魅了、戸惑い
やばいやばい!頭の中で警告が鳴り響く、このままだと確実にやばい!
辺りは全員リオア…ニセリオアに魅了されている、戦闘能力のないNPCだけならともかく、他のプレイヤーどころか、ナナサカさんに匹敵する強さを持つリーダーさんまでもが魅了されていたら下手な行動は出来ない!
というかいつの間に自分はここに来てしまったんだ!?もしかしてチケットを手放した時にか!?いや、それだとリーダーさんがここに居て、あっさり魅了されているのが理解出来ない!まさかリーダーさんも偶然ここに来た感じ!?
でも自分もリーダーさんもリオアからチケットを直接貰える立場だよな!?じゃあチケットを貰った時のリオアが偽物!?いや、あり得ない!ユリのマイホームは本物以外に入れないはずだ!
「れ、レンナさん…何があったんですか?問題ないならそろそろ手を離してほしいです」
「す、すまん…痛かったか?」
「…最初だけ……最初だけでレンナさんの様子からして暫く我慢したほうがいいかなと思って我慢してました」
混乱する中、フェルの抗議に、フェルの耳と目をアイアンクローみたいに塞いでいた手を外す。
フェルの声でパニクっていた頭が落ち着いてきた。
ひとまずこの状況から脱出しよう、現状ニセリオアを倒すのは無謀にも程がある、この会場にいるほぼ全て&リーダーさんが敵にまわるんだ、リーダーさん単体でも極めて無理な話なのに大量の人も敵にまわったら話にならない。
「フェル、簡単に説明すると、あそこにリオアは居るけど…妹のユリは別のホールにいる」
「!?」
フェルの顔が驚愕に変わる、下手にあそこに居るリオアは偽物と言って、魅了された人に聞かれて、変なアクションを起こされないように言葉を選んだが気付いてくれたみたいだ。
「ど、どうするんですか…?」
「ひとまず離脱する…」
そう言いつつも、ライブからの途中退出てどうするんだ?
ひとまず妹に連絡をする、リオアの偽物がHホールに現れたと…。
あれ?でもリオアてニセリオアと同じようにライブ途中だよな?そんな状態だとメッセージ飛ばしても気付けないんじゃ…。
と、ともかく脱出しよう!
メニュー画面を呼び出して、どうにか出れないかとポチポチしているとライブから退出するかどうかの確認画面が出てくる、よし!今すぐ脱出しようとしていたら声が聞こえる…。
「さあさあ!オープニングトークもここまでにして、盛り上がっていくよ!皆ライブをしっかり楽しんで行ってね!一曲目!」
わああああああ!と歓声を受けながらも、ニセリオアが歌い始めた。
その歌声は間違いなくリオアのはずだが、偽物と認識していると歪に聞こえてくる。
「れ、レンナさん動かないんですか?」
その歌声を聴いていたらフェルに離脱する事を促された、とと…どうやらいつの間にか聴き込んでしまったみたいだ…良くない、このままだと自分も魅了されてしまいそうだ。
そこでふと思い出す、1度フェルの水着で魅了状態になったけど、その時は意思を強く持つと早く魅了状態から回復するとあったが、他のプレイヤーはまだ魅了から回復しないのか?それともライブを目的来ているし、ニセリオアもライブを楽しんでと言っていたし、魅了されても自分がフェルの水着を見て魅了状態になった時と違い、目的が一致しているから魅了状態でも違和感がないのか?
て、そんなこと考えている場合じゃない!
急いでライブからの退室するボタンを押そうとすると、パキリという謎の音が響く…その音で指の動きが止まり、ライブ会場から退室しそこねる。
「何この音?」
「え?何か聞こえました?」
リオアの歌声が響く以上、小さな音なんて掻き消えてしまいそうだが…。
辺りを見渡しても歌声に熱狂している人しかみあたらない。
パキリパキリと再び何かがヒビ割れていく音が聞こえる。
「私にも聞こえました…なんの音でしょうか?」
「これ下手に退出しないほうがいいのか…?それとも急いで退出した方がいいのか?」
迷いながら辺りを見渡していると…ついに見つけた、音の発生源を…そこには壁に亀裂があった…。
うう、状況が目まぐるしく変化しているな!