遺志を継ぐ研究者の話
「まだ研究は好きか?」
「突然どうしたの先生?ほどほどかな。」
「お前は昔、研究が好きだとはっきり答えた。」
「たった3年前だよ。」
「そうだな。結局私はお前に業績のことしか教えなかった。」
「ポストのための研究でしょ。後悔しているの?」
「いいや。お前に私の技術を教えてよかったと思っている。お前の若さなら、いつか世界的権威になれるほどの高みにたどり着ける。」
「この世界で勝ち抜きたいなんて、一度も思ったことないよ。」
「いいか、これは、人殺しや仲間に頼らず、くそったれな世界を変える唯一の方法だ。上手くやれば、私たちみたいな奴らが生きやすい世界に変えられる。」
「ふーん。」
「まあ、実際に変わる頃には、既に私は死んでいるかもしれないが。」
「先生はそれで良いの?」
「将来、お前が世界を変えてくれるなら、今、喜んで協力しよう。」