VSフェル
「行きますよ!レンナさん!アイスブレード!からのえい!」
ネージュフラワーに氷の刃が生えて、更にフェルはジャケット…黒縁の外装を脱ぎ捨てて、小さなラビットローブに着替えた!
「フェル!?なんで!?」
びっくりして体が硬直する、黒縁の外装を着てなければ1日1回のファイナルターミナルが発動しない、つまりフェルの命綱がなくなったのだ!それ以前に小さなラビットローブは防御性能低いぞ!?
「はあ!」
自分の声に答えずにネージュフラワーについた氷の刃で斬り掛かってくる!
「くっ…」
付け焼き刃感溢れる攻撃、だがフェルが防具を投げ捨てたという訳がわからない行動のせいで反応が大きく遅れてバッサリ斬られる!
視界端のHPバーが3割ほど削れる。
「え!?」
あっさり斬れるとは思ってなかったのか目を丸くするフェル、目に見えて動揺して隙だらけだが、フェルが最後の命綱を手放した今、自分に攻撃の考えはない。
「あ、む!」
自分からなにかを感じだったのか、不満そうな声を出しながら自分から距離を取る。
「レンナさん、どうして攻撃してこないんですか?」
「いや、黒縁の外装脱ぎ捨ててファイナルターミナルの命綱なくなったら、万が一を考えたら攻撃出来ないよ!?」
そう言ってからHP回復薬を取り出して飲み始める、妨害される事も警戒していたがフェルは攻撃してこなかった…勝つことが目的じゃないよな、うん、戦うことが試練達成に近づくと言ってたし…。
「…むう、よくよく考えたらレンナさんは生き返る体持ち…そう考えると防具を変える必要は無いみたいですね…」
フェルはそう言うと脱ぎ捨てた黒縁の外装を拾い、着替える。
これで少しだけマシになった…それでも支援特化のフェルを攻撃するのはかなり気が引けるが…。
「仕切り直しと行きましょうレンナさん!」
氷の剣が生えたネージュフラワーを両手持ちして斬り掛かってくるフェル、だがやはり杖を魔法で剣代わりにしているせいか、普段近接攻撃してないからか、攻撃は遅い。
カキン!と、簡単に受け流すことは出来た。
「フェルが白兵戦をするのは新鮮だな…」
火光を振るい、攻撃しようとするがやはり攻撃したくない感情が湧いてきて、攻撃スピードを落として、かなり威力を殺してしまう、その結果フェルに受け止められる。
「むー!」
鍔迫り合いみたいな状況になる、フェルがむー!と気合を入れて力押しで押し込んでくるが流石に負けない…と思っていたら…。
「ちょ!?つよ…」
まさか押し負けた!体勢を崩されて、大きな隙を晒してしまう!待って確かに自分の力のステータスは低いけどフェルに押し負けるほどなのか!?
「剣坂流…小手砕き!」
「ちょお!?」
ネージュフラワーに付いていた氷の刃が手首に突き刺さると同時にHPバーの下にデバフと思わしき手に✕がついたアイコンが出現する、勿論HPバーも2割ほど消し飛ぶ。
何とかバックステップして距離を取るが…。
「アイスランス!」
フェルのお得意魔法アイスランスが複数飛んでくる!
「ぐう!火の刃!」
火光を振るい、アイスランスを迎撃して砕くが、手が満足に動かなかったせいで1つの氷の槍が足に突き刺さる!HPが半分以下になる。
「……剣坂流て…いつの間にナナサカさんから剣術教わったんだよ…」
「さっき沢山の書物を読んだり指導してもらいました」
なにやってるのナナサカさん…いやそんな事よりも完全にフェルの優勢だ…。
「そんな事よりもレンナさん…私とユリとでどう違うんですか?」
「違うて…なにがだ?」
「レンナさんの妹であるユリと戦った時はレンナさんは本気でユリに攻撃してました、でも私と戦う際は手を抜いてました…その違いはなんですか?私とユリは同じ支援がメインの戦い方のはずです!今ならファイナルターミナルのお陰で命のやり取りが起こる万が一なんて起きません!」
フェルが叫ぶ、何故手を抜くか…ユリもフェルも大事な存在だ、ユリはリアルでの妹だし、フェルはこの世界に来てからずっと共に行動している大切な存在だ…。
「…手は抜いてない、ただ…」
「ただ?」
フェルが詰め寄る、下手な答えをしたら斬られそうな雰囲気だ。
本音を言うべきなんだが、恥ずかしくて言いたくない、そんな考えが浮かび頭は高速回転する。
「………自爆したくないだけだ」
考えに考えて浮かんだ建前を口にして、アースキーを振って、自爆の意味を示す。
「自爆て、なにを……あ」
フェルの気の抜けた声がこの場所に響く。
アースキーにはとても世話になった効果がある、フェルのダメージを自分が肩代わりする効果だ。
3メートル距離が離れれば、効果は発揮しないが、近接戦闘する位の距離だと普通に効果範囲内だ、そんな状態でフェルに全力攻撃すれば全部自分に返ってくる。
フェルとの戦闘とか想定してなかった為、たった今気付いたが、理由としては十分だろう、フェルも忘れてた!という顔してるし。
…うん、アースキーも理由の1つだが、もう一つの理由は言わなくて済んだな。
…惚れた弱みなんて恥ずかしくて言えるわけ無いよ、可愛いフェルに攻撃はやはりしたくないな…。