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4回目のリセット ― 正義と喪失
それから半年後、ユウトは静かにすべてを手放した。
口座に残っていた全財産を、かつて駅で偶然出会った若者にそっと譲り渡し、自らは名を伏せ、誰にも告げずに街を去った。
辿り着いたのは、山と川に囲まれた静かな田舎町。
そこに新しい名で住まいを構え、目立たぬ暮らしを始めた。
贅沢など一つもなかった。
古いアパートの一室に暮らし、毎日、地元の介護施設に通った。
老いた人々の話に耳を傾け、道で泣いている子どもに傘を差し出し、車に轢かれた猫を抱えて動物病院に駆け込んだ。
誰にも知られず、誰の記憶にも残らないかもしれない日々。
だが、その一つひとつの行為が、確かに誰かの心を温めていた。
その静かな営みのなかで、ユウトはようやく答えに辿り着いた。
「正しい人生なんて、きっとどこにもなかった。
けれど……自分の時間を、誰かのために捧げる。
そのことだけは、何度やり直しても変わらない“真実”だったんだ」
それは、彼が4度のやり直しの果てに見つけた、自分だけの救いだった。




