フェルの冒険【アイドルに誘われて】
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私はユリのマイホームに住んでいます。
街に出かける際は安全の都合上、レンナさんやユリと一緒じゃないといけないというデメリットはありますが、人間サイズの家なので快適です。
1人でいる時は魔法の特訓をしたり、本を読んでいたりしています、本はユリが沢山用意してくれたので、読む本には困りません。
そんなある日ユリさんがやってきました。
ユリは金髪で人間の中では背が高く、女性的特徴も大きく出ている女性です。
「フェル!チョコを作りに出かけるわよ!」
「チョコ?」
思わず頭を傾げました、チョコはユリさんの倉庫の中に結構な数があります、作るにしてもわざわざ買いに出かける必要はないはずです。
「フェルはバレンタインて知っているかしら?」
「…なんですか?それ?」
「あー妖精の文化にはないのね、ひとまず女性が大切な人に愛を込めたチョコを渡す文化の事よ逆に男性が女性にプレゼントするのがホワイトデーね」
「あ、愛を込めたチョコですか…」
「私はレンナにあげる予定よ」
ユリさんの言葉にどきりとしてしまいました。
「え、待ってください!レンナさんとユリは血の繋がった兄妹ですよね!?」
「あーフェル?愛は愛でも家族愛だからね、別に愛ならどんな形でもいいのよ」
「そ、そうでしたか…」
「ともかくそう言ったチョコは特別で新鮮なチョコを使う物だから一緒に取りに行くわよ!」
そう言って、私に向かって手を差し出しました。
差し出されるままユリの手の上に乗ると私はユリの胸の谷間の所に収納されました…レンナさんと違ってちょっと居心地が悪いです。
「それじゃあまずは他のメンバーに合流!」
ユリがすぐ近くの魔法陣の上に乗るとあっという間に街中にワープ…すること無く見知らぬ所にワープした。
辺りを見渡すと柔らかそうでマシュマロのように白い丘のような物があったり、フルーツが流れる川が目にはいった。
「な、なんですか!ここは!?」
「ここはバレンタインフィールドだよ、女の子しか入れない特殊な世界だよ」
「あ、きたきた、てフェルを連れてきたの?」
声のする方向を向くと、そこには弓矢を背負ったウランさんがいた。
身軽そうな装いをしていて狩りに行くようにも見えた。
「うん、フェルもバレンタインのプレゼントを作りたいと思ってね」
「まあいいけど、フェルを大怪我させて、兄と喧嘩しないようにね?」
「大怪我なんてさせないわよ、確かにここに居る3人共後衛だけど、私は擬似的に前衛出来るし、私達のレベルならハードな所に行かなければ問題ないよ!」
ウランさんの言葉にそう言い返すユリさん。
「まあ、それもそうね、最悪に帰還の巻物使えばいいし、問題ないね、それでどこから行くの?」
「まずはチョコ!なにはともあれ基本のチョコがないと始まらないでしょ!カカオの川に行こう!」
「えーと、ユリ、カカオて植物になるものじゃ…?」
「このフィールドでは川に流れるのよ!」
「ええ!?」
ユリの発言に混乱しますが、今の私はユリに体を預けている身、混乱のまま移動が開始されました。
「ああ、やっぱりNPC…フェルでも変に感じるのね…ちょっと安心したわ」
ウランさんがそんな事を言いながらユリについていきます。
「あはは、イベントフィールドなんて細かいこだわりなんて気にしたら負けだよ!」
「細かいという範疇ではないと思いますよ!?」
そう言いながら駆け抜けるユリの服にしがみつきつつも、辺りを見渡すとグミのような木、頭にぶどうをつけた猿など非現実的な光景が視界いっぱいに広がっていました。
「……えぇ…」
私は理解しきれない光景に考えるのを止めてひとまずユリが移動し終えるまでじっとすることにしました。