ドワーフの食糧事情
「おかえりなさい、ヴォルゲ、レンナさん」
エアデの家に入るとエアデが出迎えてくれる。
「おお、天使様…盗賊は倒してくださったのでしょうか?」
「おお、大いなる火の神よ!天の使いに感謝します!」
何かを持って祈るエアデのお父さん。
そんな中、ヴォルゲは気まずそうに自分とフェルにだけ聞こえるように囁いた。
「僕は火の神じゃなくて豊穣の神様の使いなんだけど…」
「…恩売ると思っておけば良いのでは?」
「火の神と豊穣の神様は仲が悪いから喧嘩にならなきゃ良いけど…」
ヴォルゲは少しだけ頭を抱えてるようだが、すぐに切り替えてエアデのお父さんに話しかける。
「でも僕だけじゃなくて妖精達の協力もあるからな、妖精…レンナ達にも礼を言って欲しい」
「よ、妖精…?片方人にしか見えませんが」
怪しいものを見るような目でこちらを見るエアデのお父さん。
「あー…今人化解除する、フェル胸ポケットから出て欲しい」
ぽんと人化解除するとエアデのお父さんは目を丸くした。
「本当に妖精でしたとは…失礼しました、妖精は見たことなかったので…盗賊を倒していただき感謝する」
「いえ、こちらも紛らわしくて申し訳ない」
頭を下げているとフェルが近寄り、小声で話しかけてくる。
「なんか納得行きません、レンナさんは人間なのに…」
「別に自分は人間でも妖精でも良いんだけどね、まあ知り合いにはここぞという時に使って驚かせたいから、妖精になるのは隠してるけど」
「あの?どうかしましたか?」
「あ、いえなんでもないです」
エアデのお父さんが不思議そうに聞いていたのでなんでもないと伝えてから人化を使って人に戻る。
「あ、ヴォルゲ!せっかくだし今日はドワーフの郷土料理食べていってよ」
キッチンと思われる所からエアデの声が聞こえる。
「あ、食べます!食べます!」
「お腹すいたのか?ヴォルゲ?」
「戦ったし空いた」
食いつきのいいヴォルゲにビックリしつつも、まあせっかくだし、自分達も食べさせて貰う事になった。
「はい、これがドワーフの郷土料理、地牛のホイル焼きだよ、ヴォルゲと妖精の感想聞かせて欲しいな」
テーブルまで移動して、自分達の眼の前には出されたのは牛のホイル焼きみたいなものだった、ご丁寧にフェル用の大きさのホイル焼きも出してくれた。
「なあ、お父さんの分は?」
「後のご飯時に出すね、今は来客優先」
「「「いただきます」」」
不憫?なお預けを食らうエアデのお父さんがいる中早速ホイル焼きをいただく。
「美味い!美味い!流石にエアデの料理だ!」
ヴォルゲはガツガツ食べている。
「初めての味です…こ、濃いです!」
フェルはゆっくりとだが初めての味をじっくりと味わって食べている。
そんな中自分も口にすると濃厚な牛肉の味を感じる…ついでに最新のゲーム技術の凄さも感じる…。
「うまいけど…ご飯が欲しくなる………」
「ご飯?何だそれは?」
正直な感想を言うとエアデのお父さんに頭傾げられた。
「え?ご飯ないの?というか牛ているの?」
「ドワーフはご飯食べる習慣がないの、地牛は結構遠い所にいて、鉱石を食べて大きくなる牛ね」
エアデが地牛に関して教えてくれる…ファンタジーだな…。
というか栄養バランスとかどうなっているだと思うがそこら辺に深く気にしたら負けだろう、リアル過ぎるとゲーム性を損なうて、昔ユリが言っていた記憶がある。
「そう言えば天使様、もしもよろしければ泊まっていきませんか?」
「え?泊まり…?」
エアデのお父さんからまさかの提案である…まあ今は火光で地底に何故か行けるっぽいし、ヴォルゲを置いていっても問題はないと思うが……。
「え、いいのか?」
割と乗る気のヴォルゲ…まあ、ヴォルゲも乗る気なら別に止める必要もないかと思った時、眼の前にはシステム画面が現れた。
『ファーストクエスト
天地結ぶ者の失敗条件が0%、成功条件が50%の状態で状況更新されました。』
『刀神の名誉顧問から除外されました』
「…………ごめんヴォルゲ、のんびりお泊りという状況じゃなくなったかもしれない」
ヴォルゲに声をかける…何が起こっているか良くわからないが…ただ事じゃないのはわかった。