日暮れ斬のお試し
スキーをしまくったり、洋館に迷い込んだ次の日、ファイブの街の周辺でナナサカさんに貰ったスキルのお試しをしていた。
敵はインプという悪魔みたいなモンスターだ、槍を構えてこちらの様子を伺っている。
「日暮れ斬!」
火光から炎が噴き出し、インプと自分の間に炎の壁が出来上がり、体は瞬間移動と言えそうなくらいのスピードで動き、炎の壁を迂回してインプの背後を取る。
「はあ!」
火光でインプを背後から真っ二つにして赤いエフェクトに変えて撃破する!すると体は日暮れ斬を放つ前の所に自動的に戻っていく。
「ふう、結構視界の変化がきついな…ある程度使ってなれないとな…」
「うう、移動時結構きますね…確かに何度か使ってなれないと強い敵相手だと隙になりそうですね」
自分、フェルの順番に感想を零す…一瞬で相手の背後を取れるのはめちゃくちゃ強いが、MPをそこそこ使うし、視界が高速移動して使うには慣れが必要だ…いつもの防具の胸ポケットにいるフェルも高速移動にちょっと気持ち悪そうだ。
「ちょっとファイブの街周辺のダンジョンで特訓するか…せっかくナナサカさんから貰った剣技だから使いこなせるようになりたい」
「そうですね、さっきは上手く行きませんでしたが、タイミングを合わせれば日暮れ斬の時に私も魔法で追撃出来ると思います!」
かなり頼もしい事を言ってくれる、確かに背後からの斬撃だけじゃなくてフェルの魔法も加われば更に大ダメージを与えられるだろう。
「それじゃあ早速ダンジョンに行ってみよう」
「どこのダンジョンに行くんですか?」
「えーと、じゃああそこの洞窟に行ってみよう」
眼の前にあった洞窟を指差す、洞窟の情報は持ってないが、やばい洞窟なら撤退を視野に入れれば良い。
そんな気持ちを持って洞窟に近づく、洞窟は人工的な石畳とか明かりが設置されておらず、暗い…。
「フェル、ライトを頼む」
「はい、ライト!」
自分の頭上に光の玉が現れて洞窟を照らす、ゴツゴツとしていて殆ど整備されてないみたいだ。
洞窟内は広いので武器を振り回す余裕はありそうだ。
「それじゃあ頑張って行こう!」
「はい、行きましょう!レンナさん!」
洞窟に入り込み数分後……敵も殆ど居らずに日暮れ斬の特訓にならないなと思った時に敵は現れた…。
それは赤い甲殻を纏っていて足は沢山あり、体は団子のように丸みがある…現実ならしゃがんでじっくりと見ないと視認できない存在が自分よりも大きな存在としていた。
「あ、蟻だー!?」
「レンナさん、別のダンジョンに行きませんか…?」
「そうだな、ここは相性が悪い!」
脱兎の如くダンジョンから脱出する…アリの巣ダンジョンだったのか…。
赤い蟻は追ってこなかった…真っ先に逃げて、脅威じゃないと認識されたみたいだな。
どれだけ強くなっても虫はやめて欲しい本気で…。
「レンナさん、あっちの洞窟にしましょう、あっちなら多分虫は出てこないと思います」
走って乱れた息を整えていると、フェルが遠くにある洞窟を指さした。
「そうだな、次は虫のいないダンジョンだといいな…」
「そうですね…進んで虫とは戦いたくないですね…」
強くなっても虫嫌いなのは変わらない自分達は他のダンジョンに向う。
フェルの選んだダンジョンは先程のダンジョンと変わらず人の手が入っていない、天然のダンジョンだ。
敵は先程と違い、背中にトゲトゲした物を背負った亀?のようなモンスターが敵だった、厄介な点は亀なので弱い所は甲羅の中にしまって防御してくる所、弱点は地門でひっくり返せば長時間顔や手足をさらけ出して隙だらけになるところだった。
地門でダメージは与えられなくても隙だらけになる時点でかなり効率的に戦い、ダンジョンを進むことが出来た。
他にもインプ…悪魔系のモンスターも出てきたが、そいつ等は日暮れ斬の試し切りで屠っていく、一撃で倒すことは最初出来なかったが、途中からフェルが高速移動に慣れたのか、アイスランス等の魔法で一緒に攻撃してくれるようになり、1撃…2撃?いや、合体攻撃だから1撃で表現しよう、1撃で倒せるようになった。
「このままボスまで行けそうだな」
「そうですね!ドンドン行きましょう!」
2人してノリノリで進んで行くと叫び声が聞こえた。
「他の人?フェル、胸ポケットの中でしっかり隠れてて」
「助けに行くんですね、わかりました」
苦戦しているのだったら助けねば…そう思い、声のする方向へ脱出するのだった。