せ細った体。痛みをこらえるように閉じられた目。
「夢を追っていた」その数年の間に、彼女はこんなにも遠くへ行ってしまっていたのだ。
病室の外で、リュウが言った。
「……お前が東京で夢追ってる間、母さん一人で倒れてたんだぞ。
連絡もなかった。知らなかった、じゃ済まねぇだろ」
ユウトは、何も言えなかった。喉が張りつき、言葉が出てこなかった。
「俺は……夢を叶えたかっただけなんだ」
苦し紛れのように吐き出したその言葉に、リュウは吐き捨てるように返した。
「叶えた結果が、これかよ」
それ以降、リュウはユウトを避けるようになった。
母の葬儀の日も、彼は一言も言葉を発さなかった。
静かに焼香を済ませ、列から外れ、ただ遠くの空を見ていた。
ユウトは、ひとりになった。
その数日後、自身の個展の会場となる画廊の前に立っていたユウトは、
白いスーツの女の声を、再び耳にしたような気がした。
「2回目、使う?」
立ち込める夕暮れの光のなか、ユウトは顔を伏せ、呟いた。
「使う」
今度は、迷いなどなかった。
夢を叶えることの代償が、あまりにも大きすぎたことに、ようやく気づいたからだ。
再び、視界が真っ白に染まる。
次の人生こそ、“愛”を選びたいと――ユウトは強く願っていた。