試練の終わりと帰宅
「あのー終わりましたか?」
しんみりとした空気が流れていた中、少女の声が聞こえる、声の方向を見たら少女の人形がいた。
やべぇ、正直アンモカがフェルのお爺ちゃんと知った辺りから守る対象として忘れていた。
というかなんかどっと疲れが湧き出ているが、急展開を味わいすぎたのか、妖精元素門のデメリットが発生したのかな?
「あ、ああ…隠れていたのか」
「イエス、なんだか邪魔をしてはだめな気がして、他の部屋に逃げていました」
「そうか、流れ弾が当たらなくてよかった」
「あ、後鍵束を見つけました!」
ジャラリと鍵束を渡してくる少女の人形…。
「何処にあったんだ?」
「休憩室に雑においてありました」
…この研究所セキュリティ管理甘くないか?見た感じはこの鍵束があれば全ての部屋の鍵を開けられそうだ。
「ありがとう、使わせてもらう」
「ワオ、トールサイズになりましたね」
トールサイズ?ひとまず人化をしてから鍵束を受け取った、確か鍵のかかった倉庫とかあるからそこから何かしらあるなら頂いて行こう、金欠だし、アンモカの頼みの駄賃としてな。
しかし人化したら体の辛さがなくなったんだが…多分妖精状態時のみなんだな…妖精元素門のデメリット…。
「レンナさん、今日はもう帰りませんか」
フェルが燃え尽きたようにふらふらと胸ポケットの中に入ってくる。
そしてすぐに眠りに…いや、この速度で意識を手放したということは気絶したのか…。
「ゆっくりお休み…」
「あの、ガールフェアリーは大丈夫なんですか?」
「戦闘疲れしているだけだよ、今のうちに倉庫にある物を持てるだけ貰って、この研究所から脱出しよう」
「イエス!やっと外にエスケープ出来るのですね!」
少女の人形は喜びの声をあげる…そろそろ名前をつけてあげたいが…妖精元素門の肉体的な疲労は人化で解除できたが、急展開による精神的な疲労は抜けてないので頭がまわない。
少女の人形に名付けすることはせず研究所から戦利品となる金品を貰い、脱出に成功するのだった。
「ワオ!ブルースカイ!始めてみました!」
ハイテンションな少女の人形、そう言えばアンモカは記憶があったが少女の人形に記憶はないのだろうか?
「なあ、君は人形になる前の記憶を持ってたりするか?えーと、足があった記憶とかある」
「いえ、レッグがあったメモリーはないですよ」
うーん、何かしら記憶の鍵となる物があれば思い出すのかな?それともアンモカの運が良くて残っていたとか?
駄目だ何もわからん…思考が停止した自分は別のこと考え始める。
「そう言えば君は行く所がないんだよな…」
「そうですね、ノーホームノーリーフです!」
………根無し草ということか?
うーん、このまま帰るのは、よくよく考えたら不味いよな、体の関節が球体関節だし、見ただけで人間じゃないのは丸わかりだしプレイヤーが見たら騒ぎそうだ…。
「フェアリーガーデンに住んでみないか?」
「住みます!研究所以外で住める所が欲しいです」
ふと頭の中で浮かんだ案を口にしたらあっさりと承諾する少女の人形。
そんな時にふと気づく、今はファイブの街付近だ、フェアリーガーデンはフォーの街付近にある魔本の図書館に向かう必要がある。
だがそこまで向かう為に行く必要があるダンジョンを攻略しに行くわけには行かないし、かといってこのまま街に行くわけにはいかない…。
どうするか悩みながらアイテム一覧を観ていたら閃いた。
「あ、そうだこれを使えばいけるな…すまんちょっと協力してほしいことがある」
「はい!何でしょうか?」
その後自分は研究所で手に入れた木箱が乗った台車を手に、街の入口まで行く。
「……珍しいな、台車を使う人久しぶりに見た」
「ああ、アイテム所持重量の上限を超えて物を持てるけど、微々たるものだし台車は悪路に弱めだから序盤の人位しか使わないと思うんだがな」
「いや、特化型でめっちゃ非力なのかもしれない、お前と違って防御極振りかもよ?」
他のプレイヤーとすれ違うがそんな会話が聞こえた…まあ、非力なのは否定出来ないな…。
ともかく変に思われることなくファイブの街からフォーの街に魔法陣で移動、そのままフェアリーガーデンに行くための魔本の図書館まで向かうことができた。