歯車の交換
ウェルダンさんについていくと、先程見た石の歯車が浮かぶ噴水の前まで来た。
そこでウェルダンさんは先程作った銀鉄の歯車を掲げると、銀鉄の歯車はウェルダンさんの手から離れて噴水の頂上で輝いて、視界を塞がれたと思ったら視界が戻った時には石の歯車が消えて、銀鉄の歯車が噴水の上で回り始めた。
「……なにか変化起きた?」
辺りを見渡すと村人の服装が少し豪華になった気がする…?
「よし!報酬ゲット!」
そんな中、ウェルダンさんはガッツポーズをする、なにか報酬を受け取ったみたいだ。
「なるほど、鍛冶する時に必ずアンデット特攻の効果を付与できるアクセサリーか…なかなかいいね」
報酬を確認するウェルダンさん、そういうアクセサリーもあるのか…。
このイベントの流れがだいたいわかってきたな。
「レンナさんレンナさん、そろそろ行きませんか?」
「ああ、そうだな」
小声で言うフェルの声に頷く、自分達も自分達でクエストを受けたくなってきた。
ウェルダンさんと行動を共にすることも思い浮かんだが…。
鍛冶をしていたということは自分と同じ鍛冶屋である可能性が高い、クラスが同じ系列だとなんというか比べてしまいそうだからパーティーを組むのは止めておこう。
それにフェルの事も話さないといけなくなるしな…競争関係になりそうな相手にはちょっと明かしたくない。
「それじゃあウェルダンさん、自分は自分でクエストを受けに行くので…色々と教えてくれてありがとう」
「いえ、お安い御用です、また会えたら鍛冶に関して話しましょう」
ウェルダンさんと別れて、フェルと行動する。
「すみませーん、誰か困り事はないですかー?」
そう言ってみると、すみません…と男の子の声が聞こえた。
「すみません、薬買いませんか?」
「く、薬?」
声をする方向を見ると、小さな少年が薬を差し出してきた。
『オーバーロード薬(弱)
飲むと万能感に包まれて強くなる…が副作用があり、死んでも生き返られるプレイヤーであっても飲むべきではない麻薬、連続使用時永続ペナルティあり
少年が見様見真似で作った物』
鑑定眼が少年の持つ薬を見抜くが…なんだこれ、麻薬の時点で毒物じゃん!?鑑定眼なければやばかったな…。
でもこれってマッチ売りの少女的な依頼か?それにしてはやばいもの売ってるな…薬としか言ってないから嘘ではないが…。
「えーと、なんでそれを売っているんだ?」
「…えっと……お、お父さんが病気で……」
嘘だ、明らかに声が震えて視線を逸らしている…バレバレの嘘だ。
これはどう動くのが正解なんだ?悩んでから口を開く。
「……買おう」
「買うんですか!?」
フェルも鑑定眼で薬の内容を見抜いていたのか、自分の発言に驚く。
「え!?喋る虫!?」
「なあ、次彼女の事を虫といったら首折るよ?」
「ひ!?」
少年の頭を掴んで脅す、それは個人的に地雷なのでやめて欲しい。
「わ、わかった、もう言わないから殺さないで!」
「レンナさん、気持ちは嬉しいですけどちょっと大人げないです…」
フェルの好感度が少し落ちた気がするが…妖精を虫扱いは許せないので仕方ない…。
「それでなんでこんな危険な薬を売っているんだ?嘘は言うなよ?」
「………父さんが金遣い荒いんだ…俺が稼がないと…母さんの命が病気で…」
少年の言葉に反応するように目の前にシステム画面が現れる。
『クエスト
愚かな父親と薬師モドキの少年
成功条件
大病の薬を完成させる(エリクサー不可)
失敗条件
クエスト放棄、一定時間の経過
成功報酬
水銀の歯車のレシピ
失敗ペナルティ
なし』
どうやら読み通りクエストが発生した。
「というか親が病気なのは嘘じゃないのかよ…」
失敗条件的に時間が経ちすぎると少年の母親死んでしまいそうだな…というかなんでわざわざお父さんが病気て嘘を…?
「お母さん……レンナさん、力を貸しませんか…?」
「まあ、一応元からそのつもりだから問題ないぞ?」
フェルは多分だけどもしも自分のお母さんが病気になったらとか考えたのかな…うちの両親は自分と友奈が感染力の高い流行り病になって、看病して貰っていた時に一度も感染しなかったからな…あんまりそんなイメージは思い浮かばないや…。
ともかくもう少し詳しく少年の話を聞こう。