フェルの冒険【チョコの完成と謎の妖精氷門】
「出来たー!」
料理して数分、ユリが完成の声をあげました。
「待ってください!早くないですか!?」
確かユリが作ろうとしていたのはフォンダンショコラのはずです、単純なこっちより出来る訳が…。
「まあ、道具の力だよ」
「なんか納得できません…」
こっちは溶かして型に入れて冷やしている段階なのに、ユリの方を見るとホール型のフォンダンショコラがありました。
いくらなんでも早すぎる料理に頭が少しクラクラしてしまいます。
「アイス」
初歩的な魔法でチョコを冷やし、チョコペンを使い、火光とアースキーを描く、そうしていると、ユリに話しかけられました。
「ごめんフェル、私のタイミングに合わせて妖精氷門を使って欲しいんだけど」
「はい!?」
今いる場所はユリのマイホーム、妖精氷門なんて使ったら大惨事です!勿論敵なんて居るわけ無いです!
「ど、どうしてですか!?」
「あーなにも聞かずにえーと、そこの的にお願い」
「え、ええ…わ、分かりました」
遠くにある私が魔法の練習時に使っている的を指差されて困惑してしまいますが…ユリからのお願いですし、無理な願いではないのでユリのお願いを承諾しました。
「それじゃあゴーといったらお願い!」
「はい!」
ネージュフラワーを取り出して構えます。
「………ゴー!」
「妖精氷門!」
杖を掲げて、身体と杖に込められた全ての魔力を使い、大きな氷の魔法陣を召喚………出来ませんでした。
「あれ?なんで?故障!?」
慌てて自分の体を確認します、体の魔力と杖の魔力は空っぽ、しかしユリのマイホームには氷の魔法陣は出て来てません…。
「大丈夫、さて料理を続けましょう」
「なにが大丈夫なんですか!?」
ユリを問い詰めますが、ユリは答えてくれませんでした…。
仕方なく、チョコペンを握り、再びチョコに絵を描くのを再開しました。
「出来た!」
時間をかけて火光とアースキーの絵を描いて、更に裏にハートマークを描いたチョコが完成しました、裏側は…何となく書いてしまいましたが、まあハートマークは見られずに食べられてもいいです、恥ずかしいですし。
「後は梱包だね、どの箱に入れる?」
ユリが箱を取り出して並べてくれました。
「えーと、それならこの箱にします」
蓋の中にお菓子で作ったような動物のフィギュアが入った箱を選びました。
「いいの?その箱はフェルの作ったチョコ入れるには少し大きいからカタカタしてチョコの形が悪くなるんじゃ?」
「箱の大きさに関しては、仕切りを入れるので大丈夫です、チョコの他にこれをあげたいのです!」
近くの戸棚を開けて、長い時間かけて作った物を取り出しました。
それは私の背中に生えた羽と…レンナさんが妖精状態になった時に背中から生える妖精の羽を模したアクセサリーです。
「それはまさか自作のアクセサリー?チャーム?あ、だから前に倉庫の素材使っていいかと聞いたんだね」
「はい!レンナさんの力を借りずに作ったので、特殊な力は宿ってませんが…」
「お兄ちゃんなら喜んでくれるよ、フェル大好きなお兄ちゃんだしね」
ユリからそんな太鼓判を押して貰えたので、箱の中に妖精の羽のチャームを収めて、箱を閉めて、ユリが用意してくれたキレイな紙で包んで、リボンでキレイに結びました。
「これで2人共バレンタインプレゼント完成!妹と大好きな妖精から手作りの贈り物もらえるお兄ちゃんは勝ち組だねー」
「勝ち組なんですか?」
「手作りチョコを作るのは手間がかかるから、バレンタインでチョコ貰えない男の子て多いよ」
こうして話していると、ユリはあ!と声を出しました。
「そうだ、せっかくだし、これに着替えてよ!」
そう言ってユリが取り出したのはエプロンでした。
「今更エプロンですか?」
「うん、でも似合うから着てほしいなー」
「別に良いですけど」
ユリに促されるまま、私は青いエプロンを身に着けました、それに合わせるようにユリも黒いフリフリのエプロンを身に着けました。
「うんうん、似合っているよフェル、きっとお兄ちゃんも見惚れるよ!」
「流石にエプロン着ただけでそんな事はないと思いますが…」
そんな会話をしていたら、レンナさんが帰ってきました。
後はレンナさんが知る通りですね。
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