表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/17

5回目の選択 ― 未来に託す

リュウは旅に出た。

それは、兄・ユウトが歩んだ人生の軌跡を辿る、静かで深い巡礼だった。


まず向かったのは、ユウトが最初に選んだ“夢”の人生。

若き日の情熱を燃やし、孤独と引き換えに成功を手にしたその世界に、リュウは兄の誇りと寂しさの両方を見た。


次に訪れたのは、“愛”を選んだ二度目の人生の痕跡。

マユという女性と築いた温かな家庭。そして、その幸福があまりに脆く崩れていった過程に、リュウは声もなく涙した。


三度目の人生では、兄は“家族”を救うために自分を捨てた。

診療放射線技師として、母の命を守ろうと全力を尽くし、それでも抗えなかった運命の重さを、リュウは深く胸に刻んだ。


四度目の人生。

ユウトは“正しさ”と“真実”にすべてを委ね、自分という存在すら手放した。

名も告げず、地に伏して生きることで、誰かの痛みに寄り添い、静かに世界を救おうとした姿は、リュウにとってあまりにも尊く、苦しかった。


リュウの旅は、ただ兄の足跡を辿るものではなかった。

それは、ユウトという“兄”の存在を超え、人がなぜ選び、なぜ生きるのかという“人生の本質”に触れるための旅だった。


何度やり直しても、正解にたどり着けなかった兄の苦悩。

それでも前を向き続けたその意志。

命を燃やし、最後にはすべてを託したその選択の先に——リュウは答えを見つけた。


兄が最後に願った未来。

それは、自分のためではなく、誰かのために人生を託し、つないでいく“循環”の未来だった。


リュウは、その想いを確かに受け取った。

過去をなぞるのではなく、自分の足で、新しい一歩を踏み出す。


「兄貴。俺、ちゃんと受け取ったよ。

もう、やり直しじゃない。これは——前に進む物語だ」


そう呟いたとき、空の色が、少しだけ変わったように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