名もなき部屋の中に居たモノ
名も知らない少女の人形を同行者として加えた自分達は何も書かれていないドアの前にたどり着く。
「……あの、名前を聞いても良いでしょうか?私はフェル、こっちが私の相棒のレンナさんです」
「ネームレスです!」
そんな中フェルが自己紹介すると、少女の人形は元気に答えたが…。
「えーと、名前が無いということか…?」
「イエス!」
確認すると、元気よく答えられた、名前が無いことを元気よく答えるとかちょっとビックリだよ。
「そうですか…レンナさん、どうしましょうか?」
「まあ、名前は…ここを脱出してから考えよう、慌てて考えた所でいい名前はつけられないからな…」
「ネームエントリーいつでもお待ちしてます!」
ひとまず少女の人形の名前は保留にして、先程貰った鍵で何も書いてない部屋のドアの鍵を開ける、妖精の状態だとちょっと開けにくいな…。
ドアを開けて中の様子を確認する、部屋の中は明るくて広く、余計な物を省いた作りで、部屋の中心に人形を飾る複数のショーケースがあるだけだった…ちょっと異質に見える。
複数あるショーケースの内1つのショーケースにはフェルより一回り大きい、男性ぽく見えて、背中に黒い妖精の羽を生やしている妖精の人形が座って、眠るように目を閉じていた。
それ以外のショーケースは空っぽだった。
「なんだ…保管室なのか?えっと自分とフェルが中に入るから、貴女はドア入口で待機してほしい」
「了解しました、オーダー受理、待機します」
フェルの試練の内容的に確実戦いにくいなるだろうと思い、少女の人形を待機させて、アースキーと火光を握りしめて、恐る恐る中に入ると妖精人形の目が開いて、パカリとショーケースを開けて、自分達の前に飛んできた。
「…サロディア?」
妖精人形の開幕口にした言葉、全く心当たりの無い言葉で頭に?を浮かべていたら、後ろにいたフェルが口を開く。
「テレキネシス」
「え?フェル?」
次の瞬間、火光とアースキーがドアの外まで飛んでいく、勿論両方を強く握りしめた自分も引っ張られてしまう。
「え、ええ!?」
妖精の大きさで飛んでいた事と完全な不意打ちで、自分は全く抗えずに飛んで行く。
そんな中フェルが見えたが、手には妖精の羅針盤とネージュフラワーが握られていた。
「アイスウォールクリア」
「フェル!?フェル!?」
そして部屋の外に放り出されたと思ったら、ドアの目の前には透明な氷の壁が召喚されて、行く手を阻まれた!
どういう事!?フェルが急に独断で動くて相当な出来事だよな!?
「そのサロディアは貴方にとってどんな妖精だったんですか?」
「………わからない、思い出そうとしても思い出せない、だけど君はサロディアじゃないのか?見た瞬間そう、魂が反応した…」
「サロディア……それは私のお母さんです」
あ、サロディアてフェルのお母さんの名前をなのか、時間が経ちすぎて聞くに聞けなかったけど、初めて知った…。
……………いやまてよ、なんで妖精人形がフェルの母親の名前を知っているんだ!?
もしかしてあの妖精人形はフェルのお父さん!?いや、それだと遺跡の年月とか色々と年代で矛盾が生じるよな!?それになんでフェルの身内が人形になっているんだよ!?となるし…いや、それは手帳にあった妖精の王羽がフェルの身内の物で…人形に使われた結果魂が宿ったとかならあり得るのか?
こっちは完全に混乱している間に話は進む。
「その特徴的な黒い羽、お母さんから聞いたことがあります…その羽根を持つのは先代のリーダー的な立ち位置で、最強の魔剣士だったけど、ある日行方不明になった……アンモカ…お母さんのお父さん…つまり私にとってのおじいちゃん!」
フェルの言葉で頭が完全に思考停止する、いやまって、仮にフェルのおじいちゃんだとしても、この遺跡て少なく見積もっても100年以上前の物だろう、フェルのお母さんが100歳以上になってしまう…いや、妖精という種族ならあり得るか…?
いやこの世界ならNPCが過去にタイムスリップとか出来そうだからそういうパターンか?
いや、訳が分からないけど、そんな事考えている場合じゃない!
とりあえず目の前の妖精人形の名前はアンモカという名前らしい。
「フェル!仮に目の前にいるフェルのおじいちゃん、アンモカだとしても、自分を隔離する必要はないんじゃないかな!?」
「…ごめんなさいレンナさん、ここから先は出来れば私だけで頑張りたいです」
フェルの願いにどうすれば良いか悩んでしまう…そこで1つだけひらいめいた。
「……補助魔法をかけていいのと防具のファイナルターミナルが発動したら、無理矢理でも乱入していいならいいよ」
「…ありがとうございます、レンナさんそれでお願いします」
折衷案を提案すると飲んでくれた。
「……アンモカ…僅かに思い出してきた、昔そんな名前で呼ばれていた気がする…次元の狭間に飲まれて…そこから先は覚えてない、気が付けばこの体になって、記憶があやふやでどこに行けば良いか分からずにずっとここにいた…」
「……お母さん、悲しんでいましたよ」
フェルがそういうとアンモカは気まずそうな顔をした。
「そうか…悪い事したな…こんな体になった以上、もう会うことも難しいか…まさかこんなところでサロディアの娘…孫の姿を見ることになるとはな、それにその妖精の羅針盤は…もしかして自分を倒せと出てきているのか?自分も使って、師匠を打ち負かせと出て来たな…わかった、君の言うことが信じるなら…お爺ちゃんとして一肌脱ごう…マジックソード、マジックシールド」
アンモカの手に魔力出できた剣と盾が現れる。
「こい、サロディアの娘…孫よ」
「私の名前はフェルです!いざ勝負!アイスブレード!」
ネージュフラワーに氷の刃を展開したフェルはアンモカに突撃した!