薬師モドキの少年とキメラの血
「なあ、そのお母さんの病気てどんな物で、治す為の薬の作り方は知っているのか?」
「…お母さんは変人病という病になっていて…時間が経てば経つほど体が人外の者になっていく病気なんだ…治す薬は……キメラの血が必要なんだ」
キメラ…それがクエストをクリアするのに倒す必要がある敵か。
「そのキメラが何処にいるかはわかるか?」
「わからない…村の外に出たことないし……」
……村から出たことない子供に情報の全部を求めるのは酷か。
門番さんから話を聞けばわからないかな?
「まさか倒しに行くのか!?」
「そうだが?」
「キメラは魔法のエキスパートで狡猾な生きものだ!戦える大人が何人も集まって数人犠牲を出しながら戦ってなんとか倒せるやつだ!女のお前が勝てる相手じゃない!」
……あれ?女性と間違われている…今までNPCに性別間違われていること…いや、前もあったな…声は男のままなんだが…まあ、どうでもいいから放置するか。
「父さんだって…それがわかっているから闇商人からダメ元で血を買って…」
「別にこっちは大人が何人集まっても蹴散らしそうな人や神相手にたまに修行つけてもらっているし、そうそう負けるつもりはない、ともかくそのキメラを倒せばお前が薬を作れるのか?」
「わからない…作ったことないし…成功するかわからない…」
…まいったな、自分やフェルは調剤…いや、錬金術の心得はない、故に薬を作るのは少年の方が成功確率は高いだろうが…様子からしてなんか失敗しそうだな…。
キメラて何体もいるのかな?失敗するなら何度もキメラと戦う必要がありそうだな…。
「なあ、君は何処に住んでいるんだ?」
「あそこ…」
少年が指差した方向を見ると道具屋さんだった。
道具屋の少年だったのか…。
「わかった、キメラの血を手に入れたら道具屋に持ち込むよ」
「本当にキメラと戦いに行くの?」
「ああ、サクッとキメラの場所を調べて狩ってくるよ、少年は」
「し、死ぬなよ!?死なれると胸糞悪いからな!」
そう言って道具屋の少年と分かれる。
「レンナさん、性別に関して訂正しなくていいんですか?」
「いいよ、別にフェルと違って長い付き合いになる訳じゃないし」
フェルの疑問に答えながら村の入口に向かう…すると村に入った際に言葉を交わした門番さんがいたので、話しかけてキメラに関して質問してみる。
「キメラ?うーん…確かこの門からでてから、あっちの方向の森で見たという話しは聞いたことあるな、結構居るみたいだから行くなら気を付けてな」
大雑把だが情報がでた、森にキメラか…森は虫が出やすいからあんまり行きたくないが…そんなこと言ってたらクエストが失敗してしまう。
「ありがとう行ってみるよ」
「わかりました、それでは門を開けますね」
門番さんの行動で石造りの門が開く、その門を潜り外に出ると門はそそくさと閉まっていった。
「また入りたくなったら言ってくれ!」
「わかった!」
石壁の上に登った門番さんからそう声をかけられた。
「そう言えば結局時間が1日で何年も流れた謎は解けませんでしたね」
「そうだな…まあ、自分と同じような存在がなにかしたんだろう……リーダーさんやナナサカさんみたいな存在が時を加速させたとかありえるし」
別に自分だけが凄いという訳では無い、他のプレイヤーがなにか大事を起こしたとしても変ではない。
「リーダーさんやナナサカさんみたいな存在が沢山いたら怖いですけどね…人の数が多くなれば悪人な人も増えそうですし…悪人が強大な力を振るえば大変な事になりそうです」
「そうだな、チカワのような存在が多かったら手が付けられないわ…まあ、そういうの考えた所で仕方ない、ひとまず森に行こう」
フェルとそんな会話を交わしながら、自分達は門番さんに示された方向へ歩き始めるのだった。