迷路森と看板と花蝶の芋虫
リーダーさんから貰ったマップを頼りに迷路森にたどり着く。
「なんだこれ、看板が沢山ある…」
森の入口には大量の看板が立っていた。
一つ見てみると他のPLが残したメッセージのようだ。
『この先人の悪意があるぞ』
他のも確認する。
『ボスに辿り着くには木の目印を見失わないようにしてください』
『高い崖にはジャンプが有効だぞ』
『俺はやったぞ!だからお前も頑張れ』
『花の糸高額で買い取るので、売りたい方はこちらに連絡ください、もうあれと戦いたくないよ…』
『最初の分かれ道は右』
『最初の分かれ道は左前』
『糸20個集めるの頑張れ鍛冶屋のお兄ちゃん☆』
『ここはボケるところではない真っ直ぐ進め』
「なにこれ…」
どうでもいいことだったり他の看板と矛盾してたりとめちゃくちゃだ…というかユリと思しき文字があるんだが…ユリかこれ?
「この鍛冶屋のお兄ちゃんてレンナさんでは…?」
「まあ、リーダーさんから話を聞いたユリが残したんだろう…多分」
フェルもユリが書いたと思われるメッセージに注目する…。
「まあ、ユリぽい応援メッセージもあるし頑張るか…」
そういって迷路森に足を踏み入れる。
木々が視界を遮って見通しはかなり悪い、不意打ちが怖いな。
「あ、早速前方になにかが居ます!」
フェルの声で前方を注意してみると、30cmから60cm位の大きさをした、赤い芋虫を複数見つけた…リーダーさんから教えて貰った情報と照らし合わせて確信する、あれが花蝶の芋虫か…。
うえ、大きくて気持ち悪い…木々が自分達を隠してくれるおかげでまだ見つかってない。
「あれが花蝶の芋虫か…攻撃は噛みつきと糸吐きと火を吐く…鈍いけど、数が多いので気を付けろか…本当酷な提案だな…」
武器であるアースキーを握りしめて戦う決意を固める。
「フェル、危なそうだったら、補助魔法かけてくれ」
「分かりました…無理しないでくださいね?」
フェルの声を聞きつつ、木々から飛び出し、アースキーの先端で叩き潰すように振り下ろし、花蝶の芋虫の一匹を撃破する。
自分達の存在に気付いた、他の花蝶の芋虫が一斉にこちらを見る、一部の芋虫が火を吐いてくる!
「くそ!気持ち悪い口しやがって!」
火の玉を回避して、もう一匹を潰す、弱いが数が多い!
びしゃりと糸が腕に付く…ダメージ共に敏捷減少のアイコンがHPの下に現れた。
「スピードアップ!リジェネレート!」
フェルの声が響くと同時に、敏捷減少のアイコンが消えて、HPが回復し始めた。
「ナイスだ!フェル!」
フェルに感謝を伝えて、再び花蝶の芋虫を潰していく…。
「レンナさん上です!」
「え?」
上を見ると顔面にぬるっとした感触が広がり、視界が赤いなにか…で塞がれてる……いや、なにかはわかるが理解したくない、理解したゃだめだはえらーやだカエリ、!?
「うわゃああぁぁあぁぁあ!!!??!?!?」
気持ち悪さに取り乱しつつ、本能で腕を使い、頭に乗った花蝶の芋虫を振り払い、それを足で潰す、嫌な感触が足に伝わる…全身な鳥肌が立つ中、数回呼吸をして冷静を取り戻す。
「フェル……見苦しい所を見せた…」
「いえ、急所である顔にモンスターに乗られたら、びっくりするのも仕方ないですよ…」
自分の精神というゲームとは別のHPが尽きる前に、早く糸を20個集まってくれ…そんな事を願いつつ、芋虫との戦いに身を投じた。