クリスマスイベントの前にユリのプレゼント
「な、成る程…同じ街でも雪が降って、時刻も夜になれば様変わりするな…」
さっきまで居たはずのワンの街がクリスマス仕様に切り替わった事に驚きつつ、辺りを見渡す。
「急にさ、寒いですね、ちょっと着替えます…」
そんな中フェルは寒さを訴えて、防寒性能のある小さなラビットローブに着替える。
「クリスマスイベントでは防寒装備必須だからねーお兄ちゃんも当然用意していたのね?」
「いやしてない…」
まえスキーイベントの時に着ていた防寒着はレンタル品でイベントフィールドを抜ける時に返却している、故に今の自分にこの寒さを防ぐ手段はない。
「お兄ちゃん用意不足だねーイベント説明にも書いてあったでしょ?」
「そういうユリも装備変わってないじゃないか…」
「私はアクセサリーで防寒や防暑効果を得ているからね問題ないのよ」
自分よりも肌の露出の多い防具なのに平気そうなユリ、というか見てるだけでこっちが寒く感じるんだが…。
「まあ、お兄ちゃんの事だから防寒対策忘れていると思ってたから用意してきたよ、これを着て、今年のクリスマスプレゼントだよ」
『ユリからエレメント·アールヴがプレゼントされました』
『エレメント·アールヴ
ステータス:防御力+20
特殊効果:極地耐性、万地呼吸、確率クリティカルガード(胸ポケット)、装備制限(小柄)
リダが作った極地活動用の服、これ1つあれば極寒から極暑、更には海の中から有害な毒ガスが満ちる空間でも息して活動が出来るようになる。
しかし活動領域を広げることをメインに作られていて、防御性能は低めなので過信は禁物』
「…デザインからして女性服なんだが……」
アイテム一覧から出して服のデザインを確認する、上は白いもふもふなマフラーがついた事を除けば白色の長袖でカジュアルな服で、下が白いロングスカートで完全に女性服だ…ご丁寧にフェルが入れるように大きな胸ポケットがついている。
それに装備条件に小柄がついているが…ユリを見る、ユリの身長は明らかに小柄の条件を満たしてない身長だ。
つまり最初から自分に渡す想定なんだろうが…リーダーさんが自分にこんな服着て欲しいと思ってデザインして作ったのか?ちょっと引くぞ…自分が男なの知ってるだろ…なのになんでスカート…。
「リーダーに無理言ってそのデザインにしてもらった!」
あ、ユリの趣味だったか、すまんリーダーさん、変な誤解したと内心で謝る。
「いや、流石にこれは着られんぞ…いくらロングスカートと言っても恥ずかしいし…絶対に動きにくいだろ」
「動きにくさはシステムの影響でないから安心して!それに今は筋力あって体格の良い、現実で漢字で書く錬那じゃなくて、カタカナで女の子に近くて、小柄なレンナでしょ!似合う似合う!」
うう、出来れば着たくないけど、ごねた所でこのじわじわと蝕まれる寒さがなくなるわけではないし…長時間寒さに晒されたらどんなデメリットをうけるかわからない。
多分リーダーさんに無理してお願いしたという事は、材料とかはユリがせっせと集めたり、お金を払って買った物である可能性が高い…それをスカートだから嫌というのは用意してくれた妹に悪いのでは…。
「わかったよ、寒いし着るよ…」
そう考えると着る事にした。
システム画面を操作して着ると一瞬で寒さを感じなくなる、暑くもなく寒くもない適温みたいな感覚だ。
「服を着替えるだけで寒さに震えがピタリと止まるて、とんでもないな…」
試しに近くに積もっている雪に手を突っ込んでみる、素手故に直に手に冷たさが伝わるが体の芯まで冷えることはない…。
「大丈夫ですかレンナさん?冷たいものをずっと触ってたら指の感覚変になりますよ?」
「大丈夫だ問題ない」
現実でやったら手が霜焼けで大変な方になってただろうが、この世界だと防具の力があれば防げるみたいだ。
「お兄ちゃん、似合っているよ!」
「男としてはかっこいい服着て言われたかったよ…」
こうして寒さ対策をした自分達は街中へ入っていくのだった。