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鍛冶屋の息子、MMORPGにはまる  作者: リーフランス
ファーストログイン、ゲーム初心者の鍛冶屋、ファンタジーゲームの世界に降り立つ
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絶望と妖精とシャベル

クエストを受けたのは良いが、自分はゲームを始めたばかりで、まだレベルすら上がってない、このゲームの知識すらレベル1と言える完全な初心者。


武器はシャベル…見た感じ軍用ぽいが、メイン武器としては極めて心許ない、防具は初期装備、見た目は質素な寝巻き、防御力なんて期待できない。



相手は自分よりデカくて知性もありそうな蜘蛛だ…気持ち悪くて直視したくないが、生きる為には相手をしっかりと見ないといけない。


シャベルで切れる程度の糸をはくが、それ以外の能力はわからないけど、人を引きずる力があるのは間違いない…。


巨大蜘蛛の手?足?は鋭く、攻撃をまともに喰らえば命は多分なくなるだろう。

今はこちらに背を向けて何かを食っているが、いつこちらを向くかは不明だ。


辺りは蜘蛛の巣が張り巡らされているが、地面が至るところに見えている為、気をつけて動けば足が蜘蛛の巣に絡め取られる事はないだろう。


そして妖精は衰弱していて、仮に繭を切り裂いて、蜘蛛の糸の拘束をなくしたとしても、自分で動けそうにない…。


戦闘に巻き込まれたら確実に命がないだろう…戦うならむしろ繭の中に居たほうが繭が盾になって、安心かもしれない…。


繭は地面とがっちりくっついていて、無理やり繭ごと引っこ抜いて繭ごと運ぶのは無理だろう…。


状況を把握して行動を考える、出来る行動は2つ、多少大雑把でも繭を切り裂いて、妖精を救助、全力逃走。


もう一つが後ろを向いている今、不意打ちをして蜘蛛を倒すことだ。


…はっきり言って戦闘は論外だ、ゲームである以上、不意打ちの一撃で倒せる可能性がゼロに近い。


それに装備も貧弱、敵の見た目、クエストの絶望という名前からして戦力差はそれこそ絶望的だろう。

ならばやること前者しかないだろう。


「…」


声を出すわけにはいかない、シャベルを横に振るい、地面から切り離す感じで繭を切ろうとする。


ぐにゅりと腕に絡まってた糸とは違い、あっさり切れる事はない…。


もっと力を込めるべきだとわかるが…全力でシャベルを振るったら、大きな音が出そうだし、助ける妖精すら傷つけてしまう可能性が高い…。


どうすれば…………いや、思いついた!


シャベルをザクッと繭の直ぐ側の地面に突き立てて、繭のすぐ下の地面を掘り返す。


掘り返した地面はボロボロ崩れて、妖精を捕らえる繭と地面との接着が一気に弱くなる、それどころか繭が、蜘蛛の糸が地面にくっついてた所からボロボロと崩れていく…。


その結果、まだ蜘蛛の巣が妖精の全身に絡まっているが、片手で運べるようになった!


心の中でガッツポーズをした瞬間「キシャァァァ!!!!!」


地面を掘った音でこちらの行動に気づいたのか蜘蛛がこちらを見て、威嚇のように2本の足を高らかに天に突き上げて、殺意を出している。


「ごめん、ちょっと激しいけど、こればかりは我慢して!」


そう叫んで、妖精の胴体を片手で掴み、走り出す。

初めて入ってきた森である以上、どこに向かうべきかもわからない、だけど立ち止まれば待つのは捕食だ…まずは蜘蛛から逃げ切らないといけない。


狭い木々を縫うように走り抜けるが、凄い勢いで迫ってきて、距離が開かない、木が障害物になっているから辛うじて拮抗しているが、だんだん足が重たくなってきた…。


体力には自身があるが、ゲームという慣れない環境と虫に襲われる恐怖で体力が削られていく。


妖精を掴んだ手を揺らさないように走っているのも、体力が削られる要因だろうが、意識が朦朧している妖精を激しい衝撃を与えるのは避けたい。


「ユリ…助けてくれ…」


この状況を打破する方法はただ一つ、高レベルの妹と合流することだ…。

もしくは他の人でも会えればいいのだが…なんで誰も見当たらないんだ!?


せめて、妖精を隠せれば良かったが、こんな森の中で衰弱している妖精を安心して隠せる所は無いだろう…。


「ただ…武器を…作る…つもりが…どうして…こうなった…………」


恐怖と走ってるせいで頭が回らない、シャベル1つで突破方法する方法が思いつかない…せめて…せめて、一息つける所が欲しい…。


というかおかしい、こんなに逃げているのに他の野生生物の存在が確認できない…後ろの蜘蛛のせいか!?


そんな思考をした瞬間、開けた所に出た…。

最悪な事態だ、逃げ道を塞ぐように底が見えない位に深い大きな穴が空いていた。


片手は妖精、もう片方がシャベルで塞がってる現状、飛び降りたら確実に妖精共々お陀仏だろう…穴に逃げ道を塞がれ、後ろを見ると追い詰めたぞと言わんばかりに足を止めた蜘蛛がいた…すぐに襲ってこないのは強者の余裕か、獲物を絶望させて食う為か…?


一か八か穴に飛び降りる事を覚悟をした瞬間、穴を超えた向こう側の森から救いの声が聞こえた。


「見つけた!お兄ちゃん!!」


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