ヴォルゲとエアデ
「エアデ!エアデ!」
天使は少女に近づき声を掛ける…多分少女の名前がエアデなのかな?
「ヴォ…ル…ゲ?」
エアデの意識は朦朧としているが死からは脱却出来たみたいだ。
「良かった…本当に良かった…」
泣きながらエアデを抱きしめる天使…少女は天使の顔を確認したら目を閉じて寝息を立て始めた…気絶と言うか回復のために睡眠に入った感じなのかな?HPは回復しているだろうが…自分達プレイヤーと違ってNPCはそうすぐには動けないみたいだ。
「ふう、良かったですね天使…さん?」
「名前わからないけど…後で聞こう」
ヴォルゲと言っていたから天使の名前はヴォルゲという可能性が高いが自己紹介するまで確定しないほうがいいだろう。
「なあ、場所を移動したほうが良い、どこか休める所へ行こう」
「それならある程度進んだ先に移動用の魔法陣がある、それで…いや、いくら恩人…恩妖精だとしても…天使の世界に招くのは…いや、もうなるようになれだ!ついてきて欲しい!」
「わ、わかった…フェル、胸ポケットに入って!」
「はい!」
エアデを優しくお姫様抱っこして奥へ進む天使の後についていくと見慣れた魔法陣が見えた。
「これは転移魔法陣か」
魔本の図書館でフェアリーガーデンに向かった時のと同じ魔法陣だ、多分火光を使えばフェアリーガーデンに行けるだろう。
「妖精よ、魔法陣に入ったら何時でも飛べるようにして欲しい」
「え、わかった…フェル…」
一旦フェルに離れてもらい、人化解除を使い妖精になる。
多分空中に放り込まれるのか?だが妖精状態の自分は飛行が出来るので問題ない。
フェルと一緒に魔法陣の中に入ると天使がテレキネスを唱えると同時に天使の胸ポケットから1本のペンが飛び出してくる。
「開け天界の門!」
………移動すると思っていたが、何も起きない…。
「な!?馬鹿な!?MPは足りているはずだ…」
慌てる天使…もしやと思い、浮かんでいるペンに鑑定眼を使う。
『天誘う万年鍵(破損)
特殊効果:MPタンク✕
基本的には万年筆、しかし資格あるものが然るべき所で使えば天使の世界、天界へ行けると言われているが、壊れていたらどうしようもない、繊細な作業が出来る技術者じゃなければ直せないだろう』
やっぱり破損していた…説明文も破損のせいでお手上げと書いてあるし、MPタンクの上にバツマークがあり、機能してない。
「それ、壊れてるよ」
「な、そうなのか!?」
驚く天使、確かにパッと見た感じでは亀裂もないし壊れている様子は見えない、だがきっと内部が駄目になっているのだろう…。
「終わった…くそ、エアデを安静出来る所まで運びたかったのに…」
「……なあ、それなら1度フェアリーガーデンに行かないか?そこなら医術に長けた知り合いもいるし、しっかりと安静に出来るよ」
「いいのか!?僕が言えた話じゃないが自分達の世界に早々他種族を招くものじゃないぞ!?」
ふと思った事を口にすると焦るように叫ぶ天使…え、なに?昔何かあったのか?
「良くわからないけど妖精はそんな細かい所を気にする者じゃないぞ、なあ、フェル?」
「そうですね、悪者ならともかく貴方達から悪い感じはしませんし…行きましょう!レンナさん!」
「そうだな…でもその前に自己紹介しておこう、自分の名前はレンナ、そして相棒のフェルだ、フェルが妖精で…自分も一応妖精だ…人になったりもするけどな」
ここで自己紹介すべきだろうと思い、自己紹介すると、天使も自己紹介してくれた。
「レンナ、フェル、助けてくれて感謝する、僕の名前はヴォルゲ…見ての通り種族は天使だ…そして彼女がエアデ…ドワーフで…僕の大切な人さ……」
うお、エアデを見る天使ヴォルゲの眼が完全に恋慕の目をしているような気がする、多分気のせいじゃないはずだ、さっき初対面の時、エアデを…愛する人を守るんだてこちらに剣を向けて言ってたし…。
2人の関係が物凄く気になるが、今はフェアリーガーデンに行くことが優先だ。
「それじゃあ行くぞ!フェアリーガーデンに!」
火光を取り出して地面に突き刺すと視界が真っ暗になり…自分達の体はフェアリーガーデンへ移動するのだった。