ヴォルゲの家にて
飛んでいると何度か天使とすれ違う、チラチラと見られたが、特に敵対的な行動はされずにヴォルゲの部屋にたどり着いた、ヴォルゲの家はそれなりの広さのあるワンルームだった、しっかりと掃除されている。
「天使も質素な部屋に住むんだな」
「別に無駄に広い部屋に住む必要がないからワンルームに住んでいるだけだ」
リーダーさんの感想にムスッとした感じの返事をするヴォルゲ。
「リーダーさんはどんな家に住んでいるんですか?」
「えーと…リアルだと1LDK、何時もレンナさん達が利用している工房の側にワンルームあるよ」
フェルの質問に答えるリーダーさん、わざわざリアルとファンタジーフリーダムで分けて答えている、リーダーさんのリアルは知らないけど、部屋的に1人暮らしなのかな?
「とりあえず他の天使には怪しまれずに済んだ感じか?」
「そうだね、まあ、お互いに不干渉な所があるから多少の変はスルーされているかもね」
ヴォルゲはそう言いながら棚に置いてあった医療箱と思われる物や薬を収納し始める。
「ヴォルゲ、ちょっと冷蔵庫見せてもらっても良い?」
「いいけど料理に使えるか微妙だと思うけど…」
「任せて、そこはアタシの腕の見せ所だから!」
エアデは冷蔵庫を見て何かを閃き、早速料理を開始する、その間に自分はふと作って、試しもせずにアイテム一覧に入れっぱなしの真実の鏡を見てみる。
そこには白銀の妖精の羽が生えた自分がいた、背後を見ると、まだリーダーさんがかけた魔法で見せかけの天使の羽が生えている。
次は鏡にリーダーさんを写す、そこには羽の生えてないリーダーさんが鏡に映り込む、肉眼で見てみるとやはり魔法で作られた偽羽が生えていた。
「なるほど、真実の鏡てこう使うんですね」
「まあ味方に使っても意味ないけどな」
興味深そうに鏡を覗くフェル、当然だが鏡に写ったフェルは肉眼で見るフェルとなんも違いがなかった。
不要だけどヴォルゲとエアデにも真実の鏡を使ったが、変なものは映らなかった。
「出来た!名付けて天界のフルーツポンチ!」
鏡で遊んでいるとエアデの料理が出来たみたいだ、フルーツポンチてそんな短時間で出来るかな?と思ったがゲームだから気にしてはいけない。
「成る程飛行速度上昇、HPとMPの最大値増加が1日つくのか…これはいいな、食べていいか?」
天界のフルーツポンチの効果を見抜くリーダーさん、食べていいかの質問にエアデは頷く。
「うん皆食べて!私は飛べないからここに居る予定だけど可能な限り料理でサポートするよ!」
こうしてエアデの作ったフルーツポンチが振る舞われる、食べてみるとさっぱりとした味わいでなんかサイダー飲んでいる気分になった。
「材料がもう少しあればもう少し料理作れるんだけど…」
「他の食材となると結構高価で手が出せないんだ…」
エアデの言葉に気まずそうに反応するヴォルゲ、天使の世界にも物価高とかあるのなんかやだな…。
「まあ、天界の物価高は置いといて…ヴォルゲの職場…天界中央管理所だったけ?そこに行けば天使長ワンストに会えるんだっけ?天界中央管理所に牢獄とかだれか閉じ込める施設とかあるのか?」
「……地下に堕天使を収容する設備があるから多分そこに…でも天使長ワンスト…様は」
リーダーさんの質問に答えるとヴォルゲ…その施設にきっとナナサカさんが囚われているのだろう、その時ふと思った事を口にする。
「うーん、でもナナサカさんを救助は後回しでいいんじゃないか?仮に助けても…中身ないのでは?」
「「中身…?」」
自分の言葉にヴォルゲとエアデが意味わからないと言わんばかりに頭をかしげる。
ナナサカさんがログインしてないとファンタジーフリーダムのナナサカさんの体は動くわけがない…PLが居ないから。
というかナナサカさんはログアウトしている状態だとファンタジーフリーダムのナナサカさんの体はどうなっているんだ?
「あーナナサカの中身はリアルで連絡して、ログインしている状態だから問題ない、暫く待たせるだろうけど、救助さえ出来れば大暴れしてくれる予定だ、連絡しなかったら中身のないナナサカを運ぶことになってたかもね」
リーダーさんだけ中身の意味を理解して、ナナサカさんがログインしていることを教えてくれた。
「成る程なら先にナナサカさんを助けたほうがいいかもね、刀神の権能失ってるとしても超強そうだし」
あのスキーのホラーの館でナナサカさんは攻撃スキルを封じられても、刀さえあれば持ち前の技術で敵を圧倒した、その力があれば鬼に金棒…刀神に刀…うーん、なんか良い言い方が思いつかなかった。
「いや、こういう囚われている焼き肉権…じゃなかったナナサカを救う鍵はボスが高確率で持ってるから天使長ワンストと合うのが先だと思うよ」
「天使長なら何時も管理長室にいるからなんとかしてそこまでたどり着かないと…僕の権限だと2人を連れてそこまで行くことは出来ないし」
待って焼き肉権てなに?ヴォルゲもスルーしないで?
「いや、ヴォルゲの権限とか使わないほうが良いと思うというか多分もうなくなっている可能性が高い、ナナサカがヴォルゲと繋がっている事バレている可能性もあるし…あのナナサカに依頼したクエストの内容的に天使長ワンストに取って、ヴォルゲも排除したい存在である可能性が高い」
「それは信じたくないな…なんでまともに働いていたのに排除されないと行けないんだ…」
「まあ、それを聞くためにもまずは天界中央管理所に近づこうよ」
複雑そうな顔をするヴォルゲにそう言う、どちらにせよ天使長ワンストに合うのが先決となり、エアデはヴォルゲの家でお留守番、自分とフェル、リーダーさんはヴォルゲの案内について行って、天界中央管理所に向かうのだった。