天使長ワンストの最後
「ぐおおおおおお!?」
ゲートルーラーに貫かれて悲鳴をあげる天使長ワンスト、フェルの羽がヒートウィングのように火を宿しているのに気付いてびっくりしてたけど、その時に頭に響いたフェルの声に反応して妖精火門を使用、タイミングぴったりでゲートルーラーが発動できて良かった。
「フェルの無事か!」
「レンナさん!私は無事です!そして来てくれてありがとうございます!」
なんとかフェルと合流する、妖精氷門で全てのMPを使った影響かフェルの羽についていた火が消えている、気になってフェルの羽をよく見るが、フェルの羽が変形していたり、フェルが苦しんでいる様子は無いので大丈夫なのだろう。
「というかフェルと合流出来たのはいいけどど、どうやってここから出れば良いんだ?」
ここは多分フェルの内部というやつだよな?なんで周囲が暗いんだろうな?天使長ワンストのせいか?
「レンナさん!まだ天使長ワンストは倒れてません!」
考え事をしているとフェルの注意が飛んでくる、天使長ワンストの方を見ると這いながらも近づいてくる天使長ワンストがいた。
「しぶとすぎないか?」
フェルと共に下がり、MP回復薬を取り出して飲む。
「くそ、まだ負けてない…たかが妖精2匹に…」
「ぷは、いい加減にしろ、これ以上足掻くな!」
MPが200回復しても再び戦えるようになる、MP満タンではないが、死にかけの天使長ワンスト相手なら問題ない…はずだ。
「作られた……人生から我は…ぬけ…だすんだ…」
もはや執念というか狂気を感じる言葉に少し恐怖を感じるが、長く現状が続けばフェルにどんな影響があるかわからない!
「地門!」
地面にアースキーを突き立てて地門を発動すると、天使長ワンストはもう回避する力がないのか、アッサリと地門の直撃を喰らい…そのまま言葉も発さずに赤い粒子となって消えていった…。
そして天使長ワンストの消滅と連動してか暗かった世界が明るくなり、辺りにカンパニュラ・メリーベルの花が咲き始める、それを見ているとあっという間に自分がいた所がカンパニュラ・メリーベル花畑になった。
「終わったか…」
天使長の最後の言葉…作られた人生て…なんだ?頭を傾げているとフェルに話しかけられる。
「あの、レンナさん…どうやってここに?ここは何処なんですか?」
「え?ここは…フェルの精神世界だと思う?どうやって来たかは…指輪の力でこう、祈ってなんとか?」
「なんで疑問形なんですか…?でも来てくれてありがとうございますレンナさん!」
「いや、相棒として当然の事をしたまでだ…でもこれどうやって戻るんだ?いくら安全とは言ってもリーダーさん達を待たせる訳にはいかないし…」
照れながらも帰る方法を考える、今のレンナの体がどうなってるかはわからないが、きっとここに入る前のフェルと同じ状況になってそうだ。
少なくともヴォルゲの家の中で気絶したし、リーダーさんとナナサカさんが居る以上、最も安全な状態とはいえ、余り長時間迷惑をかけたくない。
「レンナさん」
「うん?どうしたフェ」
フェル?と言う前にむぎゅりと抱きつかれた、そうだ、今は人化解除してフェルと同じ大きさになっているんだった…ほぼ同じ身長になって抱きつかれるとどうしても狼狽してしまう。
因みに自分のヒートウィングも妖精火門を使用後に消えているので抱きつかれても安全だ。
「どど、どうしたフェル!?」
「暫くこのままで居て良いですか?」
「…………まあ、少しくらいなら」
自分だって男の子だ、好きな女の子に抱きつかれてお願いされたら断る気なんて起きない、リーダーさんやナナサカさんに少し心配かけてしまうが、待たせて心配かけた分は後でごめんなさいしよう。
「…少しだけ怖かったです……」
「天使長ワンストがか?まあ、確かに急に暗い世界に放り込まれたら怖いよな…」
慰めるようにフェルの頭を撫でる。
するとフェルは顔を赤らめてこちらを見上げる。
そのまま顔が近付き……。
キスした後、フェルの大好きですという言葉と共に視界は真っ白になって…。
その後気が付けばヴォルゲの家に戻っていた…。
「お、おかえり…」
ナナサカさんが気まずそうに出迎えてくれる…なんで気まずそうなんだ?
辺りを見渡すとヴォルゲもエアデも赤面して目をそらす。
「あの?皆さんどうかしたんですか?」
「良かったフェルも目覚めたか…で何事だ?なんで皆変な表情しているんだ?」
フェルも目を覚まして安堵するが…フェルも皆の反応に不思議そうだ。
「いや、ちょっと…すまん、レンナさんの視点を魔法で見ててな……全部見てしまった」
ま、まさか抱きしめてキスした所も見られたのか!?
フェルもそれに気付いて顔を真っ赤にする。
「「リーダーさんのバカぁ!!!」」
自分とフェルの声が重なる。
その後自分達はリーダーさんを説教するのだった。
こうして天界を巡る冒険は終わりを告げるのだった。