カジノで遊ぼう!
「お兄ちゃん、今日はファンタジーフリーダムで一緒にしたいことあるんだけど、今日…時間ある?」
「うん、良いぞ?ユリは予定ないのか?」
次の日の夕方、ご飯を終えた後妹の友奈に恐る恐る尋ねられて、答える。
「こ、ここでその名前はやめて!マナー違反だから、私以外にやったらだめだよ…じゃあ、あっちの世界で会おうね」
「あ、ああ…あっちで会おうな」
ユリの名前を聞いて恥ずかしそうにいう友奈は自室に戻っていった…。
リアルでゲームネームで呼ぶのは、基本良くないんだっけ?そんな事をぼんやりと考えてながら、ファンタジーフリーダムの世界に行く為のVR装置を自分に装備する。
「さあ、カジノで遊ぶわよ!」
「???」
ゲーム機の力でレンナになった自分は、ユリのマイホームに足を踏み入れる、先にログインしていたユリがカジノで遊ぶ提案をしていた。
「一度入った記憶があります、カジノてセクシーな人達が働いていたお店ですよね、そして誰かが凄い悲鳴上げてましたのを覚えています、どんな所なんですか?」
「運が良ければ大金が稼げる場所よ!フェルちゃん!」
フェルはユリから貰った本を閉じて、すぽんと自分の体操服の胸ポケットに入ってくる。
「間違ってないけど、フェルに中途半端な説明するなよユリ…カジノはギャンブル、お金を掛けて、駆け引きに勝ったら、お金を掛けた分以上のお金が貰えるけど、負けたら掛け金が全部没収される所で、人によってはハマりすぎて、掛け過ぎて、負けて破滅する所だよ、だからフェルはカジノに行っても、遊ぶ程度のお金しかかけたら駄目だよ?やり過ぎは毒だからな、わかったフェル?」
「わ、わかりました」
フェルに真面目にカジノに関する情報を教えてから、ユリに質問を投げかける。
「なんで急にカジノなんだ?てっきりオークションの結果が出てるかとおもった」
「オークションは出品しても、そうすぐに結果は出ないよ、だからそれまでの空いた時間で二人と遊ぼうかなと思ってね、カジノで遊ぶお金なら出すよ?」
「うちのサイフに余裕はないけど、妹に借金するつもりはないよ、まあ、フェルには出してあげてくれ」
ゲームのお金だとしても、お金を妹に貰うというのはなんか、かなり心的拒否感が大きい。
幸い低品質のゴーレムコアの杖をNPCに売って、少なからずお金は持っている、多少カジノで遊ぶ位なら問題ない、そう判断して自分達はカジノに向かうのであった。
勝った喜びと負けた嘆きが入り乱れるカジノ…背の大きなユリはともかく、子供の女の子の体をしている自分は凄く場違いな感じがする…。
「はい、フェルちゃんのチップと…これをフェルちゃんの頭につけといて、幸運のお守り」
ユリがそう言って、お金をカジノの通貨…チップに変えた物と、小さな帽子をこっちに渡してくる。
『小さな帽子
属性:無
特殊効果:運増加(小)、気配遮断(大)』
「ありがとうな、ユリ」
鑑定眼で帽子の効果を確認して、帽子をフェルの頭に乗せる、これはあれか、幸運のお守りは建前で、なんかあった時にフェルが狙われないようにというやつかな?
妹の気遣いに感謝しつつ、自分が遊ぶの分のチップを購入する。
「まずはルーレットやろう!」
ユリの希望で三人でルーレットをすることになる。
巨大なルーレットが回り、それを見て手元にあるシステム画面で掛けるシステムだった。
「31から36のラインにかける!」
「黒の2倍とハイナンバーの2倍、偶数の2倍にかける」
「えっと…9番にかけます、お願いしますレンナさん」
ユリはそこそこのリスク、そこそこのリターン、自分はローリスクローリターン、そしてフェルはなんと一点掛けしていく。
勿論NPCのフェルはシステム画面を使えないので自分が代理で掛けている。
カラコロカラコロとルーレットの玉は転がり…
『結果は赤の30です』
二人は外し、こっちは小当たり…がっかりするユリと難しそうな表情をするフェル、そんな二人を見つつ、こっちはのんびりとまたかけ始めた。
5分後…
早々当たるわけなく、所持チップを減らされる二人とじわじわと亀の速度で増えている自分のチップ…
「つ、次はスロットをするよ!二人はルーレット飽きたらスロットにきてね!」
ルーレットにフルボッコにされたユリが次にスロットに走り出す、なんだろう、このままユリの全チップが飲まれる未来が見える、このゲームは運のステータスがあるが、きっとカジノには関係ないのだろう…?
「フェルはどうする?まだやる?」
「あと一回いいですか…?」
「別に何回でも構わないよ、遊びだからな…」
真剣な表情で言うフェルにこのままフェルがギャンブルにはまってしまわないか不安に思いつつ、ルーレットを見る、再び掛ける時間が始まる。
「…0に全額!」
「当たっても外れてもフェルはギャンブルから手を引きなよ?その思考の時点で絶対ギャンブルやっちゃ駄目な考えだよ」
「わ、分かりました」
全額掛けるという危険思考にまあ、これもフェルにとっての勉強か、そう思い、ゼロに全額ベットする。
「あ…やべ」
そう、全額かけたのだ…フェルだけじゃなく、自分のチップもろとも、フェルの代理で掛けて、所持チップを一緒にしてた故に起きたミス…。
「これも勉強だな…」
「大丈夫です…」
完全に全ロス前提の自分と確信めいた声を上げるフェル…。
ルーレットの玉はコロコロ転がり、穴に入る…。
『結果は0です』
「うそ…」
「ふふん、見切りました」
フェルの所持チップは少なめだったが、こっちのチップはそれなりだったので、それが36倍に増えたチップに唖然としつつ、そそくさとルーレットのエリアから離れる。
このチップの数なら上から3番目位の景品と交換できる…今が引き時だ。
取り敢えずユリと合流する。
「チップ、ないなった……」
「これがルーレットで一歩間違えてた場合のフェルだよ、ギャンブルにハマった人はほぼ確定でこうなるから、気をつけようね」
「わ、わかった…」
死んだ目のユリは案の定、スロットにチップを完食されたようだった。
その後、稼いだチップはフェルの望む物と交換した、交換した物はオリハルコンのインゴットだった。
「これでもっと凄い物作ってください!」
「わ、わかった…」
笑顔で渡してくるフェルに、頑張って作った笑顔で受け取る、自分でも知っている、明らかに架空の物語でよく出てくる最上位と思われる素材をしまう…。
でもこれはまだ加工できる自信はないよ…これは暫く温存だな、と思いつつ1日が終わるのであった。