歌の神様ミュルズ
プラティアに案内されて神社の中に入ると、そこには大人の女性の女神像が祀られていた、神刀と藁の的だけで神々しさが皆無なシンプルな刀神の神社とは違って神々しさを感じる。
これから会うとちょっとドキドキしてくる、というか神は神でも女神様なんだな。
芸能関連の女神ならきっと美人さんなんだろうな。
「お兄ちゃん、それは全盛期の姿で今は子どもの姿になっているから期待しちゃ駄目だよ…あー…でもお兄ちゃん的には胸の小さい女の子の方が好み?」
「兄になんつう返答に困る質問しているんだ…フェルもそんなに興味を示すな…」
リオアの言葉にそんな返答をする、フェルは妖精特有の小さな自分自身の体とこっちの顔を交互にみている。
「…お願いだから神様の前で変な会話はしないでね」
プラティアにそんな事を言われてしまった。
気恥ずかしさにコホンとわざと咳込み、話題を出す。
「プラティアは神の代理人と言っていたけど、種族的には天使なのか?」
「いや、僕は天使ではなく神でもないわ…うーん、人間の言葉で表現するなら…マネージャーかしら?」
「いや、マネージャーは職業で種族名ではないぞ?」
「……種族名とか考えた事ないからわからないわ、少なくとも天使の輪っかと羽はないから天使ではないわ、それよりもワープするわよ」
プラティアは指を鳴らすと自分の視界は真っ白に染まる、その真っ白から元に戻ると目の前には現代的なライブスタジオが広がっていた。
「うーん、世界観ぶち壊し…」
「すごい独特な所ですね」
現代的な楽器が飾られているのを見てちょっと呆れる自分、新鮮な光景を見るように辺りを見渡すフェル。
ライブスタジオの端っこにはデスクがあり、そこには紙の束が積み重なっている、そのデスクに隠れるようにこちらを覗き込む眼があった。
隠れているように見えるが、頭とピンクの髪が全く隠せていない。
「えーと、あのデスクにいる女の子が歌の神様?」
「ええ、あの方こそ歌の女神様…ミュルズ様よ、人見知りだし…貴方達は神殺しの刀神の信者だから必要以上に近寄らないでね」
「あ、はい…」
プラティアに釘を差される、どうやら刀神の信仰のデメリットが発生したみたいだ…。
「………リオアオネェちゃんの隣りにいる人怖い……」
「リオア、歌の神様に姉と呼ばせているのか…?」
「い、いいでしょ別に!懐かれたんだから!ともかく、ミュルズおはよう、この子は私の妹だから安心して」
「…妹………?その人は男だよ?」
あ、神様だからか、こっちの性別は一瞬でわかるんだな。
「リオア、神様の目の前で嘘とか止めて欲しいわ…」
プラティアはリオアを睨む…まあ信仰している神に嘘言うのはいい気はしないよな。
「ご、ごめんなさい…所でその書類の束は何?」
「信者の初詣の祈りの内容を記した束…」
このままじゃやばいと思ったのか話題を変えると、ミュルズが乗ってきた。
「そう言えばリオアの願いを聴いてないから、教えて欲しい…叶えられる範囲ならここで叶えてあげる」
「私の願い…特に無いかな…今年もよろしくお願いします的な感じで初詣済ます予定だったから」
無欲だな、と思ったがこっちも刀神にお参りする時、藁の的を斬ることに集中しすぎて、何も祈ってないや…。
せめて強く成れますようにと祈っておけばよかった、まあナナサカさんにそんなこと行った日には決闘漬け(一応任意)にされる可能性はゼロじゃないから願わなくてよかったかも?
「ならば…神託をあげる」
「神託…未来予知の上位互換だけど…不吉な信託だと後が大変だけど…うーん、頂戴!」
リオアは少し悩んでから神託を受ける事にする。
神託てナナサカさんも使えるのかな?
そんなことを考えていると、ミュルズはデスクにから離れてリオアに近寄る。
そしてリオアの側で歌い始める、すると自分の体が固定されたかのように動かなくなる。
何事!?と思うが神秘的で神々しい歌声にあ、歌声の力かと理解する…それと同時に自分の力ではこの体を動かすのも不可能だと理解する、息だけは普通に出来るが指は1つも動かない。
「こ、これは…あ、圧倒されますね…」
フェルも何も出来ないようだ…。
歌いながら攻撃されたら確実に防げないだろう、そう思いながら見ているとリオアだけ乗るように歌い始める。
リオアの歌声も綺麗だが神の歌に邪魔していいのかな…?そう思っているとリオアとミュルズの周りに音符が現れて、浮かび上がったと思ったら辺りに散らばっていて消えていく、その後ピカッと光ったら、2人は歌を止めた…神託というのが終わったのか?