地天の者
声のする方向へ行くとそこには2人の人物がいた、1人は茶髪で小柄な女性で体からまるでぶった切られたのか、赤いエフェクトを発して今にも死にそうな状態で息をしている。
もう一人は黒目で灰色の髪色をした青年と呼べる位の体格の男性、鉄の胸当てや片手でも両手でも扱える剣、トゥーハンドソードを所持している。
だが男性には人ならざる異質な物が2つ付いていた。
1つ目は翼だ、この洞窟内で決して役に立たない純白の翼だ。
そしてもう1つは…。
「天使の輪っか…なんでこんな所に天使が?」
それは頭の上に光輪を浮かべていた…頭に輪っか浮かべる存在は天使しか居ない…はずだ。
「天使て…遥か高い次元にいる存在ですよね…?」
フェルも疑問たっぷりに呟く、実際天使がどんな存在かはイマイチわからないが少なくともこんな洞窟に住むような存在ではないのは確かだ。
「ばかな人間!?くそ!もう戦う魔力もないのに!」
天使は片手を女性の傷口に、もう片方の手でトゥーハンドソードを手にしてこちらに向ける、だが体力の限界か本来は両手で扱ってるからなのか、剣の重さに手は震えている…。
「くそ!守るんだ…邪悪な人間から…俺が…愛する人を…エアデを!」
天使はそう言って鼓舞しているが限界が近いのが見て取れる。
どうする?こちらに凄い殺意を向けてきている…どうやって警戒心を解けば良いんだと思っていたら胸ポケットにいたフェルが飛び出した!
「リジェネレート!」
「な!?よ、妖精!?」
フェルのリジェネレートは傷ついた少女へ使われる…だが傷は塞がらない、赤いエフェクトを発して消えてないから死亡はしてないはず…。
「レンナさん、多分この人毒ってます!解毒薬を!」
「わかったけど…」
解毒薬を取り出す…だが天使の青年が未だ敵意を持ってこちらを見ている…。
先程の言葉的にめちゃくちゃ人間の種族に敵意を持っている…ならば…。
「フェル、薬持って俺から離れて……………人化解除!」
「な!?」
フェルが胸ポケットから出た後に人化を解除して妖精の体格になる、すると天使の青年が驚愕の表情をする。
「人化解除…そうか、君も妖精だったのか…武器を向けてすまない…」
カランと剣を落として謝ってくる。
若干騙している気もするが…今は仕方ない…。
「気にするな、それよりそこの女の子を手当していいか?」
「ああ!頼む!エアデを!助けてくれ!」
土下座をする勢いで頼み込んでくる天使の青年、完全に敵対関係を解除できた自分達は少女を治療する…HP回復薬をかけたり、フェルが持続回復の魔法を使ったり。
「人化!なあ、天使の青年、お前も回復しておけ」
少女の治療はフェルに頼み、自分は人に戻りMP回復薬とHP回復薬を天使に渡す、天使はすんなり受け取り飲み始める。
「ぷは…妖精の薬もなかなかやるものだな…」
「………えーと、人間を嫌っているみたいだが…何があった?」
自分の持っている薬は全部人間が作った物だがそれを口にするわけにもいかず、人間を毛嫌いする理由を聞く。
「あいつらエアデを斬った、理由はそれで十分だ!」
「まった、過程とか色々とふっ飛ばして極論過ぎる、もうちょっと詳細を教えて欲しい…」
「……人間は天使である僕を見ると決まって下心を持って近づいてくるんだ…ある程度逃げたりする自衛力はあったんだが…友達……エアデと会って話している時、いつも追っかけてくる僕達をレア物を見るような目をした武装した人間に近付かれて…エアデが先制攻撃をして逃走経路を開いてくれたと思ったら…エアデが斬られて……それからなんとかして人間を撃破したんだが…エアデが死にかけて…僕は戦いを速攻で終わらせる為に魔力を使い果たして治療も困難に……くそ!」
うーん、人間がNPCかPCかで状況が変わってくるな…自分と同じプレイヤーなら戻って来る可能性がある。
それに天使が人間を嫌っていて、エアデを嫌ってないからエアデも人間じゃないみたいだな…。
ひとまず人間という種族だけで恨む事はやめたほうが良い事を伝えたほうが良いな…じゃないとリーダーさんとかの助けを得づらくなってしまう。
「えーと、天使さん、出来れば人間=悪という認識は持たないで欲しい…確かに悪い人間も居るけどいい人間も居るんだ…その人間のおかげで自分はフェルと一緒にいられるからな…」
「……ふーん、君は運が良いみたいだね…僕は悪い人間しか見たことない…まあ、確かにいい神様も居るように悪い神様も居るからな…わかった、人間だからといってすぐに攻撃は辞めておくが…警戒はしておくよ…」
うーん、少なくとも人間とは敵対じゃなくて警戒位の感じになったかな?
そんな事を考えていたら、フェルの声が響き渡った!
「レンナさん!女の子が目を覚ましました!」