ライブ当日と違和感
妹からライブチケットを貰った次の日、親の手伝いでファンタジーフリーダムをやる余裕が無く、その次の日、リオアのライブの日がやってきた。
「えーとスリー街の多目的ホールは…」
前に来たのが結構前な為、ぼんやりとしか覚えてないので、チケットを手にしつつ、システム画面に表示されたマップ確認しながら歩いていると、人の話し声が聞こえた。
「なあ、この前のリオアのライブ良かったな」
「ああ、シークレットライブ最高だったな…シークレットだから映像記録を残せないのが残念だ」
思わず足を止める、どうやらリオアの話みたいだ。
あれ?でも身なり的にNPCだよな?武装してないし…NPCもライブを見たり…するか、フェルもそうだし…でもNPCはどうやってチケット買っているんだろうか?
「今日もあるらしいぜシークレットライブ」
「昨日もあったのにまたあるのか、凄いな、流石に昨日見るだけで」
リオア昨日もライブしていたのか…そう言えば昨日、妹は親の手伝いはしてなくて姿を見せなかったが、昨日はライブの為だったのか。
「え…昨日?」
「うん?どうかしたかフェル?」
「………いえ、気の所為だと思います」
「うん?」
フェルは何かしら違和感を感じたらしいが、気の所為らしい。
深く聞いたほうがいいかな?と思っていると、ガッと足下を躓いた。
「うひゃ!?」
「きゃ!?」
条件反射と言わんばかりに無意識に体を捻り、肩から背中といった感じに地面に転げて、フェルを庇う。
極僅かにHPゲージが削れる、今のコケ方を現実でやったら肩が血だらけになりそうだ。
「いてて…大丈夫かフェル?」
「こっちは大丈夫です、それよりもレンナさん…チケットチケット」
小声のフェルに言われて気付いた、さっきまで持っていたチケットを手放している事に。
「ヤバ!?何処だ何処だ!?」
リオアの知名度がどのくらいかは知らないが人気なのは間違いない、悪いやつに拾われたらそのまま盗まれてもおかしくない。
「あのー、チケット落としましたよ」
慌てていると、1人の高校生位の背丈の女性がチケットを拾っていたのか、こちらに渡してくれる。
チケットを渡してくれるのはいいが、彼女の着ている服にはリオアがプリントされていた。
「あ、ああ、ありがとうございます!」
戸惑いながらもすぐに起き上がり、女性からチケットを受け取り、一先ず破損してないか確認する。
『リオアシークレットライブ、席ナンバーHホール10106666、開催場所スリー街、多目的ホール』
「どういたしまして、貴方はリオア様のファンなのですか?」
「…うん?、あー…ファンというか…まあ、布教としてチケットを貰った感じだな」
微かな違和感を感じたが、それはすぐに消え去った。
リオア様か…とてもじゃないが、本人にとは言えないな。
「とても熱心なファンがいるんですね!素晴らしいです!」
まるで自分自身の如く喜ぶ女性…なんだこの人?リオアのファンなのは服装で分かるが…。
「えーと、貴方は?」
「あ!申し遅れました!私はミラトレットと言います」
「えーと、レンナだ、よろしく頼む」
お互いに自己紹介をする、フェルは胸ポケットに隠れている。
まあ、こんな街中で挨拶したら、妖精がいると騒ぎになるからな…。
「えーと、貴女もリオアのファンなのか?」
「ええ、勿論!色んなライブを制覇しました!昨日のシークレットライブも見ましたし!今日のシークレットライブも見に行くの!」
うお…自分の妹の熱心なファンと会話するて変な気分だな、というかシークレットライブしすぎじゃないか我が妹よ、やり過ぎはシークレットと言わなくないか?
それにしてもミラトレットの早口に圧倒されるわ。
「そ、そうなんですね…」
「とと、私はグッズを買いにそろそろ行かないと!良きアイドルの追いかけ生活を!」
ミラトレットは竜巻のように去っていった…あれって自分と同じプレイヤーだよな…?え?どっちだ?オプションで頭上の名前消しているとプレイヤーとNPCの違いを見分ける方法が立ち振舞や名前、服装で見分けるしかないが、今のミラトレットはどっちかわからない。
まあ、例えプレイヤーでもNPCでも立ち振舞は変える事は無いので、深く気にすることはないか…。
こうしてチケットを手に自分はスリー街の多目的ホールに向かうのだった。
この後、自分は微かに感じて見逃した違和感のデメリットを払うことになるとは思っていなかった。