夏休み突入とまずは宿題だ
「夏休みだー!」
夏休み前の最後の学校が終わり、友達の高田が歓喜する。
まあ、高田じゃなくても学生ならば誰もが胸を高鳴らすのだろう、実際自分も嬉しい気分になる。
「昨日はバーチャルアイドルのリオアちゃんのライブ配信も楽しかったし、今年もいい夏休みになりそうだ」
「毎度それ言って、最終日の最後の溜め込んだ宿題地獄でもう夏休みは勘弁だーと言うんだよな」
「はー本当何度も現実突きつけるなよ、もう勉強しなくてもプログラミングで食っていける位にはなってるんだよー」
「仕事を溜め込むなという勉強が何時までも出来てないだろう?」
「仕事は溜め込まねーよ、まあ、暫くはゲームの世界に行ってくるぜ、そろそろ難所が超えられそうでな」
帰路で高田と共に帰っていると、大きな広告ディスプレイが聞いたことある単語を発していて、それを聞いて足を止めて見てしまう。
『君も飛び込め!ファンタジーな世界に!生きろフリーダムに!ファンタジーフリーダム!好評発売中!リオアと一緒に楽しもう!』
ファンタジーフリーダムの広告だった、長身で青髪青目、巨乳長身の美少女キャラ…リオアが笑顔を振りまいて宣伝していた。
あれが高田の追っかけてるアイドルか…よく聞くとなんか聞き覚えがある声だなと思うのは、多分彼女が色んな物を広告している為なんだろう。
確か前はエナジードリンク宣伝してたような…。
「いやーかわいいねリオアちゃん!ゲーム系アイドル!はーかわいいわー前のオークションイベントで会ったけど最高だわー」
「褒め言葉の語彙力死んでるな…というかそのどっぷりとした追いかけ、宣伝しているゲームとか買ったのか?」
「当然!!」
まじか、高田もファンタジーフリーダムやってるのか…。
こいつにはゲーム内の自分(女子供の体格で体操服)の姿を見られたくねぇ、絶対におちょくられるという予測があるので、うん…このままファンタジーフリーダムの話をしてるとなんかこっちがやってる事のボロが出そうだな、話を変えたほうが良さそうだ。
「なあなあ、一緒にファンタジーフリーダムで遊ばないか?夏休みなんだからパーと遊ぼうよ!」
「まずは勉強だよ、俺はとっとと宿題を終わらせて大手振って遊ぶんだよ」
「全く堅物だな、お前はー…」
そう思った時、高田に肩を掴まれて、こっちの体を回転させて、見つめ合うような形にされる。
「1つ聞きたい事があるんだよ教えてくれないか?」
「……なんだよ?お前に問い詰められるような後ろめたい事はしてないぞ?」
やばい、これは高田が人を問い詰める時にやる姿勢だ、面と向かって見つめる事で、僅かな表情の変化や目の動きで嘘を見抜く…高田が言うには親が探偵だから学べたスキルらしい…男友達に見つめられるのは気味が悪いからやめてほしいんだが…。
猛烈に嫌な予感がする、まさかファンタジーフリーダムをやってるのバレた?
「お前リオアちゃんと知り合いだったりしない?」
「なにいってんだお前?」
なに言ってるんだお前?
「どうした?夏の暑さに頭に茹で上げたか?」
「うーん、嘘ではない…考えが間違えてたか、リオアちゃんオークションイベントで鍛冶屋レンナの作品をおすすめしてたからまさかと思ってね」
…オークションで自分の名前…?やべぇアイドルのおすすめはまったく知らんが、オークションの作品に関しては心当たりがガッツリあるぞ。
そこを突かれたら隠し通せる気がしない、というか9割くらいバレてない?鍛冶屋のレンナなんて自分以外いる気がしない。
「……訳わからん、少なくともリオアとは話したことなんて一回も無いぞ…俺がネット情報に疎いのは知ってるだろ?」
「そうだよな、この現代社会で希少な若者なのにネット音痴のお前がバーチャルアイドルと交流なんてないか…」
……ネット音痴は否定しないけど酷い言いようだな、というかレンナに関しては突っ込まないのか?
「と、家についたからじゃあな錬那、いい夏休みを!もしファンタジーフリーダムをやり始めたら教えてくれよ、一緒に遊びたいからな」
「あ、ああ…?」
高田は家に帰っていった……
おい!鍛冶屋レンナに関して突っ込めよ!!あれか、わかっててあえて触れないようにしておちょくられてる!?
アイドルとの繋がりを聞いた時点で高田の中で自分はファンタジーフリーダムをやっていると考えはあったはずだ、なのに聞いてこなかった…というか最後の言葉がやってない前提だ…何だこのもやもや…。
「………帰るか」
高田の考えがまったく読めなかったので、思考を放棄して帰宅する。
取り敢えず宿題一気に終わらせるか…。