覚醒めるは古の③
ドスン、と石灰岩の肌色をしたその獣が一歩踏みだすと、こちらは一歩下がらざるを得ない。
なんだってそんなものが現代に。
「······再生したんだ。噂だけど、もともと戦獣を生みだしたのはウェラヌスギアって話だし」
ロプサーヌも槍を手に、油断なく構えを直す。
不死の鎧男と戦獣二体。どちらともに警戒せねばならぬ。奇妙な三すくみが形成されてしまっている。
先手をとったのはハーバルトだった。
向かう先はまっすぐにウェラヌス軍。そして、その前に立ちふさがる、彼よりも巨軀の人ならざる兵士だ。
「ヴォオォォォルルッッッ!!」
雄叫びをあげて戦獣名グラシェボルンも動く。ドシンドシンと地を揺らして間を詰めると、大きく振りかぶった戦斧を、まさしく力任せに薙ぎおろした。
「!」
さすがに今度こそはまともに受ければ折れてしまっただろう。だがバーハルトは死してなお身体に染み込んだ体捌きで巧みにその威力を躱し、二合三合と斬り結ぶ。
それでも質量差はいかんともしがたい。長くは続かず、ついに剣が折れ飛び、彼はアクスの腹で真正面から打ち据えられ、弾きとばされた。
「──えぇい仕方ない! 加勢するよ!!」
「ハァ?! 冗談だろ!」
倒れ込むバーハルトの前に躍りでたロプスにつられ、ユオルも壁となるべく走りだす。
重い一撃を喰らったバーハルトは、受け身もとれずついてしまった左腕の骨が砕けたか、だらりと垂れ下がっている。しかし呆れたことには、間近でみる自慢の鎧だけは亀裂はおろか凹みさえ見当たらない。死んでいるのだから痛みなど関係ないとばかり、なおも、立ちあがろうと藻掻いている。
「来るよッ!」
鋭い叫びに顔をあげた途端、とっさに飛び退いた空隙 を凄まじい圧風が吹き抜ける。
「うぉぉぉぉッッ?!!」
とり落とした鋤が、小枝さながら縦から真っ二つに断ち裂けた。血の気が凍る。こんなのどうしろって······?!
戦獣兵はおよそ地面に立つもので味方以外であれば誰でもいいらしい。転がったままのバーハルトには目もくれず、次はお前らだとふたりに打ってかかる。
「これっ、はっ、ちょっとっ、ひと筋縄ではいか、ないねッ······!!」
動きそのものはそれ程ではない。
だがその一撃の威力は、これに晒され続ける者の精神を如実に削りとっていく。ロプスは身軽さを活かしてこれをことごとく避ける。
隙をみてディルソム兵が矢を射かけるが、並の矢では歯も立たない。逆に的にされて逃げ惑うばかりだ。
「もう少し様子をみる! いまは手を出さないで!」




