修理せよ、地板鍵
「ナナサカ、お前耳かせ…」
ナナサカさんのとんでも発言に焦ったリーダーさんがナナサカさんを端まで連れて行ってヒソヒソ話をする。
「あの2人は何を…?」
エアデは不審そうに見ている。
ここは自分がなんとかしないと…。
「な、ナナサカさんはフェアリーガーデンに行き来する鍵を持ってないのに置いていったらナナサカさんが家に帰れなくなるからな…どうするか相談しているだよ」
我ながら苦しい言い訳だ、プレイヤー相手ならログアウトすればいいじゃんで一発で論破されるボロボロの理論だったが…。
「そうですか…」
なんとか納得してくれた。
一安心と思っていると、眼の前にはシステム画面が現れる、すぐ隣にいるはずのリーダーさんからのメッセージだ。
『ナナサカを信用して欲しい』
…成る程、リーダーさんはナナサカさんが天使のヴォルゲに危害を加えないと信じることにしたのか…。
自分だってナナサカさんを信じたいが…一歩間違えたらナンバークエスト失敗になる大惨事だ…刀神の膨大な戦闘力を振るわれたら止めようがない。
まあ、ナナサカさんが本気で暴れて、それをなんとか出来るかと言われたらあんまりできる気がしない…どちらにせよ、信じないのはなんか根拠もなくナナサカさんを否定している気がして良くない気がする…今はナナサカさんを信じたい。
『信じてるよナナサカさん妖精には絶対に危害を加えないでと伝えて』
返信を送るとエアデとヴォルゲがこちらに注目する。
「何やっているんですか?なにもない所で手を動かして…?」
「あ、いやちょっと工房を借りるために伝達魔法を…」
「………」
フェルが無言で目を細めて、何言っているんですか?と言わんばかりの顔をしている…。
「すまんすまん、ちょっとナナサカと相談したが、ナナサカは暫く天使のヴォルゲの話を聞きたいみたいだから暫く話し相手になって上げて欲しい」
「ヴォルゲ、俺の知らない天界の事を聞かせて欲しい」
「はい、僕もどうやって刀神になったのか教えて欲しいです」
こうしてナナサカさんをフェアリーガーデンに置いて1度チームゼロオーダーの工房に帰る。
「大丈夫かな…?」
「天使がガチの悪者なら大丈夫ではないが、天使は善人なんだろ?」
「善人のはずだ…」
まだあんまり交流出来てないがなんとなくそんな感じがする。
「まあ、妖精に危害を加えはしないはずだ、そう誓っていたからな、疑心にならずに信じてくれ…」
「うん…」
信じると決めたのに疑心が湧く自分に少し嫌な気分になりながらも駆け足でチームゼロオーダーの工房に戻ってきた。
「レンナさん、レシピと修理する鍵をセットして欲しい、修理素材が要求されたら俺が入れる」
「わかった、フェルはサポートを頼む」
「わかりました!任せてください!」
テキパキとセットすると呪血鍛冶の特殊効果で血を注ぐかのどうかの項目が出てくるがこれはいいえにする、修理品に血を足すわけには行かない。
「ガッツリ壊れたわけじゃいから修理素材は軽く済むな」
リーダーさんが修理素材をセットすると修理開始ボタンが押せるようになったのでフェルとリーダーさんの準備が出来たことを確認してから修理開始ボタンを押した。
「リジェネレート!オールアップ!フェアリーウィッシュ!スリップガード!」
「ヒートガード、マジックガード、エンチャントコントロール」
フェル、リーダーさんの順番で補助魔法が発動する。
金床には薄い金属板が流れてくる。
「レンナさん、声をかけますのでその時はハンマーを振るわないでくれ!」
「わかった!」
カンカン!と数回打つとリーダーさんの変わって!と声をかけられて止める。
「マナコントロール!」
リーダーさんの言葉で金属板に魔法陣が浮かび上がる。
「レンナさん叩いて!フェルも魔力を注いで!」
「「わかった!」」
リーダーさんの指揮に従いハンマーを振るう。
「変わって、フレイムウォール!マナコントロール!」
交互に作業をすること数分、なんとか完璧な修理をすることが出来た!
「つ、疲れた…リーダーさんがタイミングの合図してくれなったら失敗してたかも…」
「お疲れ様です!レンナさん、リーダーさん!」
「ぶっつけ本番でもなんとかなるものだな…お疲れ様だ2人共」
自分、フェル、リーダーさんの順番に労いの言葉を掛け合い、修理作業は終わるのだった。