今更なインゴット作成
自分達が連れてこられた場所はやはりバトルエンチャントを教えられた鍛冶場だった。
というか単純にタタンさんの工房なんだろう。
「さて、インゴットを作ったことがないということは基礎インゴットのレシピも持ってないよな?」
「はい、持ってません…」
「まったく、よくそれで鍛冶屋やっていけたな、これを使え、これで一通りのインゴットが作れるはずだ」
タタンさんはそういうとインゴットのレシピを渡してくれた。
レシピを見てみると鉄インゴットからオリハルコンインゴットの作り方まで書いてある、勿論メテオグラビティインゴットの作り方も書いてある。
基本的に2つの鉱石で1個のインゴットを作れるんだな。
「鍛冶屋の実力はだいたい分かるんだが…一応確認しておこう、中級者か?」
「えーと、一応上級という立ち位置にいるはずです」
クラスも上級だから上級者で間違いないはずだ。
「インゴット作ったことがない鍛冶屋が上級者なのるとはね…まあいい、1度ここでインゴットを作ってみな、そこに鉄の鉱石があるから使っても構わん」
「わかった…」
せっかくだし好意に甘えて鉄の鉱石を使わせてもらおう、最初から見栄を張り、メテオグラビティ鉱石を使って失敗したら恥ずかしいからな。
「フェル、好意に甘えて鉄で練習して、メテオグラビティ鉱石をインゴットにしよう」
「はい、頑張りましょう!」
鉄鉱石を手にして鍛冶設備に近付く、レシピを選択してインゴットを選択し鉄鉱石を投入する、呪血鍛冶の特殊効果で血を注ぐか聞かれるが、当然ノーでスタートする。
鉄床に金属の板が流れてくる、それをハンマーで叩く…すると数回の軽い手応えを感じた後で仕上げボタンが出てくる。
「リジェネレー」「すまんフェル、もう終わった」
「ええ!?」
魔法を唱えようとしていたフェルが驚く中、仕上げボタンを押したことで、新品でキラキラした鉄インゴットが鉄床の上に現れた…うーん、もしかしてこっちの鍛冶レベルが素材のレベルを大きく上回ってかなり過程をすっ飛ばして作れたのかな?
現実でもこのくらい簡単に物が作れたらいいんだけどな。
「む、流石に鉄インゴットじゃ練習にならんか…」
「まあ、だいたいの流れはわかったのでメテオグラビティ鉱石で試してみます…あ、鉄のインゴットは…」
「返してくれるなら、返してくれるとありがたい…後で鍋を作るのに使いたい」
鉄インゴットはタタンさんに返却して、次はメテオグラビティインゴットの作成に入る。
勿論血は注がない、インゴットのレシピを使い、メテオグラビティ鉱石を投入してスタートすると、再び鉄床に金属の板が流れ始める。
「フェル、頼む!」
「はい!リジェネレート!スタンガード!オールアップ!」
フェルの補助魔法を受けてからハンマーを振るう、先程の鉄とは違い、ビリビリと腕が痺れそうな重い手応えが腕を伝う。
「くう、だがこのくらい!」
「ファイトです!レンナさん!」
作業中のHPの減りも早いがフェルのリジェネレートがカバーしてくれている。
カンカンカンと手早くハンマーを叩き、インゴットを作っていく。
「フェル、大丈夫か?」
「はい、熱いですが問題ありません!特殊な感じはしませんし、このまま完成させれそうです!」
「よし、ならこの調子で終わらせるぞ!」
採掘は手こずったが、加工ならばそこまで問題なく行けそうだ、鉱石採掘の一次産業は専門外だから大苦戦したけど、加工する二次産業ならこっちの領域だ!
そう高揚した状態でハンマーを振るっていると、仕上げボタンが現れた、それを押すと熱されて真っ赤だったインゴットが黒くメタリックなインゴットに代わり、鍛冶終了のシステムメッセージが現れた。
『メテオグラビティインゴット
メテオグラビティ鉱石をインゴットの形状に精錬した物、魔力により不純物が取り除かれて、質の高い物を作る際に重宝する、超硬かつ重いので持ち運び注意』
鑑定眼…いや、今は採掘眼だったな、とにかく鑑定内容も良さげだ。
「ほお、やるな…2回目でメテオグラビティインゴットを作るとは…」
「まあ、フェルと一緒ならだいたい何とか出来るからな!あ、あのー…図々しいのは承知しているんですが…このまま鍛冶設備借りて、刀を作らせてもらっていいですか?刀神に頼まれて作らないといけなくて…」
「はあ?面白い冗談だな、そんな事言わなくても貸してやる、お前らの鍛冶は珍しいからな、勉強になる」
あ、刀神のことに関しては冗談と思われたが、このまま設備を使わせてもらえそうだ、甘えて、ナナサカさん希望の刀を作らせてもらおう。
tips
鉱石の採掘は二次産業です。
なのでレンナの発言は間違っています。