のんびりした白衣の斧使い、アッシュル
「はあ、はあ……数が多い…」
風の渓谷で何度も敵と出会ったが、必ず複数かつ種類もバラけて出てくる…必ず数的不利を要求されてしまう…。
弱点の属性で攻撃出来れば良いのだが、共鳴のスキルはフェルと連携が出来てないと発動しない為、言葉を交わして予め属性をシャベルに宿す事は出来ても、戦いながら素早い属性を切り替えは難しい…。
自分がどの敵を攻撃するか、フェルは咄嗟には分からないからだ…。
「大丈夫ですか?レンナさん…そろそろ引き返した方が…」
「そうだな…うん?誰かがいる?」
これ以上攻撃を受けすぎて、フェルを心配させるのは嫌だし、戦闘の結果レベルが15に上がっても、回復薬の消耗も凄くて既に買った半分の回復薬を使い、心許なくなってきたので、帰ろうとしたが、休憩しているPLを発見した。
斧を装備した大柄な男性、ムキムキな肉体に似合わない白衣を着ている、白衣には薬が入ってると思われる試験管がセットされている。
「わーこんな所で人と出会えるなんて幸運だー」
白衣の男がこちらの存在に気が付いて、話しかけてくる、随分とのんびりとした話し方だ…。
「こんにちは、人と出会えるのが幸運なんですか…?」
「そうだよーこの世界のダンジョンに入ると、別チャンネルに飛ばされて、他PLと遭遇率が大きく下がるんだよー」
別チャンネルに飛ばされる…?飛ばされた感覚は無かったが…?それに別チャンネルてなんだ?
…取り敢えずダンジョンでは、他PLと遭遇しにくいと覚えておけば良いのかな?
「ここで出会ったのもなにかの縁ですしー、一緒にこのダンジョンを突破しませんかー?」
そんな誘いを受けて、無意識でフェルの入ってる胸ポケットを見る、フェルは身を隠すように胸にポケットに入っている。
ユリにフェルの存在は隠したほうが良いと言われているし、白衣の男もいい人なのかも分からないが…このダンジョンは敵の数が多すぎて人手が欲しい…。
「あー…条件がある、自分達の事を他の人に話さないならいいよ」
「自分…達?貴方は一人ですよねー?もしかして、幽霊とかに取りつかれる数字クエストとかの途中ですかー?それなら秘密にしますよーなんならお互いに秘密を明かして、フレンドにでもなりますかー?」
『アッシュルからフレンド申請が届きました』
『アッシュルからパーティー申請が届きました』
この人はアッシュルというのか…うーん、なんか悪意を感じないし、信じてみるか。
「分かった、よろしく頼むよアッシュルさん」
『フレンド申請を受理しました』
『パーティー申請を受理しました』
アッシュルさんとフレンドになる、3人目のフレンドだ。
そしてパーティーになったことで、自分のHPバーの下にアッシュルさんのHPバーが現れる。
「それじゃあ先に私の秘密を明かしますねー、私はこの身なりですがー、性別は女性です、二次元でも三次元でもねー。
ステータス増加目的で外見をランダム作成したら大男みたいな見た目になっちゃいましたー」
「え、貴女もですか!?自分は真逆でランダムで外見を決めたら、この可愛い身なりになりましたが男です!」
「わーこんな偶然があり得るんですねー」
うわ、まさか自分以外に本来の性別と真逆の姿にされる人が居たのか、一気に親近感湧いてくるな…。
「なら次はこっちの秘密だな…フェル、この人は悪い人じゃなさそうだし、出てきてもいいよ」
「大丈夫なんですか?ユリさんが私とレンナさん以外の人間は、基本妖精を拐う悪人としての前提を持って慎重に接触しなさい…と言われてるんですけど…」
ひょっこり顔を出すフェル、うちの妹は何を教えてるんだよ…。
「わー!可愛い!なんですか!?この可愛い小人はー!?」
「小人じゃなくて、妖精のフェルだよ、妹に誘われて、この世界に来た日にファーストクエストで大蜘蛛に囚われて死にそうな所を、命を賭けて助けてからは一緒に行動しているんだ…妹が言うには妖精は珍しいから、フェルが拐われないように気を付けてと言われてたから、警戒してたんだよ」
「この世界に来た日にファーストクエスト、それに命を賭けて救う…それ以降は一緒に行動…NPCとPLとのロマンスの気配がする…!話は分かりました!二人の関係は絶対に秘密にします!」
あの、関係じゃなくて、フェルの存在を言いふらしたりして欲しくないんだけど…まあ、この感じなら問題ないのかな?そんな感じがする。