水着作成!
「あ、水着は裁縫だけじゃなくて、細工、鍛冶、錬金術、料理など、殆どの生産のスキルで作れるから、お好きなスキルで頑張ってね」
「え?料理で水着…?」
「まあ言いたいことはわかるが、運営の方針で誰でも水着を手にしやすくした結果らしい…鍛冶はともかく、料理のスキルで水着作るシーンは、完全にギャグだったが」
細工、鍛冶、錬金術まではまあ、魔法パワーでなんとでも言い訳立ちそうだが、料理は無理があるだろ無理が…。
「まあ、それなら鍛冶で作るよ…一番慣れてるからな」
「そう言えば、中級の生産クラスになったのなら関連性の高いレシピなら2つ同時にセット出来るようになるから、水着の上下を一括で作れるようになるよ、その分多少難易度あがったりするけど、今のレンナさんなら問題ないはずだ」
それは便利だ、作業が効率化されて、2回の鍛冶で完成させれるのか。
「レンナさん、一緒に頑張りましょう!」
「ああ、個人的に未知数な作業だが頑張ろう」
鍛冶装置に近付いて、まずはシステム画面で自分が着る、水着の上下のレシピと材料で送られてきた水色の水晶をセットする。
要求されたMPは妖精鍛冶屋なった事で増えたMPで支払い、起動させる…すると赤交じりの白く熱された金属の塊が金床に運ばれてくる…。
「…水着作ってるんだよな?」
「リジェネレート、フェアリーウィッシュ、スリップガード、パワーアップ、エレメントブースト!良い水着を作りましょう!レンナさん!」
細かく考えたら負けなんだなと悟った自分は、ハンマーを振るい始めた…アースキーや刀や杖を作った時と同じ感じでいいのかな?
取り敢えず直感に頼りつつひたすらハンマーを振り始める。
鉄の塊がどんどん薄くなり、鉄板のようになっていく…これでいいのか?と不安がどんどん膨らんでいると、仕上げのボタンが出てきたので、ポチッと押すと薄っぺらい鉄板が大きなポケットがついたパーカーとハーフパンツの水着になった、金属要素は何一つ無い…。
「…ファンタジー超えてないかこれ?」
「ファンタジー超えてても、ゲームならそういう物だとなるのがゲームだよ…これ飲んでMP回復しときな、フェルさんの分作るんでしょ?」
リーダーさんの理解しにくい言葉を聞き、渡されたMP回復薬を感謝してから飲みつつ、鑑定眼で水着のステータスを確認する。
『妖精鍛冶屋の水着(上下)
属性:水
ステータス:防御+5
セット効果:イベントボーナス(夏)、水中呼吸、水中移動、HP持続回復(小)
レンナとフェルが共同作業で作った水色のパーカーと黒いハーフパンツ、水の力を纏っていて泳ぎを阻害しない。
胸ポケットが大きく作られている、上下装備すると夏の祝福が受けられる』
「う、ステータスが低い、失敗したか…いや水着に防御力を期待する方がおかしいのか?」
「あー、夏イベントの水着はイベントボーナスが本体な所あるからそんな物だよ、去年の運営が言うには、水着でステータスが高かったら、常時水着になる人が増える可能性があって、あんまり世界の見栄えが良くないから、意図的に装備性能が低くなるように出来てるんだよ…。
まあ、一部の変態が最前線級の水着作ったりするけど…そういうのはナンバークエストの報酬の力もあるから仮にそんな水着見かけても対抗心燃やしちゃ駄目だよ?」
「燃やさないよ!?」
リーダーさんの説明に突っ込む、そもそもフルダイブのゲームで、性能がいいから街中でもダンジョンでも常時水着着る…なんて人そうそう居ないよな…?
