ハンマー音が知らせる縁
村を歩き回るが外を歩いてる村人に挨拶してもクエストは発生しなかった。
「うーん、なんも困り事がないみたいだな…良い事なんだけど」
「この街も明日になるとかなり時間が流れるのでしょうか?」
フェルの言葉にあーとなる、明日になればまた2年経過して状況が一変しててもおかしくはない…2年の月日があれば村が町に発展することも、滅びるのも十分にありえる話だ。
明日また来ようか、そう思った時にカーン!カーン!と聞き慣れた金属音が聞こえてきた。
「この音は…」
「ハンマーを使った鍛冶の音だな、鍛冶屋あるのかここ」
音に誘わように歩くと、そこには武器屋と思われるマークが描かれた看板が飾られた建物があった。
そのまま建物に入ると熱気と鉄の匂いが自分の感覚を刺激してくる。
建物には自分より2回り位大きい…男の子がいて、ハンマーを振るっていた、それ以外人は居らず、出迎える人は居ない。
ひとまず鍛冶を邪魔する気にはなれなかったので近くに飾られている武器を見て回る。
鉄の剣から黒曜石の槍、ミスリルの斧など多種多様な武器が飾られている、中に特殊効果は無いが自分より攻撃力の高い武器もあった。
「もしかして買うんですか?」
「いや買わないよ、使いこなせる気がしない、アースキーと火光で手が塞がるからな」
フェルとそんな会話をしていると、鍛冶をしていた少年が出来たー!と嬉しそうな声をあげた、そろそろ話しかけても良さそうだ、そう思い、フェルに胸ポケットに隠れるように促したら、少年がこちらに気付いた。
「あれ!?お客さん!?ごめんなさい、今この鍛冶屋の責任者は……うん?」
鍛冶屋の少年はこちらをジロジロ見る、なんだとおもったら少年の目の前にシステム画面が現れたと思ったら、すぐに消えた、だがそれだけでわかる事がある、この人自分と同じプレイヤーだ!ちらっとみえたシステム画面が見たことあるオプション画面だった。
「名前がレンナ…まさか、あのレンナさんですか?リオアの兄の…?」
「え、ああ…もしかして妹のファン?」
「はい!はじめまして!」
戸惑いつつも、ひとまずこちらもメニュー画面を呼び出して、オプションからプレイヤーの頭上に名前を表示するオプションを一旦オンにすると、少年の頭の上に名前が浮かび上がった。
『ウェルダン』
……名前?ウェルダンは名前じゃなくて、焼き加減じゃないのか?
「えーと、名前はウェルダンさんでいいのかな?レンナだ、よろしく頼む」
「はい、ウェルダンでもダンでも好きに呼んでください」
ひとまずウェルダンさんと呼ぼう呼び捨てだと違う意味に聞こえるし。
「早速ですまない、ウェルダンさんは昨日鍵を使ってこの限定フィールドに来たことあるか?」
「はい、来ましたよ?それがどうかしたんですか?」
「ああ、実は昨日も来たんだが…昨日来た時と周辺の村の状況とか変わっていたんだが、何か心当たりないか?」
上手く説明できた感じはしないけれど、ウェルダンさんには心当たりがあったのか、ああ!と両手を叩いた。
「レンナさんはまだ歯車の力を知らないのか!」
「歯車の力?」
どうやらやっぱりこのフィールドでは歯車が重要みたいだ。
「このフィールドでは歯車が大きな力を持っているんだ、この村に噴水があって、そこに石の歯車を見たことはある?」
「ああ、ある…もしかしてアレが破壊されると村が滅びるとかあるのか?」
「極端に言っちゃうとレンナさんの言うとおり滅びるみたいだよ、アレが村の心臓部に近しい物だからね…これからだけど歯車のレアリティが上がれば村の様子が変わるはずだよ!」
そうウェルダンさんは言うと、先程作っていた物と思われる物を見せていた。
「この銀鉄の歯車でね!」
「えーと、もしかしてその銀鉄の歯車と噴水にあった石の歯車を交換するのか?」
「うん!昨日は壊れかけの歯車から石の歯車に変えたんだけど、あっさり上位の歯車を手に入れたからね…この村はどんどん発展していくよ!」
ウキウキした声でいうウェルダンさん、もしかしてここらへんのクエスト全部ウェルダンさんがクリアしたのかな?いやだとしても普通のクエストなら自分も受けれるはずだ。
「あのウェルダンさん、歯車を手に入れるクエストてどこで受けました?」
「えーとここから出て、左隣にある道具屋さんから受けたよ、後は門番さんからも1つ受けて…最終的にこの歯車を作るためのレシピを手に入れたんだ」
成る程建物の中はまだ未調査で門番さんにもしっかりと話してない、そりゃあクエストが見つからないわけだ。
「まあ、クエストを受けるなら少し待ってもいいかもね、歯車を入れ替えたらなにか村に変化するだろうし!それじゃあ俺は歯車を交換してくる!」
ウェルダンさんはそういうと鍛冶屋から出ていった…鍛冶屋を無人にして良いのかな?そう思いながらもウェルダンさんの行動が気になり、自分もついていくことにした。