暴風飛行!
ヴォルゲから貰った地図を頼りに飛んでいると、ビュウビュウ風が強くなってきた。
「フェル、大丈夫か?」
「こっちは大丈夫です、それよりもレンナさんの方が心配です」
確かにフェルよりも自分の方が飛行が危ういかもしれない。
妖精状態の自分が飛行慣れしてないのもあるかもしれないが、自分の方が風に飛ばされそうになっている気がする。
飛行に関してはフェルの方が経験豊富故か風への対処力も、フェルの方が上だろう。
「おっととと!?」
「レンナさん危ない!オールアップ!」
ビュウ!と急に風の力で飛行を乱され、落下するが、フェルが素早く自分を背後から抱きしめてフォローしてくれる。
「あ、ありがとう…というかこんな環境でサンダーバードとあったら戦わないと行けないのか…」
「うーん、私がレンナさんを運んで、レンナさんが火光で風の刃を撃って戦うとかどうですか?」
「それだとフェルの負担が大きいし、フェルが魔法を使う余裕がないじゃないか……それに…」
女の子に抱きしめられながら戦えるほど、自分に豪快といえば良いのか大胆といえばいいのか、とにかくそういうのがない。
「それに?」
「……フェルに迷惑かけたくないし…重いだろ?」
「なに言っているんですか、こっちはいつもレンナさんの胸ポケットの中で運んでもらっていればいるんですよ、今回は立場が逆転しただけです、それに軽いですよ」
フェルが背中から抱きついて来ている影響で耳元でフェルの声が聞こえてなんか背筋がゾクゾクする。
「いや、でも…」
「それに別々に飛んでてる最中に突風で離れ離れになったら大変です!だからこの体制で行きましょう!」
マジか…いや、でもアースキーの肩代わりの効果の効果範囲を考えたらフェルに運ばれながらの方がフェルが安全か…。
うん、これもフェルの安全の為だ、恥ずかしさは我慢しよう。
「わかったフェル…飛行は任せる!でも場所わかる?」
「地図は頭の中に入れました、問題ないです!」
フェルはそう言うと、妖精状態の自分を強く抱きかかえながらも飛行スピードを上げる。
「うお!?結構凄いな!」
「私も強くなりましたので、補助魔法の効果も上がったのです!」
自慢気にそう言ってどんどん加速していく、フェルは暴風なんてものともしない!
「なあ、フェル!前方に岩が沢山ある地帯があるんだがスピード落とさなくて良いのかな?」
「大丈夫です!任せてください!」
ビュンビュンと風を切るように岩を避けて飛ぶフェル、オールアップで全ステータス上がってるとはいえ、フェルこんな事出来るの!?
「突破です!」
「うう、なんか疑似ジェットコースターみたいだったな…」
うう、なんにもぶつかってないのになんかHP減った気がする…酔ったか?
「…大丈夫ですか、レンナさん?」
「だ、大丈夫…というかそろそろ目的地か?天の風大輪あるか?」
そこそこ距離があったが、フェルがカッ飛ばしたお陰であっという間に着いたのは良いのだが、肝心の天の風大輪は何処だろう?
「レンナさん、そこにサンダーバードの巣があるんですが、あそこに咲いている花が天の風大輪じゃないですか?」
フェルの指さした方向を見るとそこには雷を纏った巨大な黄色い鳥がいて、石で作られた巣で丸くなって寝ている、その側に緑色の大輪の花があった。
鑑定眼で見てみると、案の定天の風大輪だった…。
「これって戦闘不可避?」
「いえ、こっそり貰って行けば戦わずに済むはずです!」
明らかに手にした瞬間起きて襲いかかってきそうな雰囲気に思わずアースキーと火光を取り出して二刀流になる。
「こっそりとはいっても近づいたら起きそうだぞ?」
「大丈夫です、今の私なら…テレキネシス!」
フェルが魔法を唱える、そうか、天使長ワンストから鍵を奪った時のように魔法で遠距離から取れば良いのか、これなら起こす事ないかな?
ブチ!!!
フェルのテレキネシスで天の風大輪を地面から引き抜いた時、凄く大きな音がなった…。
あ、これは戦闘不可避だな、そう思った時、サンダーバードは起きるのだった。