夏イベントの入口、水着に着替えて
次の日の夏イベントの始まりの日、ユリのマイホームで自分はジャケットから、大きな胸ポケットがついた水色のパーカー型の水着に着替えていた。
「ジャケットが使えなくなるのがきついな」
ジャケットは水着と一緒に昨日作ったばかりではあるが、スリー街周辺のモンスター相手に防御性能は証明されている為、ジャケットから装甲の薄い水着に着替えるのは、少し心細さを感じる。
「あの……レンナさんに確認したいんですけど…似合ってますか?」
背後からフェルの声が聞こえる…着替えと言っても、光を纏って一瞬なので、見ないように背中を向ける必要はないのだが、まあ、自分の心の準備が必要というやつだ。
振り向いて見てみると、緑色のバンドゥ・ビキニを着たフェルが立っていた。
普段コートやローブなど体分厚い防具を着ていたからわからなかったが、かなり細身で胸も僅かな膨らみしか無い、それを際立たせるバンドゥ・ビキニ…ドキドキするし、凄い庇護欲が沸き立つが、これが儚い花というやつなのか?
そう言えば、フェルのお腹が丸見えだが、へそがない…人とは違う生まれ方をしていそうな妖精だからなのかな?というか腰細いな…。
どうしよう…心の奥底にあのギャンブルしてよかったと思う自分がいるのは悪い事なのだろうか…?
一歩間違えれば、あれを着るのが自分になっていたけど…。
「あ、あの!?レンナさん突然どうしたんですか!?」
え?と思った時には、自分の体は理性に反して、勝手にフェルを持ち上げて自分の胸元に抱き寄せた、体が勝手に動いてることに驚いていると、HPのバーの下に、見慣れぬハートマークのアイコンが浮かび上がっているのを見つけた………これあれだろ!?魅了されたー!?!?
『魅了
動けなくなったり、相手の思い通りになるようになってしまう、意思を強く持つと早く解除できるようになり、一回解除されると同じ相手には耐性を持つようになる』
自分の心の叫びと共に魅了の説明が出てくる、うわ、戦闘でなったら致命的にヤバそうな効果だ…そんなことより早く戻れ!
「あ、あの、レンナさんの手に包まれるのは嫌ではないんですが、この水着着た状態だと、は…恥ずかしいです…」
「フェル好きー」
勝手に動いて、フェルの頭を撫でる自分自身に早く戻れと念じていると、爆弾発言する自分!いや好きではあるけどなんか、その…勝手に言うな!やめろ馬鹿!?と思った瞬間に魅了が解除された!
やべぇ、ここからどうしろと!?
「え、その…」
「これからも一緒に冒険して欲しい!ほら、夏のイベントに行くから胸ポケットに入って欲しい!あと男性の前ではポケットから顔を出さないようにね!フェルの水着の力で他の男を魅了しちゃうからね」
「へ、あ、はい!」
そう言うとフェルは顔を赤くしつつ、パーカーの胸ポケットに入っていった…な、なんとかなった?
それともフェルがこっちが状態異常だったのに気付いた?
やばい、フェルの水着の魅了の効果想像以上に危険なのかもしれない、味方にも作用するなんて、もうデメリットじゃないか…一回かかったから、次は耐性出来てもう大丈夫だと思うけど…。
異性を魅了するなら、リーダーとかの男性プレイヤーに見せないように気をつけてば…。
そう思いつつ、ユリのマイホームにある魔法陣に立つと、期間限定夏のイベント開催中という文字と同時に専用ステージへいくボタンが出てくる。
それをポチりと押したら、説明文が出てくる。
『乱数値を入力してください、同じ乱数値を入れた人と同じにフィールドに召喚されます、乱数値を間違えると別のチャンネルに飛んで、パーティーの人達と合流出来ないなどのトラブルが起きますのでご注意ください…また違う乱数値の人とも出会う可能性があります』
なるほど、パーティで行くには乱数値を揃える必要があるのか、自分はソロで行くつもりだから関係ないか…。
乱数値を…これローマ字も使えるのか…まあ、ローマ字で鍛冶屋でいいか。
乱数値を入力したら視界が真っ白になり、体は夏イベント専用のステージに転送された。