変人病の回復
「う、嘘だろ、なんで中途半端にしか効かないんだ!?」
ペタンの母親のいる2階に向かうと、絶望の声をあげるペタンがいた。
母親の方を見ると、魚だった足が人の足に戻っている、数分前まで魚になっていたのに、いつズボンをはいたんだ?という疑問はあるがまあ、そこは突っ込んだら駄目だろう。
「ペタン、本をしっかり読みな、さっきの薬は1本につき1つの部位の所しか治らない、つまり後1本…いや、念を入れて2本作って飲ませれば病は完治するはずだ」
「あ!そ、そうだった!」
ペタンが赤面しながら立ち上がる、気が動転していて記憶から抜け落ちていたみたいだ。
「待っててすぐに完治する薬を持ってくるよ!」
「え、ええ…」
ペタンの気迫に少しびっくりしつつも返答するペタンの母親、ペタンはこちらに目もくれずに1階の錬金をしていた場所に向かった。
足速いな、とペタンの母親の完治がほぼ確定しているので、そんなの呑気な事を考えていたらペタンの母親に話しかけられた。
「…助かりました、貴方が助力してくれたお陰でペタンに活力が戻りました」
「こっちは特に何もしてないよ」
「嘘ですね…家の設備や材料、ペタンの実力では薬を作るのは…無理に等しいですからね」
そういうペタンの母親…そう断言できるということは…。
「もしかしてペタンが錬金していた所…貴女の作業場だったりするのか?」
「ええ、あそこは私の仕事場でペタンに錬金術を教えたのは私です…まあ、今はこの手なので錬金術は出来ませんが」
まだ治ってない鳥のようになった手を動かすペタンの母親…。
「私の夫は販売の才や管理の才はあっても、錬金術の才や目利きの才は無かったせいで…今はかなり空回りしているわ…全く普段は節約しているのに無駄遣いして、全部治ったら説教ね」
「まあ…うん…」
「お母さんー!もう2つ出来たから飲んでみて!!」
父親の文句?呆れた態度になんと反応すればいいのか分からず、言葉に詰まっていたらペタンが薬を2つ持って現れる。
「おお、失敗はしなかったか…」
「すっかり錬金術が上手くなったわね…いただくわ」
鳥の手をしているのからか、ペタンの手によって変人病治療薬を飲むペタンの母親、するとペタンの母親の腕に光ったようなエフェクトがまとわりついて、鳥の腕から人の腕に戻った。
見た目が完全に人間に戻って完治したようにみえる。
「念の為にもう1本飲んで、お母さん」
「ええ…後は自分で飲めるから飲まそうとしなくていいわよ」
もう1本変人病治療薬を飲むペタンの母親…先程と違って光るエフェクトは出てない辺り、完治したみたいだな。
「おめでとう、ペタン…治療完了だな」
「…………やったああああああ!!治ったぞ!!!」
両手を上げてぴょんぴょんと涙目だが笑顔で年相応に喜ぶペタン…。
「良かったですね」
フェルも嬉しげだ、そんな中ドタドタと階段を駆け上がる音が聞こえる。
「やったぞ!ついに………え?」
ドアをバタンと開けて入ってきたのはペタンの父親…だが母親が完治しているのを見て硬直している。
「へへ、どうだ、変な所で薬買うより作ったほうが正解だっただろ…うお!?」
ペタンの父親はドヤ顔するペタンを通り抜けて、母親に抱きつく。
「………治ってよかった……」
「悪かったね心配かけて…」
夫婦の絆にペタンはムーと少し不満そうだが…。
「まあ、これでお父さんが元に戻るならまあいいか…」
そう口にした一安心といったように見える。
するとペタンはこちらを見て頭を下げた。
「えっと…その…あーありがとう…君が色々と持ってきてくれなかったら…母さんを死なせていた…」
「いや、気にするな、こっちは錬金術の下準備をしただけで肝心の薬を作ったのはペタンの頑張りだろ?」
「君て本当にただのいい人だったんだね…悪魔とか怪しい存在と思っていてごめんなさい」
「あ、ああ…気にしてないから安心してくれ」
そう言うとペタンの母親は手をパンパンと叩いた。
「さて2人共…私の為に頑張ってくれたのは嬉しいけど…色々とやらかしたわね…座りなさい…」
「「え!?」」
ペタンとペタンの父親が声を上げるが…母親の威圧に正座する2人…。
「………あの、自分は帰った方がいいか?」
「ええ、ごめんなさいね、また来店した時に色々とサービスさせてもらうわ」
こうして自分は道具屋から退出するのだった。
ペタンとその父親がどうなるかは…まあ、薄々分かるが…そっとしておこう、親の怒りほど怖いものはない…。