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覚醒めるは古の④


 激闘の最中、ふとユオルは、バーハルトの視線がかちあったような気がした。

 いやそんな馬鹿な。奴の視線はつねにあさっての方角を向いているのに? だがたしかに視線を感じたのだ。

 なんだ、と見る間に鬼鎧の目に当たる部分が、まるで瞬きをするようにぐるりと回転したかと思うと、でかい目玉がふたつ、こちらを見据えたではないか!



「──うォォォッ!??」


「どした!」


「目ェ、目が! 鎧に目がぁ······ッッッ!」


「! やっぱり!」



 超常の異変を感じたのはユオルだけではなかった。ロプスもまた、違和を感じとっていた。

 ただし、それは事態の好転をつげるもの──輝きがより強まる。耳鳴りのような鳴動までをつれて。


 槍が······宝槍が目を覚まそうとしている?



「ッッッ!」


足許を狙ってきた薙ぎを躱しステップを踏む。



 はじめはあの鎧に反応しただけかとも思った。あるいはこの戦獣への反応とも······。

 けど──違う······!



「あれ、倒せるかもなんだけどッ!」


「だったらとっととやってくれッッ!!」


「ならキミ、一体でいいからアイツらの動きとめてよッッ!!」



 唖然として、あやうく斧柄を避け損なうところだった。



「ウソだろ?! 無理だってッ!!」



あまりの突拍子もない発言に、言葉遣いへの思慮もふきとんでいる。


「大丈夫! 盾ならそこにあるじゃない!」


 そこだ?────ってまさか······!!



「──俺にアレを着れと!?!」



 鬼鎧!

 バーハルトの身体が大変なことになっているために機能していないが、鎧そのものはいまだピンピンしている。あの一撃を喰らってもビクともしないのだから、たしかに使えれば一瞬動きを封じるくらいは適うだろう。

 けれど──



「いや絶対に嫌だ! なんかカクカクし始めてんぞ!!」



 まるで手招くように、あらたな生贄を悦ぶかのように。こちらへとアピールしてくる鎧をなんとか視界の外へ追いだしながら、ユオルは悲鳴にちかい声をあげる。




「大丈夫! なにがあっても私が責任とる! 一生キミの面倒みるからッ!

 キミ、私の側付(もの)になりなよ!!」




 こんな場面でまさかの大胆告白!?

 ······いや、ではない。だが思いもかけぬ申し出なのに違いはない。

 いまだどれだけの身分なのか理解すら及ばないが、貴族であることだけは確定なこのチビっ子姫が、こんな俺に家臣になれと?

 そのためには妖しげな鎧に身を売って身体を張れと?

 いまや元盗賊、元警兵の烙印(レッテル)を貼られた俺が、貴族のお抱えになる······まともではあり得ない僥倖(ぎょうこう)といえるだろう。けど。



「クソッ! 今?!」


「そう今!! どうなの! なるの?! ならないのッ?!」



 なんという究極の選択。

 本来の部下ではない、彼女が率いてきたディルソム国軍は遠巻きに牽制してくれこそすれ、あまりの事態に積極的に前へ出れぬようだし、ここは自分たちだけで切り抜けるしかないのは理解しているが、しかし!


 ······着たら頭がヘンになるなんて言わないよな、化け物鎧!

 だが、だが! もし首尾よくこの怪物を討てれば、俺は晴れて貴族のお抱え家臣······ッ! くそッ! くそッッ!



「──わかったよ······なればいいんだろう、なれば!! やってやるさ······俺がアンタの護衛士だ!」



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