まあ、そんなことよりフェルの水着を作らないとな、さっきと同じ要領で材料とフェルの水着のレシピをセットしてMP入れて…スタートと…。
「しかし異性の仲間が着る水着を作るて、結構変態的じゃね?」
「ふぇぁ!?」
「ええ!?」
リーダーさんの言葉で変な声が出て、体が硬直してしまう、フェルも驚きの声を上げる。
だがスタートを押した鍛冶装置は材料を飲み込み、動き出す。
再び熱された金属の塊が運ばれるが、自分の頭は混乱していた、そ、それでもハンマーを振らなければ失敗してしまう、そんな思いでハンマーを振るう。
そう言えば、水着と言ってもそれは下着となんの違いがあるのだろうか?いや撥水性とか色々と違うのはわかるが……結局は皆がそう認識してるから水着と下着は別と思ってるだけなのでは?
ひょっとして、これて超えちゃいけないライン超えてないか?やだよ、これを知られた結果妹から変態と言われたくないんだが!?
やばい、へんな考えで集中出来ない…ハンマーがうまく振るえない…。
「いっあっつ!?」
下手なハンマーを振ったせいか、ハンマーを持ってる手が、熱された金属とがっつり接触してダメージを受ける。
「あーもうどうにでもなれ!」
思考を無理やり投げ捨てハンマーを振るう、とにかく失敗して、材料だけを消費する訳にはいかない、それだけを考えて作業をする。
仕上げボタンを押した瞬間、視界が真っ暗になって、ユリのマイホームにいた。
なんで死んだ?わからずに取り敢えず工房に戻るとフェルが誤ってきた。
「ごめんなさい、動揺して補助魔法するの忘れてしまいました!」
頭を下げて謝るフェル。
どうやら作業中に発生する熱やスキル:呪鍛冶の持続ダメージを相殺するリジェネレートがなかったり、熱々の金属にがっつり触れるなどの大きな作業ミスでダメージが発生したから、自分の最大値が低いHPが持たなかったようだ…。
ゲームでよかった…現実で熱々の金属にがっつり触れたら指なんてなくなってしまうわ…。
現実でこんな精神乱れた状態でハンマーを振るう予定は無いけど、気をつけよう…。
「いや、俺も動揺していたから…リーダーさん!変な事を言わないでくれ!」
「すまん…考えなしに変な事発言した…そうだった、作業する人の集中力を乱すのは良くなかった…錬金術だったら薬品が爆発して、こっちも大ダメージだったわ…」
謝るリーダーさん…金床の上を見ていると、フェルの水着は出来ていた。
『デンジャラスチャームフェアリー(上下)
属性:水
ステータス:防御−5
セット効果:イベントボーナス(夏)、水中呼吸、水中移動、魅了(大)
レンナがフェルの為に作った、緑色のバンドゥ・ビキニ、水の力を纏っていて泳ぎを阻害しない、またどんなに激しく動いても脱げる事はないので安心、上下装備すると夏の祝福が受けられる』
「防御マイナス…それに魅了(大)てなに…?」
『魅了(大)
異性を確率で魅了して、命令に従わせたり、動きを封じる効果などがある、場合によっては狙われてしまう場合がある』
自分の声に反応してシステム画面が教えてくれた。
これフェルには良くない効果では?防御落ちるはまあ、アースキーの肩代わりで守る予定なのはいいけど、魅了は狙われるからちょっと心配だ。
というかこれ名前が変えられないんだけど…あ、そう言えば低品質の杖作った時も名前を変えられなかったな…低品質だと名前変えられないシステムか…?しまったな…。
「こ、これが私の水着…明日これを着て海に行くんですね…」
「なんかその…すまん…」
「あ、謝る事はありませんよ、作ってくれてありがとうございます」
フェルは金床に近づき水着を手にすると水着が消える…NPCにもPCと同じく、形のないデータにして沢山持ち運べるインベントリがあるらしいので、そこに収納したんだろう。
「と、そろそろ俺はログアウトする、夏のイベントで一緒になったら協力しようなー」
そう言ってリーダーさんはログアウトしていった…なんか気まずさで逃げるように去った感じがしたのは気のせいかな?。




