足らずの人形
ひとまず人形の足を探すという目的が出来たのでひとまず次に行く所を考える。
「休憩室に行っても人形の足はなさそうだし、戦闘実験室かな…でも戦闘する羽目になりそうな予感がする…」
「レンナさん、一度他の階層を見るのはどうですか?もしかしたら何かあるかもしれません」
フェルの考えに同意して、他の階層も確認する、他の階層も地下3階と同じように通路にドアが複数ついており、なんだホテルようにも見えてきた。
地下1階
『駆動実験室A』
『事務所』
『資料室』
『社長室』
『倉庫(金属)』
『ロッカールーム』
地下2階
『駆動実験室B』
『倉庫(武器)』
『工房1(布)』
『工房2(金属)』
『魔術本保管室』
『』(名前が書いてない)
地下3階と同じように1つの階層に6つの部屋がある感じだ、地下2階に名前に書いてないドアがあって、ドアノブを回してみたが、開かなかった…。
因みに地下1、2階で他に開かなかった部屋は資料室、社長室、倉庫(武器)、魔術本保管室だった。
他の部屋は鍵が空いてるかどうか確認しただけで中は見ていない。
「これはひとまず駆動実験室から調べるか…」
「もしかして駆動実験室はさっきの人形みたいのがいるんですかね?」
「わからないけど、居てまた助けを求められたらどうするかな…」
そんな会話をしながらひとまず駆動実験室Aを調べる事にした。
ガチャリとドアを開けると駆動実験室Cと同じような手術室のような部屋があった…案の定中心地にベッドがあり、そこには人形が横たわっていた、さっきの人形と違い足はある…変わりに腕がない人形だった。
こっちの人形は少年みたいな顔をしているから多分男の人形なのだろう。
「………すみませーん、生きてますかー?」
人形に声をかけてみるが反応がない。
「レンナさん、あの人形の足をもらう感じですか?」
「まあ、生きて居ないならこの人形の足を貰うのもありだな」
そんな事を口にした瞬間、ガチャリと背後からドアが施錠されたかのような音がした。
今すぐに背後を確認したかったが、もし後ろを振り向いた時に人形に襲われたらやばいと思い、両手の武器を構える。
「君達、何者?」
人形から声が聞こえる、どうやら生きているみたいだ。
「………ただの鍛冶屋だ」
「…妖精です」
悩んで本当の事を言う、こいつとは仲良くなっていいのか?という気持ちが出て来ている…その気持を確かめるために数歩下がって、ドアの確認をする…。
ガチャガチャと確認するが、案の定施錠されていたこっちが内側だからドアの方を向けば施錠を操作することが出来るだろうが、今は振り向けない。
「ならこっちも自己紹介をしよう、こっちは腕のない人形だ、よろしく鍛冶屋に妖精」
名前は言わないのか…いや、こっちも言ってないんだから、お互い様かもしれないけど。
「なあ、なんでドア施錠したんだ?というかどうやって施錠したし」
「未知の存在が現れたら対話したくなるのは不思議なことではないだろう?ドアを操作したのは魔法だよ」
まあ、確かに人形からしたら自分達は未知の存在か…。
「対話て何が聞きたいんですか?」
「うーん、そう言われるとちょっと悩むね、ずっとここで寝ていたから」
「外に出ないのか?」
「出れないよ、人形は五体満足じゃなきゃ出ていけない決まりだからね、破ってしまったら入口で死んでしまうよ」
死んでしまうて、どんなふうにだろう?入口辺りにやばい存在は居なかったが…この遺跡内に居るのかな?
そして五体満足じゃないと出れない決まりか、てっきりさっきの人形は足がないからだと思っていたが…。
「じゃあ貴方は腕が欲しいんですか?」
「まあ、有れば嬉しいね、不完全から完全な人型になれるんだ、最高だよ」
フェルの質問にそう答える人形、うーんでもなんか口ぶりからしてここから出る気はなさそうな感じがする、というか諦めて達観している?
「…なあ、質問なんだが君以外に喋る人形は居るかい?」
「レンナさん?」
自分の質問に不思議そうに胸ポケットからこちらを見るフェル、人形はすぐに返答する。
「見たことないね、居たらずっとここで寝ずに済むんだけどね」
…この人形は駆動実験室Cは行ったことないのか?
「なあ、そろそろここから出たいんだがいいか?用事があるんでね」
「まあ、いいよ、話せて楽しかったし、後ろのドアのドアノブの上にある出っ張りを捻れば施錠は解除されるよ」
言われるがままにドアを操作するとあっさり退出することが出来た。
うーん、これってもしかしてどちらかの人形を犠牲にしろとかないよな…どちらかをパーツにして、どちらかを救えとか…?
嫌な予感を感じながら駆動実験室Bに向かうのだった。
単刀直入に言って、駆動実験室Bには…人形は居なかった…